PayPay「給与デジタル払い」のユーザーと事業者メリットは?PayPay銀行口座で手数料の負担軽減、OBCとのID連携で利便性向上へ

2024年8月22日8:40

キャッシュレス決済サービス「PayPay」を展開するPayPayは、2024年8月21日、賃金のデジタル払い(以下、給与デジタル払い)に関する説明会を開催した。PayPayは年内にすべてのPayPayユーザーを対象に同サービスの提供開始を予定しているが、PayPay銀行での給与受取によるコスト削減や振込口座としての利用促進に加え、オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する「奉行Edge 労務管理電子化クラウド」との連携などで、給与デジタル払い推進に向けた機能を強化していく。

池谷貴

PayPay執行役員 金融事業統括本部 金融戦略本部 本部長 柳瀬将良氏

PayPayはデジタルな財布に
給与受け取り希望額は平均13.4万円

PayPay執行役員 金融事業統括本部 金融戦略本部 本部長 柳瀬将良氏は「PayPay今まで支払い手段でしたが、これからはデジタルなお財布になっていく転換期に来ています」と語る。朝起きたら自動でPayPayにお金が入金されており、すぐに使える状態になっている。また、忙しくて給料日を忘れていた人に対して、PayPayが教えてくれる。柳瀬氏は「給与は本当はハッピーモーメント。それをきちんとユーザーにも伝えていきたい思いでこのサービスを作りました」と説明する。

PayPayは、2024年8月9日に、資金移動業者の口座への賃金支払い(給与デジタル払い)に対応する資金移動業者として、厚生労働大臣の指定を受けた。サービスは8月14日からサービスを開始している。サービス名は「PayPay給与受取」だ。

賃金は現金の受け渡しが原則であると労働基準法で定められていたが、1975年2月に銀行口座を含めた金融機関口座、1998年9月に証券総合口座、2023年に資金移動の口座に解禁された。資金移動の口座すべてに対応したわけではなく、厚生労働省が定めるガイドラインに準拠し、厚生労働大臣からの指定を受けた資金移動事業者の口座のみが利用可能だ。

2022年中の給与支払総額は231兆円、給与所得者数は5,967万人となる。給与をPayPayアカウントで直接受け取り可能にすることで、PayPay経済圏により入りやすく、使いやすくなるそうだ。PayPayでお金を貯めたり、運用したり、備えておくなど、お金に関するあらゆることがアプリでワンストップに提供可能だ。

PayPayが2年前にアンケートをとったところ、電子マネーによる給与受取への興味関心は28%の人があった。また、PayPayでの給与の受け取り希望額は平均13.4万円となり、「5万円、10万円未満かと思っていましたが、サービスを企画する我々からすると少し驚きの結果となりました」と柳瀬氏は話す。

使う分を自動的に受け取り可能に
事業者の追加のサービス契約・システム開発は不要

現在、ほぼすべてのユーザーが給与を1つの口座で受け取っているが、給与デジタル払いにより振り分ける世界になるため、「使う分を自動的に受け取ってもらうのが最大の価値になる」とした。例えば、副業やスポットワーカーなど給与の受け取り先が2つ以上ある人には、通常の銀行口座ではなくて使い分けてもらうことができるようになる。さらに、受け取った給与はPayPayアプリですぐに使用できる。

事業者側のメリットとして、「企業側の対応方法をできるだけ簡素化するということを心がけてサービスを設計してきました」と柳瀬氏は話す。銀行振込の仕組みを使うため、事業者とPayPayの間の契約は一切必要ないという。事業者側も追加のシステム開発は一切不要だ。簡単な手続きを事業者と従業員で対応してもらうだけで対応が可能だ。

年内にはすべての利用者へ提供開始
ユーザーは自身で入金用口座番号を申請

PayPayアプリでは、PayPayのトップ画面の右下に給与受け取りのアイコンを表示。8月14日以降、ソフトバンクグループ10社の従業員に対して希望しているユーザにのみ表示しており、年内にはすべての利用者が使えるようにしていく。今回の取り組みは企業の従業員から希望があった場合にのみ振込可能で、企業が一括して契約するといったことはないそうだ。

利用開始の手続きとして、右下のアイコンをクリックするとチュートリアルが出て、PayPayで給与を受け取ること、20万円の上限があるなどを説明している。その後、勤め先がデジタル給与に対応しているかどうかをアンケートで聞き、最後に端末認証をする。給与を扱うため、毎回端末認証が必要だ。自動送金の口座として、20万円の上限を超えた際に自動的に送金をする先を設定する。

最後に、給与受け取り口座として表示された番号をコピーしてもらい、それを勤務先に届ける流れだ。「登録は1分もかからずにできる世界感を目指しています」(柳瀬氏)。最後に表示される「PayPay銀行スペード支店」がバーチャル口座と言われる給与受け取りの口座番号であり、その番号を事業者に伝え、実際に給与受け取りの入口にしてもらう。給与受取時、通常は紙で申請書を出したり、Web画面上で入力しているが、ここに「PayPay銀行スペード支店」として自身の名前の付いた番号を入力する必要がある。

登録が済み、給与日に、勤め先から給与が支払われるとPayPayアカウントに自動でチャージされる。PayPayマネー(給与)は、銀行口座への送金ができる。

給与はPayPay銀行宛の送金は無料に
残高上限は20万円

すなわち払い出しによる現金化ができるバリューになり、受け取った給与は毎月1回好きな金融機関に無料で送金できる。2回目以降、PayPay銀行宛であればいつでも無料、PayPay銀行以外宛は100円となる。

PayPayマネー(給与)は20万円の上限がある。20万円を超えた場合、あらかじめ登録しておいた銀行口座に送金され、その際の手数料は不要だ。

銀行振込手数料の課題をPayPay銀行と解決
「奉行Edge 労務管理電子化クラウド」とシステム連携

雇用主(事業者)向けとして、事業者とPayPayとの間での契約は一切必要ない。銀行振込の仕組みを使うため、システム系開発がないという。行うのは簡単な事務手続きとなり、従業員と事業者の間で労使協定の締結、従業員への説明、個別の同意取得のみとなる。ソフトバンクグループ10社では、従業員に対してこの3つを行っているそうだ。

事業者からすると、銀行振込に手数料がかかることは、今回、システム開発等負担を減らすということの副作用として残っている。「PayPay銀行との取り組みでこの障害を乗り越えます」(柳瀬氏)。

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