EC・通販ビジネスの動向と決済との関わり

3)Instagramの「Shop Now」リリースで衝動買いを促せる

2018年特に注目を集めたSNSといえば、Instagramだろう。中でも、Instagram上から商品を直接購入することができるショッピング機能「Shop Now」のリリースは、大きな話題を呼んだ。Shop Nowのリリース以降、Shop Nowの導入をサポートするプランの提供を開始する企業や、本機能への対応開始を発表するブランドが相次いだことからも、その注目度の高さがうかがえる。

ECなどのオンラインでは、オフラインに比べ、衝動買いが起こりづらいと言われている。なんとなくサイトを見るというよりは、「◯◯が欲しい」という明確な目的を持ってサイトを訪れることが多いと考えられているからだろう。だが、Shop Nowを活用すれば、特になにかを買うつもりもなく、何気なくInstagramを見ていた時に、たまたま流れてきた投稿の商品に一目惚れしてそのまま買ってしまう、といった衝動買いを増やすこともできるかもしれない。このような、オンライン上ではあまりなかった購買までの導線をInstagram上で描くことができるようになったのは、EC事業者にとって大きな変化に違いない。

ジャストシステムが行った『Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2018年9月度)』(※8)によれば、ECサイトのSNSアカウントをひとつ以上フォローしている人は27.9%。2017年6月度の調査と比べて5.8ポイント増加している。また、Instagram利用者のうち、Shop Nowについては、「本機能を使って商品を購入した」人は6.8%、「知っているが、本機能を使って商品を購入したことがない」人は24.4%。その認知率は31.2%にのぼっている。特に20代のShop Nowの認知率はすでに46.3%と、およそ2人に1人はShop Nowの存在を認識している。

ファッションやコスメ、家具、雑貨など、写真映えしやすい商材を扱うブランドにとっては、SNSの主戦場はInstagramになっていくかもしれない。多くの情報が流れていく中、どうやって投稿に目を止めてもらうか。Shop Nowを活用する際のひとつのポイントになりそうだ。

(図表4)フォローしているSNS アカウント

※ 8 20 代「Instagram」利用者の約半数が、新機能「ShopNow を認知」 https://marketing-rc.com/report/report-ecmonth-20181030.html

4)キャンペーン大成功のPayPay、Amazon、楽天、LINE各社の2018年を振り返る

2018年、決済にまつわるトピックの中でもっとも話題となったもののひとつといえば、ソフトバンクとヤフーの両社が2018年6月に設立した「PayPay」による「100億円あげちゃう」キャンペーンだろう。2018年12月4日、100億円を上限とし、PayPayを利用し加盟店で買い物をすると、購入金額の20%(最大5万円)が返ってくるというもの。20%必ずキャッシュバックされるという点はもちろん、抽選で40回に1回の確率で全額キャッシュバックされ、Yahoo!プレミアム会員ならその確率が20回に1回、ソフトバンクとワイモバイルユーザーなら10回に1回にアップするという点も、大きな話題を集めた。このキャンペーンは開始当初、その期間を2019年3月31日までとしていたが、12月13日に100億円に到達したとして、わずか10日間で終了した。

想定よりもかなり早いスピードで上限に達したのは、購入頻度があまり高くない、家電などの高額商品が多く購入されたことも要因のひとつだと考えられる。せっかく20%還元されるのなら高額なものを買いたいというユーザーが多かったのだろう。ビックカメラグループ(ビックカメラ、ソフマップ、コジマ)では、キャンペーン開始日と同じ12月4日より、PayPayの対応を開始。キャンペーン期間中、ビックカメラの公式Twitterでは、「#PayPay」のハッシュタグだけでなく、「#ビックでPayPay」など、独自のハッシュタグもあわせて活用し、積極的に情報発信を行ったことも功を奏したのかもしれない。

一方、PayPayに登録したクレジットカードでの不正利用が問題となった。PayPayはこの対策として、2018年12月18日にセキュリティコードを含むクレジットカード情報の入力回数に制限を設けたことを発表。同月末には、不正利用が起きた場合に全額を補償することも明言した。2019年1月には事前にカード発行会社に登録したパスワードを入力することで本人認証を行い、不正利用を防ぐ仕組み「3-Dセキュア」にも対応した。(※9)

本キャンペーンで、一気に認知度をアップさせたPayPayだが、本当の勝負はこれからだ。PayPayのアプリをダウンロードしたユーザーに、どうやって継続的に使ってもらうか。その取り組みにも注目が集まりそうだ。

PayPayのキャンペーンが10日で終了したその翌日、支払い額の20%を還元するキャンペーンを開始したのは、LINE Payだ。LINE Pay は、2018 年6 月末に、QRコード決済普及施策を発表。同時に、事業者向けの決済アプリ「LINE Pay 店舗用アプリ」の提供を開始した。本アプリでは、レジ機能はもちろん、店舗のLINEアカウントと連携することにより、LINEの友だちにメッセージを配信することも可能。ジャストシステムが発表した調査データ『Eコマース&アプリコマース月次定点調査 2018年総集編(※10)』によれば、ECサイトからの通知を受け取っているSNSの中で、商品購入につながっているSNSとしてもっとも多くのユーザーに名前を挙げられたのが、LINEであった。友人や知人とのコミュニケーションを楽しむ場としてだけではなく、企業と消費者をつなぐプラットフォームとしても、多くの人がLINEの存在を受け入れていることのひとつの表れではないだろうか。いまや人々のインフラにもなったこのコミュニケーションプラットフォームを武器に、LINEは実店舗を含めたコード決済に力を入れていくのだろう。

実店舗への進出といえば、2018年8月にAmazonがスマホを使った実店舗での決済サービスを開始した。グループ外の店舗でサービスを展開するのは、世界でも日本が初めてとなる。これにより、スマホにダウンロードしたAmazonショッピングアプリに表示されるQRコードを使って、飲食店や美容院、衣料品店などの実店舗で支払いが可能となった(※11)。サマンサタバサの直営店舗をはじめ、東京や福岡を中心に導入店舗も広がっているが、まだその普及は限定的なようにも見える。実店舗への進出は、Amazonにとってもひとつの大きな転換点だろう。

一方オンラインでは、2018年12月、Amazon Payに対応したAlexaスキルの提供を開始。これにより、JTBおでかけチケット、出前館などではスマートスピーカー「Amazon Echoシリーズ」を使った音声注文にも対応することが可能となった。音声によるショッピング、いわゆるボイスコマースの市場規模は、2018年3月では20億ドルであったが、2022年までにはその2倍、40億ドルへ増加するとの見方もある。(※12)。

2018年のホリデーシーズンの注文数も、過去最大を記録。ニールセンの調査(図表5)によれば、日本国内におけるオンラインショッピングサービスの利用者数をみると、18-64歳では「アマゾン」が4,079万人で1位(※13)。2018年4月には、有料のプライム会員が世界で1億人を突破したことも明らかにしたAmazon(※14)。オフラインだけでなく、オンラインの施策にももちろん抜け目はない。

(図表5)日本国内におけるオンラインショッピングサービスの利用者数

Amazon Payをどのようにオフラインで広めていくのかももちろん注目すべき点ではある。だが、オンラインで圧倒的な存在感を示してきたAmazonがリアルの場へ進出したことによって、どのようにオンラインとリアルを融合させるのか。それによって、どんな新しい顧客体験を生み出していくのか。そこからもますます目が離せない。

上述したニールセンの調査でAmazonに続き2位につけたのは、楽天である。日本での利用者数は4,028万人と、Amazonとの差は僅か。その会員数も、1億以上にのぼる。(※13)(2018年9月末時点)。そんな楽天の決済におけるトピックのひとつが、フリマアプリ「ラクマ」の売上金を楽天キャッシュにチャージできる新機能の提供開始だ(※14)。ラクマでは2018年7月から、その売上金を楽天会員向けのオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」にチャージすることで、楽天グループサービスや楽天ペイに対応している実店舗などでも利用することが可能となった。これにより、現金化するというフローを一度も経ることなく、アプリでの売上金を、オフラインで活用することができる。この形が、楽天が目指すひとつのキャッシュレスの形なのかもしれない。

※ 9 PayPay、スマホ決済サービス「PayPay」が本人認証サービス(3D セキュア)に対応 https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP500538_R20C19A1000000/

※10 2018年、最も利用が伸びたECアプリは「ZOZOTOWN」 https://marketing-rc.com/fa_report-ecmonth-20190122.html
※11 Amazon Pay、実店舗でのスマートフォン決済への対応を開始 https://amazon-press.jp/Top-Navi/RSS/Presse-release/amazon/jp/Payment/AmazonPay/0828_instore/
※12 Voice Shopping Set to Jump to $40 Billion By 2022, Rising From $2 Billion Today
https://www.prnewswire.com/news-releases/voice-shopping-set-to-jump-to-40-billion-by-2022-rising-from-2-billion-today-300605596.html
※13 18-64歳の人口の56%が「アマゾン」、「楽天市場」を利用 ~ニールセン ECサービスの利用状況を発表~
https://www.netratings.co.jp/news_release/2018/08/Newsrelease20180830.html

5)「キャッシュレス」をブームで終わらせないために

2018年を振り返れば、Amazon、楽天、LINEなど、オンラインで成長を続けてきた大きなプラットフォーマーたちが、リアルへの進出を加速。同時に、キャッシュレス化を進めるために独自の戦略を打ち出した1年だったように思う。政府が2020年までにキャッシュレス化40%という明確な目標を掲げたことにより、日本でもその対応が求められている一方、キャッシュレス化を進めることの意味や理由については、まだまだ浸透していないようにも感じる。二次元コードによる決済を行ったことがある人は、PayPayをはじめ、各企業が行うキャンペーンでのポイント還元やクーポン配布などのメリットを享受することが目的であることが、大半なのではないだろうか。

だが、真にキャッシュレス化を進めるための肝となるのは、こういったキャンペーンが終わった後も引き続きアプリを使ってもらうためにはどうしたらいいか。つまり、キャッシュレス化そのもののメリットを消費者に感じてもらうためには何が必要なのか。お得感以外のメリットをいかに提供するか。こういった点だろう。キャッシュレスという言葉を世間が認識し、少しずつ興味を持ち始めた今が、何よりの勝負時であることは間違いない。東京オリンピックまでいよいよあと1年。2019年の各社の戦略に、一層注目していきたい。

※14 米アマゾン「プライム会員」が1億人突破 会員数を初めて公表 https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL19H0S_Z10C18A4000000/
※15 1分で分かる楽天エコシステム(経済圏) https://adsales.rakuten.co.jp/business/rakuten/
※16 楽天、フリマアプリ「ラクマ」の売上金を 「楽天キャッシュ」にチャージできる新機能を提供開始 https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2018/0703_01.html

カード決済&リテールサービスの強化書より

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