2015年10月19日8:00
スムーズな入場に加え、回遊データをビッグデータとして活用
フジテレビが開催する「お台場夢大陸~ドリームメガナツマツリ~」は、総入場者数460万人以上が訪れた夏の一大イベントとなった。同イベントの有料エリアでは、NFCリストバンドが入場券やデジタルスタンプラリー、オーディションの投票に活用された。また、公式アプリではBeacon(ビーコン)システムと連動するなど、ITを駆使して、来場者の満足度向上を図ったそうだ。
NFCリストバンドを入場や各ブースでタッチ
デジタルスタンプラリー、アイドルへの投票にも活用
「お台場夢大陸」はフジテレビが2003年から開催している夏の一大イベントの今年のタイトルだ。同イベントでは、最新のテクノロジーと番組とのコラボレーションも実施されているが、昨年までは、紙の1DAYパスポートを首から下げて入場ゲートで提示する仕組みを採用していた。
「一言でいうと、『もっとかっこよくしたい』というところから、イベントの協力会社と導入の検討が進みました。今回はNFCリストバンド、公式アプリと連動してBeaconを導入しましたが、成果を感じています」(フジテレビ 事業局事業部 プロデューサー 田中晋太郎氏)
今回、NFCシステムの導入の決め手となったのは、「次年度以降の開催に向け、マーケティングの材料になると考えたからだ。スタッフは、PCでNFCリストバンドへのアクティベーションを行い、1日限り利用可能な入場券として有効化する。NFCリストバンドは、入場ゲートでの照合に利用するだけではなく、各アトラクションブースの入り口にもリーダを設け、かざしてもらった。
「NFCリストバンドでの1DAYパスポートを販売する際に、PCで来場者属性を登録したため、どういった人が来場し、どのブースを回遊したのかをビッグデータとして取得することができるようになりました。これにより、来年以降のブースの配置やレイアウトなどのプランニングに役立てることが可能となりました」(田中氏)
NFCリストバンドは、加工費も含めて50~60円。防水加工してあるリストバンドだったため、雨の日でも特に大きなトラブルはなかったそうだ。ただ、開催初年度ということもあり、入場券を販売するスタッフのオペレーションは若干複雑になり、紙の1DAYパスポートを販売していた時に比べて1.3~1.5倍、業務の負荷がかかったという。また、NFCリストバンドを読み取るリーダについては、据え置き型に加え、屋外を中心に防水性のスマートフォンを使用している。
NFCリストバンドは、デジタルスタンプラリーとしても活用。北川景子さん主演のドラマ「探偵の探偵」と連動し、リーダにNFCタグをかざすとチェックポイントがクリアでき、北川景子さん演じる探偵紗崎玲奈から悪徳探偵を探す指令映像に沿ってそれぞれのスポットを巡るものだ。また、NFCタグをかざし、タッチパネルでお気に入りのタレントに投票が可能な「ドリームメガガールズオーディション」も行われた。田中氏は、「NFCリストバンドで投票していただくことで、限りなく信憑性の高い投票ができたと考えています」と成果を口にする。
公式アプリではBeaconを活用してメッセージを配信
2016年はデータを解析し、一歩進んだサービスを目指す
新技術としては、イベントの公式アプリと連動したBeaconシステムも採用。イベント来場者へのアンケートでは、公式アプリに対しての評価が非常に高かったそうだ。Beaconと連動することで、利用者が屋外エリアのどこにいるのか、またフジテレビ社屋のどの階のどのエリアにいるのかがアプリの場内マップに表示される。さらに、常駐のスタッフが、リアルタイムにその日のイベントの情報をBeaconからプッシュ通知で配信した。今回は、屋内外にBeaconを70~80台設置したが、たとえば屋外は50メートル、屋内は十数メートルといったように、設置する場所に応じて、通信距離の制御を行った。
田中氏は、「フジテレビの夏のイベントが一歩踏み込んだというイメージを着実に植え付けることができました。来場者の行動については、昨年までは現場スタッフの肌感覚でしかわかりませんでしたが、NFCシステムにより、ニュートラルなデータを取ることができ、財産になりました」と語り、笑顔を見せる。イベント終了後は、データ解析を始めており、来年の開催に生かすべく分析を進めている。
初年度の課題としては、NFCリストバンドを発注してから時間が必要になるため、在庫切れを万が一にも防ぐため多めに発注しなければならず、若干在庫を抱えたことだ。
なお、今回のシステムは継続した運用を目的に導入。今年に限っては初期の開発費が必要だったが、2016年以降も運用することで、初期開発費用は償却できると考えている。
2015年は検討から導入までの期間が短かったため、基本的な機能の提供にとどめたが、「来年は場内で使える域内通貨など、新しいことに何かしら取り組めればと考えています。また、決してスタッフの数は減ってはいませんので、そういった課題もクリアすべく取り組んでいきたいですね」と田中氏は意気込みを語った。