2025年3月17日8:30
モスフードサービスが2014年に開始した「モスのネット注文」(以下、ネット注文)は、ニーズが急増したコロナ禍を経て認知が浸透し、現在は全体の約10%で推移している。2024年にはこの機能を拡充し、レジカウンターに並ばず席から注文・決済が可能な「お席で注文」をモスバーガー全店に導入した。「ネット注文」および「お席で注文」には完全キャッシュレスで対応。支払いには、同社独自のプリペイドカード「モスカード」や各種クレジットカードのほか、PayPay、d払い、dポイントが利用できる。同社はほかにも、店内にセルフオーダー端末を設置したり、Uberなどのフードデリバリーサービスに対応したりと、さまざまな施策を講じて、お客様の利便性向上を図るために注文・決済の多様化を進めている。
ネット注文を完全キャッシュレス化
クレカのほかPayPayやd払いも利用可能
モスフードサービスでは2014年に、業界に先がけ、「ネット注文」を導入した。利用者はあらかじめ会員登録をし、スマホやパソコンから商品を注文。宅配か店頭で商品を受け取る。当初は注文件数全体の1~2%だったネット注文は、コロナ禍で利用者が急増し、認知が拡大。その後は全体の約10%の水準を保ち、現在に至っている。
2024年には、ネット注文の機能を拡充し、レジカウンターに並ぶ必要なく、席から商品を注文できる「お席で注文」を導入した。QRコードの付いたシールをテーブルに貼り、顧客が自身のスマホでこれを読み取って注文・決済を行う仕組み。このため、テーブルにシールを貼ることのできない商業施設内フードコートなどの立地店舗には導入できないが、それ以外、同社全店約1,300店のうちの約1,150店に導入済みだ。レジに長い列ができがちな都市部の店舗や、2階席がある大型店などでは特にお客様に好評で、「お席で注文」の利用が都心の店舗を中心に増加しているという。
ネット注文、および「お席で注文」では、現在、完全キャッシュレスを採用している。支払いには「モスカード」、各種クレジットカードのほか、PayPay、d払い、dポイント、Apple Payが利用できる。最近ではPayPayの利用が目立ち、なおも増加傾向にあるという。ちなみにモスバーガーでは、商品購入100円につき、1ポイントのdポイントが貯まる。
「モスカード」は、モスバーガー店頭とアプリで手数料無料で発行できる、同社独自のプリペイドカードだ。初回は1,000円以上500円単位での入金が必要。繰り返し入金して使え、通常は3,000円以上の入金で1%、毎月25~29日は1,000円以上の入金で4%がMOSポイントとして還元される。近年はPayPayの利用拡大などに伴い決済が多様化しているため、「モスカード」の利用率はそれほど高くないものの、長く使い続けているヘビーユーザーが少なくない。
WEB経由の注文が約2割
利便性向上のために選択肢を増やす
同社では従来から電話注文を導入しており、店舗によって差はあるが、5~8%の利用があった。当初はこれをネット注文に置き換えることを目標とし、電話注文をした顧客一人一人に電話口でネット注文を案内するといった地道な告知活動も行った。「そのようなアナログな施策が意外と功を奏して、じわじわと利用が広がっていきました」とモスフードサービス 経営企画本部デジタル化推進部 森秀樹氏は振り返る。ネット注文は前述したように、現在では約10%と、以前の電話注文比率を超えている。
同社ではUber、Wolt、シェアリングデリバリー(出前館)といったフードデリバリーサービスにも対応しており、これらの利用は全体のおよそ10%。これを合わせれば、ネット回線経由の注文は、約20%を占めるまでになっている。
同社 営業本部営業企画サポートグループ 吉村慎之介氏は「モバイルオーダーは特別な目的、特別な用途で使うものではなく、普段の来店のときにも事前にオーダーするといったように、お客様の意識や行動が変容していると感じています」と指摘する。
店内においても、「お席で注文」をはじめ、セルフオーダー端末の設置拡大など、顧客自身で注文・決済手続きを完了する場面が増えている。
これによって店舗側には、作業の軽減、省人化といったメリットが生まれる。「しかしわれわれは、効率化のためだけにモバイルを導入しているわけではありません。最も重要視しているのは、あくまで、多様な注文方法を提供することによる、サービス力の向上です」と吉村氏は強調する。森氏は、「あくまで店舗の負荷とのバランスをとりながらではあるが」と前置きしつつ、「ネット注文を単体で考えるのではなく、選択肢を広げて、トータルでお客様にご満足いただけるサービスを提供していきたい」としている。
「決済・金融・流通サービスの強化書2025」より