2026年7月1日8:10
TOPPANは、セキュアなICカード開発で培った強みを生かし、量子コンピュータでも解読が難しい耐量子計算機暗号(Post-quantum cryptography 以下PQC※)を搭載したICカード「PQC CARD」の展開準備を整えた。同カードは、現在クレジットカード発行などで使われている暗号方式とPQCのハイブリッド方式を採用し、スムーズな技術移行に対応しているそうだ。 ※耐量子計算機性を持つ暗号アルゴリズムを意味し、公開鍵暗号アルゴリズム以外にも、共通鍵暗号やハッシュ関数も含まれるもの

既存暗号からの早期移行が求められる? 「PQC CARD」を世界で初めて開発
クレジットカードの認証をはじめ、オンライン診療や電子商取引などのインターネットサービスは、暗号技術によって安全に守られている。しかし、将来的に量子コンピュータによって、現在普及している暗号技術が破られる可能性が高い。TOPPANホールディングス 技術開発本部 総合研究所 情報・量子技術系 シニアエキスパート 鳥羽牧氏は「ICカードも公開鍵暗号を使っていますから、量子コンピュータができると、1つのセキュリティが破られてしまいます」と話す。そのため、量子コンピュータでも破ることが難しいとされるPQCが開発され、既存暗号からの早期移行が求められているそうだ。不正なICカードを作成されてしまう危険性があるため、「PQCへのスムーズな移行が重要となります」と鳥羽氏は続ける。

TOPPANは、2022年にPQCを搭載したICカード「PQC CARD」を世界で初めて開発し、その後も研究開発を進めてきた。鳥羽氏は「公開鍵暗号からPQCへの移行期間がありますが、1枚のカードで今の暗号もPQCも両方使えるものを作りました」と語る。PQC CARDは「ハイブリッド方式」を採用しているため、安全性を保ったままスムーズに次世代セキュリティへに移行できる。
PQC CARD は、NIST(米国国立標準技術研究所:National Institute of Standards and Technology)から2024年に発表された実質的な世界標準である規格「FIPS 204 ML-DSA(旧:CRYSTALS-Dilithium)」をいち早く実装した。
医療従事者の認証、アクセス制御を実施 PQCへの移行技術の実証実験に成功
TOPPANでは、2022年8月~10月にかけて、H-LINCOSにおける医療従事者の認証、アクセス制御などの基本動作確認と技術的課題の抽出を行った。PQC CARDを医療従事者が持つ資格証明書であるHPKIカード(保健医療用公開鍵認証カード)にみたて、ICカード認証と顔による生体認証を組み合わせることで、電子カルテを閲覧する際の多要素認証を実施した。鳥羽氏は「PQCカードによってお医者さんなどの電子カルテシステムのユーザを認証することで、電子カルテの情報を安全に閲覧する仕組みを検証しました。例えば、看護士さんであれば電子カルテシステムのうち閲覧すべき範囲が限定されるため、PQCカードでユーザ認証とともにアクセス権限の管理を行いました」と話す。
また、TOPPANでは、2025年10月から2026年3月にかけ、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、カナダのISARA Corporationとともに、PQCへのシームレスな移行技術の実証実験に成功し、有用性を確認した。同実証では、ISARAが開発した、ECDSA(公開鍵暗号方式ECCベースの電子署名アルゴリズム)などの現行暗号からML-DSAなどのPQCへの移行を簡便にする「第2の暗号アジャイルルート認証局が発行する電子証明書」を、NICTが構築した量子暗号ネットワークテストベッド上で、TOPPANが開発したICカードシステムに適用した。その結果、移行段階においても安全性が維持され、既存のICカードシステムから、システム停止を伴わずにスムーズにPQC環境へ移行可能であることを確認した。また、量子暗号ネットワークと連携することで、データ送受信者間での盗聴を不可能にする量子鍵配送と、利用者の真正性を保証するPQC認証を組み合わせた多層防御を実現したそうだ。
なお、同実証の一部は、内閣府SIPプログラム『先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進』(研究推進法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の支援を受けて実施している。
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