2021年4月15日8:00

電車やバスの乗降時に割引券と交換できるポイントを付与

KDDI、南予広域連携観光交流推進協議会、JR四国、全日本空輸、伊予鉄バス、宇和島自動車、瀬戸内ブランドコーポレーション、 一般社団法人愛媛県バス協会、石崎汽船は、2020年10~12月に愛媛県南予地域でMaaSの実証実験を行った。NFCタグおよびQRコードを搭載したステッカーにスマホをかざして購入するデジタルフリーパスを提供し、地域活性化とキャッシュレス化を推進するための交通・観光各社を巻き込んだ南予全体の座組ができ上がったことや、観光客の足取りが可視化できたことなど、今後につながる成果が上がっている。

9団体が参画した観光型MaaS実証実験
チケット購入はGoogle Pay/Apple Pay連携

KDDIが幹事を務める南予観光型MaaS実証実験協議会では、2020年10月29日~12月31日まで、国土交通省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」採択事業として、南予観光型MaaS(Mobility as a Service)実証実験を行った。愛媛県南予地域のJR四国の特急列車、伊予鉄グループや宇和島自動車の路線バスなどが乗り放題の「えひめ いやしの南予デジタルフリーパス」を発売し、観光客の周遊促進と運賃支払いのキャッシュレス化を図った。

左からKDDI 経営戦略本部 地方創生推進部 マネージャー 小泉安史氏と同部 マネージャー 山田啓太氏

デジタルフリーパスは南予全域が対象で3日間有効の「南予全域フリーパス」(大人6,000円/小児3,000円。ただし松山空港または松山観光港のリムジンバス併用タイプは大人7,000円/小児3,500円)と、エリアを限定した「内子・大洲街並散策1日パス」(大人2,840円/小児1,420円)の2種類。駅や空港などに設置したNFCタグおよびQRコードを搭載したステッカーにスマホをかざして購入手続きができるほか、ANAアプリの「空港アクセスナビ」からも購入できるようにした。「南予全域フリーパス」では交通機関に乗るとき、降りるときにそれぞれ1ポイントが付与され、4ポイント貯まると観光施設の入場割引券と交換できる。

南予地域は歴史、自然、食など観光資源が豊富で、例年インバウンドを含む600万人の観光客が訪れるが、キャッシュレス化が遅れており、特に路線バスの距離別運賃は外国人には非常にわかりにくく、交通遅延の原因にもなっている。今回実験に使用したデジタルフリーパスは、NFC/QRの読み取りが可能なスマートプレートを活用し、さらにGoogle Pay、Apple Payのモバイルウォレットとも連携。アプリのダウンロードや会員登録、クレジットカード登録不要で、ステッカーにかざすだけでチケットの購入・表示が可能だ。事業者にとっては電源、決済端末、初期費用不要で導入できる、安くて手軽なキャッシュレスシステムを実現することができた。

NFC タグイメージ(ステッカータイプ)

KDDIでは2020年2月4日~3月31日まで、沖縄でMaaSの実証実験を行ったが、このときはネイティブアプリを利用した。「チケットの表示にアプリの立ち上げが必要だったために、那覇空港で人々が滞留するという現象が起きた。これに対してスマホをタッチするだけで自動的にチケットが表示されるスマートプレートは、非常に使い勝手が良いと考えています」(KDDI 経営戦略本部 地方創生推進部 マネージャー 山田啓太氏)。コスト面のメリットも大きい。ネイティブアプリの開発費は3,000万~5,000万円が相場といわれているが、今回のシステムは1,000万円を下回る費用でスタートできた。

フリーパスは周遊促進に効果
NFC浸透にはユーザーへの訴求も必要

実証実験の結果、デジタルフリーパスを利用した観光客のうちの多くが、当初の想定を上回り、交通機関を3~5回も乗車。ポイント付与などの施策により、周遊促進の効果を上げることができた。また、タッチポイントをトレースすることで、松山駅、松山空港、あるいは松山観光港から各観光施設への動線を可視化することができた。さらには「地域産業活性化という目的のもとに企業・団体が集結し、大きな座組を形成できたことが、何よりの成果だと考えています」とKDDI 経営戦略本部 地方創生推進部 マネージャー 小泉安史氏は述べる。コロナ禍で外国人や東京・大阪からの観光客が激減し、利用者数は目標の3,000人に届かなかったというものの、今回の実験を通して、ハード/ソフト両面でシステム運営の基盤を整えることができた。

課題として残ったのは、各駅や数百台におよぶバスにNFCタグを配置したにもかかわらず、NFCの利用件数が想定よりも伸びず、QRコードの利用が大半を占めたこと。小泉氏は「直感的にタッチするだけで乗降できるNFCの良さを、地域の皆様に伝えきれなかったため、技術面の改善とユーザーへの訴求、この両面からアプローチを進め、以降もNFCの浸透に力を入れていきます」と意気込みを見せた。

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