2025年3月13日8:00
サンフレッチェ広島は、2024年2月に開業したホームスタジアム「エディオンピースウイング広島」内の飲食販売において、決済のキャッシュレス化を推進している。オフィシャルキャッシュレスサポーターのJCBの協力のもと、クレジットカード、電子マネー、コード決済のそれぞれに多種多様な決済手段をラインナップ。キャッシュレス決済比率は徐々に拡大し、6~7割に上っている。これによって決済にかかる時間が短縮し、レジの混雑が緩和。その結果1人当たりの購買回数が増え、売上増にも貢献している。2024年9月にはNFCタグを活用した決済の実証実験を実施するなど、今後を見据えた新たな知見の獲得にも積極的に取り組んでいる。

主要な決済手段を網羅
キャッシュレス比率は6~7割に
2024年2月に開業したサンフレッチェ広島の新しいホームスタジアム「エディオンピースウイング広島」は、繁華街にほど近い広島市中心部に位置している。ファン目線を重視して設計されたスタジアムには42種類の座席が用意され、全席屋根付き。国内最大級のメインビジョンや最先端の照明・音響設備を有し、臨場感あふれる観戦を楽しめる。
もうひとつの自慢は、試合開催日に「世界のグルメを食べつくせ!」をコンセプトに提供されるスタジアムグルメ。サンフレッチェ広島では、この販売において、決済のキャッシュレス化を推進している。売り子によるドリンク販売は、キャッシュレスのみの対応だ。
「エディオンピースウイング広島」では、JCBがオフィシャルキャッシュレスサポーターを務める。同社の協力のもと、決済手段はクレジットカード、電子マネー、コード決済のそれぞれに、多種多様なラインナップが組まれている。主要な決済手段をあまねく網羅し、ほぼ不足はない。インバウンド需要に応えるべく、Alipay、WeChat Payの利用も可能だ。
サンフレッチェ広島 事業本部 スタジアムビジネス部 主任 有木陽祐氏は「決済端末は売り子が持ち歩け、操作できることを条件に選択しました」と話す。同機種を約100台導入し、売り子、飲食、ワゴン販売で使用している。
開業当初は現金とキャッシュレスの比率がほぼ半々であったが、徐々にキャッシュレスの割合が増え、現在ではキャッシュレスが6~7割を占める。
キャッシュレス化が進むにつれ、決済にかかる時間、利用者の待ち時間が短縮され、ストレスが軽減。2度3度と購買を繰り返す利用者が増えて、売上増にも貢献している。
将来の選択肢拡大を視野に
NFCタグ決済の実証実験を実施
「エディオンピースウイング広島」では2024年9月、NFCタグを活用したキャッシュレス決済の実証実験を実施した。NFCタグ決済では、数百円レベルで安価に購入できるNFCタグと台紙を用意するだけで、クレジットカード決済を導入することが可能だ。利用者のスマートフォンをNFCタグにかざすと、メニュー選択や金額入力をするためのWebブラウザが立ち上がり、決済までを完了できる仕組みが提供される。
実証実験では、売り子のドリンク販売と、テーブルオーダーにNFCタグ決済を導入して、効果を検証。ドリンク販売では売り子スタッフがNFCタグの付いたストラップを首にかけ、テーブルオーダーではテーブル上にNFCタグ付きのPOPを設置。Apple PayもしくはGoogle Payで決済するかたちをとり、利用者がWebブラウザ上で「Apple Pay(もしくはGoogle Pay)で決済する」ボタンを押すと、事前に登録したクレジットカード情報を利用した決済が行えるフローとした。
同社にとっては決済手段の広がりの可能性を検証する試みであり、「新たな知見の獲得、利用者へのNFCタグ決済の認知拡大という観点からも効果がありました」(有木氏)と、実証実験の結果を評価している。
ネット環境が決済スピードを左右する
有線接続も視野に改善策を検討
「エディオンピースウイング広島」のキャッシュレス化推進において最も懸念されていたのが、ネット環境の安定性。同社ではすべてを無線でつないでいるが、2万8,000人収容可能なスタジアムが満席になったとき、Wi-Fiのキャパが耐えられるかどうかは、実際にその場面を体験してみなければわからなかったことだ。Wi-Fiの利用は、キックオフまでの1時間と、ハーフタイムに、ピークに達する。当初はこのとき、決済のスピードが遅くなるといった事態が発生していたが、大きなトラブルには至らず、現在までほぼ安定した運用が維持されている。しかし非常事態に備えて、常設の売店などにおいては、有線でのネット接続を引き続き検討しているという。
「決済・金融・流通サービスの強化書2025」より