フィンテックが欧米の決済トレンドに
NTTデータではベンチャー企業の技術やプログラムなどを集めて支援
近年、フィンテックは、欧米の決済トレンドの1つとなっている。若年層マーケットの獲得、異業種への参入に対する対抗策として、欧米の金融機関は新たな金融テクノロジーサービスを積極的に取り込んでいる。
一方、日本は欧米と比して、フィンテックベンチャーが多くなく、金融機関のイノベーションに対する取り組みは初期段階であるため、対応が遅れている状況だ。また、金融機関がベンチャーと接点がないのも阻害要因だった。このような状況に金融庁などは危機感を抱いており、金融庁は銀行出資規制の緩和の方針を示している。
海外のフィンテックベンチャーの動向をみると、決済だけなく、企業や個人の貸付、送金、レンディングなど、金融機関の多くの既存サービスの分野に進出してきている。また、決済手段そのものの高度化というよりも、顧客の購買情報を入手するための手段としての活用が増加している点と、特定の業界向けの決済サービスプラットフォームが登場している点にある。
たとえば、英国の「Bankable」は、ホワイトラベルのリアルタイム決済基盤を提供。すでにドイツ銀行が同基盤による送金サービスを提供していることから、ビットコインによるグローバル決済実証実験の可能性が高いものと想定される。また、認証もさまざまなベンチャーが登場しており、Nymiでは個人特有の心拍のリズムにより認証を行うシステムを提供している。
スマホ広告の新しい形態となる「アチーブメント広告」として、Kiipが広告を展開した際に消費者が興味を引くプロモーションを受け取れることができるサービスを提供している。消費者にとっては、お得なクーポンを受け取ることができ、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを展開できるため、日本市場でも関心が高いと予想され、連携しやすい企業であると想定している。一方で、個人情報についても考えて展開しなければならない課題もある。
決済サービス提供を主としない非金融事業者は常に消費者と接点を持っている。しかし、「決済する」シーンでしか使わない決済サービス提供者は若干距離が遠くなり、決済サービス実現に口座を提供している銀行は、消費者との距離が遠い状況となっている。既存決済サービス提供者は、クレジット、デビット、プリペイドなどを提供しているが、PayPalはオフライン・オンライン双方においてIDで決済できるようになり消費者により近づいている。さらに、FacebookやLINE、Google、アップルなどは、より身近になり、金融機関からすると密着度からも脅威かもしれない。
Google、アップル等の非金融事業者の金融サービスへの参入に対応し、銀行は、対抗軸となる新たなプラットフォーム作りに取り組んでいる状況だ。たとえば、2010年10月のSoftcard(旧ISIS)によるNFCモバイル決済サービスの提供(現在はGoogleに買収され、AndroidPayとして活用)、英国では英国決済協議会(Payments Council)が2014年4月に携帯番号だけで銀行口座に送金や受金できるモバイルサービス「Paym」スタート、オーストラリアでは2014年9月に銀行が中心となって豪州決済協議会(the Australian Payments Council)を設立、米国の大手銀行であるウェルズ・ファーゴは新たなテクノロジーへの積極的な取り組みを推進するなど、独自の対抗策を展開している。
国内の加盟店としても、「国によるキャッシュレス化の推進」「新たな決済手段の出現」「訪日外国人向け決済手段対応」などにより、決済手段に関する環境が大きく変わる可能性がある。当然、決済端末も拡張性が求められるようになる。
フィンテックについては、金融機関と零細企業との関係が難しい状況だが、NTTデータでは個別のオープンイノベーションの支援目的で、ベンチャー企業の技術やプログラムなどを集めて支援する「デジタルコーポレートアクセラレートプログラム(DCAP)for フィンテック」を提供している。NTTデータでは、金融機関のニーズを取り込み、該当するフィンテック企業30社を選定して、マッチングを支援している。また、人的ネットワークに加え、個会社のデータベースを活用して、5社程度の企業に絞り込むという。
インバウンド対応では多彩な決済、免税、CLOサービスを提供
「CAFIS Arch」ではキヤノン製の端末を2機種用意
なお、NTTデータが提供するカード決済ネットワーク「CAFIS」は、年間5億件を取り扱う。さまざまな業態・業種の加盟店と国内ほぼすべてのクレジットカード会社・金融機関とを結び、24時間365日、日本の決済シーンを支えている。
「CAFIS Inbound Solution」では、DCC(多通貨決済サービス)、銀聯やシンハンカードなど各種決済サービス、免税サービス、CAFISのCLOサービスであるスマートフォン向け販促ソリューション「CAFIS Presh」等を組み合わせて提供する。
クラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」では、決済種類・手段の多様化、訪日外国人旅行者の大幅な増加などにスピーディーに対応する。キヤノンマーケティングジャパンとキヤノン電子の「CAFIS Arch」に対応したプリンター一体型決済端末(PRea(プレア)決済端末(仮称))は、本体のみで利用できる「通信一体型モバイルモデル」と、スマートフォンやタブレットと連携して使用する「スマートデバイス連動モデル」の2機種を用意して提供する。また、大画面型の端末の提供も行う。
従来の決済端末では、アプリケーションを組み込んで提供していたが、新端末ではセンター側で作りこんでいるため、新クラインとでつなぎこみが可能で、拡張性、柔軟性に優れている。
「CAFIS Presh」は、CAFISのクレジットカード決済情報や、スマートフォンから取得できるGPSやWifi、 Beacon等の位置情報を活用し、消費者がインストールしたスマートフォンアプリに対して最適なクーポンや キャンペーン情報をプッシュ通信できる。すでにパルコや福岡地所での採用実績がある。たとえば、福岡地所では、アプリユーザーの店舗の購買率が10%高まっており、付近に訪れた人に広告を出すと10%来店率が高まるなど、年間2億円ほどの効果がある。
「CAFIS DMP」は、加盟店各社のID-POSデータやTwitterのTweet情報を収集し、そのデータを分析することにより、加盟店様やメーカー様の商品開発や販売促進などのマーケティング活動をより効率的・効果的なものにするサービスとなる。
最後に、NTTデータでは、Asian Payment Network(APN)にも加盟している。APNは、「アジアにおける新しいリテール決済ネットワーク」を目指し2006年にASEAN主要国中央銀行主導により設立され、2010年以降は非ASEAN諸国も加盟し、各国間のリテール決済分野の新たな仕組みの検討・提供を行っている。アジアの結びつきが深まり、これからもっとも発展するリージョンのなかで、早くからタッグを組んで、新たなスキームの構築ができればと考えている。