カード会員の明細情報を500以上のカテゴリに分類
パーソナライズされた情報をタイムリーに
現在、クレディセゾンでは、デジタルガレージと共に、クレジットカードの明細情報をより詳しく識別するために、大・中・小のカテゴリに分けて、ライブラリ化する作業を進めている。
「クレジットカードの明細情報はビッグデータとしての利活用の価値はありますが、加盟店名はテキストデータで、業種コードなどを分類しにくい状態でした。それを大カテゴリ60、中カテゴリ230、小カテゴリ500以上に分類しており、現在、全体の8割ほど分類が完了しています」(磯部氏)
こうして構築されたセゾンDMPだが、従来の画一的な配信ではなく、パーソナライズされた情報をタイムリーに届けることで需要を喚起する情報配信の実現を目指している。具体的な活用法として、例えば、あるユーザーが海外旅行の予約をする際、クレジットカードの与信枠では限度額ぎりぎりだったとする。その際、クレジットカード会社に相談すれば限度額をアップすることも可能だが、多くの人は枠が足りないと考え、カードでの代金支払いや旅行自体をあきらめてしまっている。その課題解決に向け、クレディセゾンのオウンドメディアや外部の旅行サイトなどで限度額アップの告知を出すことで、旅行の申し込みにつなげ、なおかつ旅行前の準備での購買に結び付け、旅行先でのショッピングも楽しんでもらうことが可能になる。
また、海外旅行の顕在ユーザーと共通項を持つ潜在層を導き出し、需要を喚起させるようなプロモーションをかけることも可能だ。
「お客様のクレジットカードの利用パターン、ウェブ上での行動パターンなどを解析することでお客様に適した情報をタイムリーに配信できるようになります」(磯部氏)
さらに、スマートフォンとオーソリデータを連携させることで、顧客のイベントに応じたタイムリーな情報配信が行える。例えば、池袋の洋服店で買い物をした場合、そのオーソリデータとウェブ行動履歴、位置情報から顧客のニーズを把握し、即座にニーズに応じた近隣店舗の家電量販店の特価セールをプッシュ配信することが可能となる。
そのほか、カード会社として、セゾンDMPを活用し、リボやキャッシングの利用を高めていくことも想定している。
外部のアドネットワークとは9月以降に連携開始
フィンテック企業での活用も視野に
すでに、6月15日にはデータベースが完成。Webサービスの「Netアンサー」に配信面を用意した。会員がNetアンサーにログインすると、ハッシュ化されたIDがセゾンDMPに蓄積され、そのデータを機械学習により解析している。今後は約半年かけて、500~600万会員のデータがセゾンDMPに蓄積されると見込んでいる。サイトにログインした会員に対しては、自社のプロモーションや広告の出し分け等を行っており、そのPDCAのサイクルが回り、登録者のボリュームが増すごとに、より精度は高まるとみている。また、外部のアドネットワークとは9月以降の連携を予定しており、データベースを連携させることで、O2Oやプロモーションの精度をより高めていく方針だ。
下期には同社の公式アプリ「セゾンPortal」との連携もスタート。来期以降にはフィンテック企業での活用も視野に入れている。たとえば、クレディセゾンが出資しているFincやMoneyForward等のデータと連携させることにより、「将来的にはフィンテック分野においてデータベースを活用していきたいです」と磯部氏は口にする。
ネットにおける新しいブランドリーチの受け皿を目指す
カード会社のリソースを使って企業のマーケティングや業務効率化を支援
なお、セゾンDMPは、データサイエンス事業を手掛ける株式会社BI.Garageが開発したプライベートDMPサービス「BIG MINING Private」をクレディセゾン向けにカスタマイズしたものだ。BI .Garageは、デジタルガレージと電通との合弁会社であるため、国内最大手の広告代理店である電通の広告ビジネスにおけるノウハウや知見も得てビジネスを展開できる。
「ネットの世界では、CPA(Cost Per Acquisition)のように費用対効果が分かる指標が重視されていますが、セゾンDMPはカードデータを使うため、カテゴリごとの特定のターゲット層にリーチできることも大きな意味があると思います。参加するクライアントも通販にかぎりません。、新しいブランドリーチのための受け皿となり、デジタル広告における広告主の裾野の拡大に寄与していきたいです」(磯部氏)
最後に、磯部氏が所属するデータマーケティング部を含むクレディセゾンのネット事業部では、プロモーション、顧客データ連携・リサーチ、法人ソリューション、メディアの運営、ベンチャー連携など、多岐にわたる業務を行っており、すでに取引数は300~400社となっている。磯部氏は、「今後はリサーチやメディア、決済ソリューションなどを増やして、カード会社ならではの正確な顧客データを活用したネットマーケティングソリューションに本格的に取り組んでいきたいです。」と語る。カード会社が持つ豊富で正確な情報というリソースを活用し、企業のマーケティング支援や業務効率化がよりスムーズに実現できる世界を目指していく方針だ。