国内No.1ベンダーとしてFeliCaやNFCにかかわるサービスを幅広く展開　FeliCa市場の拡大を牽引し、さらに、NFCではクラウドペイメントを提供へ（大日本印刷株式会社）

2005 年からおサイフケータイのモバイルサービスを開始
「スマートビューロ」は国際ブランドの非接触決済に対応

現在、世界各国で非接触決済サービス普及の流れが加速しているが、DNPではモバイルを活用したサービスについても強化している。DNPは、2005年4月より、携帯電話にクレジット、会員証、社員証などの機能を追加する「モバイルビューロ」を提供。モバイルビューロでは、①携帯電話向けパーソナライズ情報の生成、②携帯電話用アプリケーションの開発（Javaアプリケーション等）、③携帯電話用アプリケーション、パーソナライズ情報のダウンロードサーバの運用、④顧客へのサービス案内、サービス開始に必要な情報の印刷・郵送、またはネット配信、⑤サービススキーム立案からセールスプロモーションまでを支援するトータルソリューション――といったサービスを一貫して提供している。また、2012年からは、スマートフォンに挿入されているUICCに、クレジットカード情報などの個人情報や鍵情報をネットワーク経由で安全に発行する「SP-TSM」を中心としたサービスとなる「スマートビューロ」を展開している。スマートビューロは、Visaの非接触決済サービス「Visa payWave」、MasterCardの「MasterCard PayPass（グローバルではMasterCard Contactless）」、JCBの「J/Speedy for Mobile」の3つの非接触決済に対応している。

「DNP スマートビューロクラウド（仮称）」を提供へ
注目のHCEやトークナイゼーションのサービスを展開

また、ICカードの発行だけではなく、クレジットカードやプリペイドカード、ポイントなどの電子決済サービスを一元化し、モバイル上で提供するアプリケーションである「モバイルWallet」も2012年から展開している。DNPのモバイルWalletでは、NFCに加え、FeliCaを活用したサービスに対応しているのも特徴だ。

「スマートフォン上でさまざまなサービスを集約化して、リアルでもネットでも、いろいろな場面でご利用いただき、事業者にとってはユーザーの行動履歴を蓄積することにより、最適なマーケティングにつなげるソリューションを提供可能です」（大日本印刷 デジタルイノベーション本部 モバイルサービス部 第一グループ 小野寺貴弘氏）

モバイルWalletは複数の案件が動き出しており、たとえばトヨタオートモールクリエイト（TAC）、トヨタファイナンス、ジェーシービーと共同で、TACが運営する神奈川県横浜市の大型複合商業施設「トレッサ横浜」において、優待情報やクーポン、ポイントの一元管理ができるウォレット型スマートフォンアプリ「トレッサウォレットアプリ」のサービスを行っている。また、ハイパーソフトが全国2,200の美容サロンで展開しているPOSシステム「Salon de Net（サロン・ド・ネット）」と連携したスマートフォン向け情報サービス「Salon de Wallet（サロン・ド・ワレット）」のアプリ配信も手掛けている。

DNPが今後展開を強化するのは、NFC等のスマートデバイスを活用したクラウドペイメント「DNPスマートビューロクラウド（仮称）」だ。NFCの技術方式には、日本の「おサイフケータイ」やAppleの「Apple Pay」で採用されている端末埋め込み型の「eSE（Embedded Secure Element）方式」、キャリアが推進するUICCと呼ばれる「SIM方式」、外部媒体を利用する「SDカード方式」などがあり、今後はNFCの新技術として注目が高まるクラウドベースのアプリケーションである「HCE（Host Card Emulation）」の採用も国内で進むと思われる。DNPでもクラウド上で、ICカードに関するセキュアなデータを管理し、発行を行うクラウドベースのペイメントシステムについてもスマートビューロを拡張した形で検討しているそうだ。また、クレジットカードの情報を別の乱数に置き換える「トークナイゼーション（Tokenization）」の提供も予定している。

「SIMに加えて、組込みセキュアエレメントやHCE、TEE（Trusted Execution Environment）など、DNPにはすべてに対応できる基盤があります。そこにモバイルWalletプラットフォームを連携させ、金融機関や流通企業が独自のモバイルサービスを展開したり、海外で話題となっているペイメントサービスへの対応も可能なプラットフォームを計画しています。また、ウェアラブルに代表されるスマートデバイス、1枚のカードに複数の機能を集約する『多機能カード』等への展開も可能です」（小野寺氏）

モバイルでも決済と販促を連動した取り組みを実施
NFC フォーラムの最上位会員として市場をリード

今後は、同プラットフォームをクレジットカード会社等、決済代行、EC加盟店など、幅広く展開していく方針だ。

DNPは、データセンターによるプラットフォームサービスに加えて、プロセッシングも直接提供している。また、「販促・送客」「決済基盤」「顧客管理」の3つが有機的に連動したビジネスプラットフォーム「決済連動マーケティング」を展開している。DNPでは、国際ブランドプリペイドカードのサービス・運用に必要な基本機能をクラウドサービスで提供。日本ユニシスと共同で、クレジットカードの決済履歴に応じた特典を会員に提供する「CLO（Card Linked Offer）サービス」をPOSと連動した形で、国内で初めて開始した。今後は、こういったサービスがモバイルやウェアラブルデバイスで展開される可能性もあるため、DNPではその要求に応えられる体制を整備する方針だ。

今後の流れとしては、2020年に向け、国際ブランドが推進するVisa payWave、MasterCard PayPassの普及が予想される。その際に、NFCを活用した展開は重要となるが、この分野はICカードのノウハウが必要となる。また、決済ネットワークの提供も求められるが、DNPのグループではインテリジェント ウェイブがサービスを提供している。媒体から運用までトータルに提供できる強みを持ち合わせている企業は、国内にそれほど多くないため、同分野においてもリードする存在となりそうだ。

なお、DNPは、2014年9月に、NFCの標準技術や各種テスト仕様を策定するNFCフォーラムの最上位会員となるスポンサーメンバーとなった。スポンサーメンバーには、NFCフォーラムの役員会メンバーになる権利が与えられる。また、フォーラム幹部への立候補者を指名し、各NFCフォーラムコミッティーおよび各NFCワーキンググループに対する投票権付き代表者1人を任命可能だ。2015年9月現在、NFCフォーラムのスポンサーメンバーはグローバル企業を中心に14社となっており、日本のみならず世界のNFCをリードする存在としての期待も高まる。

DNPプラットフォームサービス開発の歩み

2020年の東京五輪開催に向け、国内でもキャッシュレス化の波は加速しているが、Finance（金融）とTechnology（技術）を組み合わせて、新しいイノベーションを起こす「Fintech」が注目されている。DNPでは、プロダクト、プラットフォームサービス、プロセッシング、マーケティングまでを一貫して提供する強みを生かし、さらなるキャッシュレス社会の醸成につなげていきたいとしている。

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