2014年6月3日7:00
英国の決済ロードマップ
未来の決済を描き着実に実行
Payments Roadmap in UK
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
2014年4月29日、英国で新しいモバイルサービスがスタートした。モバイルで支払うのでサービス名称は「ペイエム(Paym)」。ペイムではなくペイエムというのが正式な発音だ。察しのとおり、このmはMobileのエムをとっている。携帯電話番号だけで、相手の銀行口座に安全に送金や受金できるというモバイルサービスである。電話番号という本人固有の番号と、銀行口座番号を紐づけ、直接口座に送金できるようにした。そのために英国の全金融機関を巻込んで、セントラルデータベースを構築するというほど、結構な熱のいれようなのである。モバイルサービスといえば、携帯電話会社や銀行などの金融機関、あるいはGoogleやAmazonなどの大手ネット企業が提供するサービスだと考えるのが一般的であろう。
しかし、ペイエムはそのいずれでもない。推進しているのは英国決済協議会(Payments Council)である。しかも、英国決済協議会はボランタリーメンバーの組織。ここが英国のユニークなところだ。
英国決済協議会はこれにとどまらず、カード、現金、小切手、銀行間清算システムなど、すべての決済手段をカバーし、英国の決済革命を推進している。最近日本で話題になっている24時間年中無休の銀行資金決済ネットワーク「ファスターペイメント(Faster Payments)」もそうだ。高齢者にやさしい決済のあり方も検討している。
これらのユニークで先進的なサービスは、英国決済協議会が描いた決済ロードマップにもとづいて開発、運営されている。利用者にとって便利な決済とはなにか。英国の経済成長を促進する決済とはなにか。そういう視点から、ロードマップを作成しているのである。
最近は特に技術革新のスピードが速く、消費者のニーズは常に変化している。いったん企画設計したロードマップであっても、逐次修正を加えていかなければならない。英国決済協議会は柔軟に、そしてスピーディに対応している。
英国決済協議会はどのようは方法で決済ロードマップを作成しているのだろうか。それはなにをめざそうとしているのか。成果は上がっているのだろうか。英国の決済革命を推進するロードマップについて、検証してみることにしよう。