2011年5月24日8:42
2010年のペイメントカードビジネスはどう動いたか?
日本カードビジネス研究会では「New Payment Report 2011」を発行した。同社ではNew Paymentを「情報技術を活用した現金に代るキャッシュレスの決済手段」と捉えている。同レポート編集長の日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則氏に2010年のペイメントカードビジネスの総括と今後の注目点について解説してもらった。
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則氏インタビュー 前篇
キャリアの送金サービス参入で市場が活性化
非接触電子マネーの取扱高が50%成長
――2010年、国内の決済はどう変化しましたか?
佐藤:「未来の種子は過去にあり」ということで、New Payment Report2011では、2010 年のトピックスをまとめています。国内の2010年のトピックスの1 位は「資金決済法施行、事業会社の送金サービスはじまる」、2 位には「非接触電子マネー取扱高50%成長」を取りあげました。3 位は「クレジットカード関連法案施行」で、2010年6月に改正貸金業法、12月に改正割賦販売法が施行され、いずれもカード業界の収益を圧迫する規制強化となりました。
4位は「プレミアムカード発行ラッシュ」です。クレジットカード会社は、キャップをはめられたキャッシングの金利収入の減少をカバーするため、年会費収益が期待できるプレミアムカードをこぞって発行しました。5位は「ギフトカードモール助走段階へ」であり、セブン-イレブンやイオンなどでギフトカードモールが立ち上がり始めました。
――資金決済法に関しては登録事業者が10社程度となかなか増えませんね。
佐藤:送金サービスに関しては、資金を前払いして送金しますので、登録事業者が増えていけば、さらにプリペイド決済の取り扱いが増えると見ています。特にNTTドコモなど、携帯キャリアが本格的にサービスを開始すると姿が変わってくるでしょう。
プリペイドカードは最も大きな伸びを見せました。日本銀行の発表を見ても非接触ICカードを活用した決済は50%の伸びを見せています。駅の券売機も10分の1程度になりました。ギフトやプリペイドのサーバ型も50%の伸びを見せています。この分野はギフトカードモールの事業が立ち上がり始めており、引き続き成長が続くでしょう。
2010年を振り返るとデビットカードは海外同様に伸び始めると思いましたが、それほど多くの参入企業は表れませんでした。その一方で、クレジットカードが予想以上に伸びています。2010年のクレジットカード取扱高は、個人消費が停滞するなかで、対前年比6.0%もアップしたのです。ただ、昨年に関してはエコポイントの特需が大きく、海外はさらに大きな成長を見せています。2010年はプレミアムカードの発行により、優良顧客に絞って稼動率をあげるという戦略を取るクレジットカード会社が増えましたが、その成果は2011 年にあらわれてくるでしょう。
プリペイドは今後順調に成長
ブランドプリペイド発行事業者も次々に登場?
――今後、クレジット、デビット、プリペイドのなかではどの分野が伸びると考えますか?
佐藤:総括すると、クレジット、デビット、プリペイドの3つの支払手段に分けた場合、2015年まで、一番大きな伸びを見せるのはプリペイドであると考えます。交通系電子マネーの充実に加え、流通系も「nanaco」や「WAON」以外にも、中小企業でも発行が増えています。ギフトカードモールの普及により、サーバ管理型のギフト・プリペイドも市場を形成しつつあります。
また、ブランド搭載のデビットは、オーバードラフトリスクを取りにくいためなかなか銀行の参入が増えませんが、逆にクレジットカードや通信販売などの事業者がブランド搭載のプリペイドカードを発行する動きがあります。ブランドデビットやプリペイドは国際ブランドのネットワークを利用しているため、汎用性があります。
デビットカードはメガバンクが発効すれば伸びると思いますが、市場が本格的に立ち上がるのに2年くらいかかると思います。
――2011年3月に震災がありましたが、2011年はその影響は出てくるのでしょうか?
佐藤:2011年に関しては、震災の影響も出てくるとは思いますが、クレジットカードのショッピングに関しては比較的、堅調に推移していますし、電子マネーについても3月はキャンペーンの遅れなど、一時的な影響はありましたが、トレンドに影を落とすほどにはならないでしょう。クレジットカードに関しては、2011年1月で7%、2月は4%伸びています。そのため、クレジットカードについては、2011年で4%の成長が見込めるでしょう。