2012年5月11日8:00
ジオサービスから決済までO2Oサービスを強化
NFCによる店舗へのチェックイン、「Yahoo!ウォレット」決済のリアル展開を狙う
「Yahoo! JAPAN」を提供するヤフーでは、「O2O(Online to Offline)」のサービスを強化している。国内最大級のジオサービス「Yahoo!ロコ」を利用した送客やNFC(Near Field Communication)技術を活用したO2Oの実証実験、カード会社のジェーシービーやクレディセゾンと提携した狙いなどについて、話を聞いた。
リアルの世界でもYahoo! JAPANとの強固なつながりをつくる
「Yahoo!ロコ」による店舗への送客に力を入れる
ヤフー(Yahoo! JAPAN)では、「Yahoo!ロコ」を展開する地域サービス本部や「Yahoo!ウォレット」等の決済サービスを展開するR&D統括本部などが中心となり、O2Oビジネスに関するプロジェクトを社内横断で立ち上げている。
これまでヤフーでは、検索サービスなどにより、飲食店や物販といった店舗の情報をインターネット上で提供していたが、「ネットの情報を見て実際に顧客が店舗に来店したかどうかは、今まで追えなかった」(ヤフー メディア事業統括本部 地域サービス本部 本部長 村田岳彦氏)そうだ。また、インターネットの世界は成長しているが、まだまだ市場規模はリアル店舗の足元にも及ばない。そのため、ネットのみならずリアルの世界でも顧客の情報を捉える仕組みが必要となる。
同社のO2Oの展開としては、大きく3つに分けられるという。まず、リアルの店舗や施設等の情報をますます得やすくするために、2011年6月にそれまで同社が展開してきた地域生活圏情報に関わる7つのサービスを集約し、日本最大級のジオサービスとして「Yahoo!ロコ」を公開した。各店舗の有益な情報をロコで紹介し、店舗までナビゲートすることが1つめの役割となる。
2番目は、「チェックイン」に代表されるようなサービスの展開により、利用者が店舗に来店したことを捉える仕組みの構築が挙げられる。
最後に、同社では、Yahoo! JAPAN IDに紐づいたサービスで、クレジットカード、銀行口座などの支払い情報を登録することにより、「Yahoo!オークション」、「Yahoo!ショッピング」、「Yahoo!プレミアム」会員費など利用の支払いが行える「Yahoo!ウォレット」や、上述のサービスの利用で貯まる「Yahoo!ポイント」のリアルでの展開を想定している。
「Yahoo!ロコ」からリアル店舗に送客し、「Yahoo!ウォレット」や「Yahoo!ポイント」がリアルの世界で利用可能になることで、各工程でログが蓄積されますので、それをクラウド上に展開してマーケティングデータとして活用していただくことを想定しています」(村田氏)
NFC搭載スマートフォンによる実験を積極的に展開
「Yahoo!ロコ」からの送客は、想定以上の反応
「Yahoo!ロコ」からの送客および店舗へのチェックインについては、大日本印刷と連携し、2012年3月15日~31日まで、神奈川県横浜市のみなとみらい地区・桜木町駅前の商業施設「Colette・Mare(コレットマーレ)」でNFC搭載スマートフォンを利用したタッチラリーを実施した。これまでおサイフケータイなどを利用したタッチラリーのサービスは行われていたが、今回はNXPセミコンダクターズのICチップ「MIFARE」に対応。ヤフーで特集ページを作成し、「Yahoo!ロコ」による「コレットマーレ」への送客を行い、施設内のタッチポイントを楽しみながら施設内を回遊できるラリー形式のキャンペーンを実施した。5箇所のタッチポイントのうち、3箇所以上にタッチした顧客には、飲食店で利用できるクーポンを配布。また、抽選で、コレットマーレにおいて利用できる「お買い物・ご飲食券」をプレゼントしている。
「例えば、特定の階しか訪れないお客様も、商業施設の最上階から地下まで、全体をまわりながら魅力を再発見することが可能です。アクセスしているIPアドレスからは、横浜住人の方も多く、お客様の動線をみても、「Yahoo!ロコ」を利用した送客は想定通りに行われたと感じています」(ヤフー メディア事業統括本部 地域サービス本部 企画2部 藤井美帆氏)
また、トッパン・フォームズ、東京急行電鉄(東急電鉄)と協力し、東急東横線の渋谷駅、自由が丘駅の二駅において、NFCスマートポスターと「Yahoo!ロコ」を活用した実証実験を2012年3月26日~4月22日まで実施した。同実験は、お得なクーポン情報などをICタグに埋め込んだスマートポスターを対象の二駅にそれぞれ設置し、「Yahoo!ロコ」から実店舗への送客について検証するものである。
「駅の構内の限られた場所での展開でしたが、NFC対応の端末の普及率を考えれば、想定以上のご利用をいただけたと思います」(藤井氏)
今後は、同仕組みを利用した店舗支援も検討している。村田氏は、「弊社では現在、リスティング広告のサービスを展開していますが、それをリアルの店舗でも適用できるような仕組みを考えていく方針です」と説明する。
ただ、NFCについては、端末の普及もこれからとなっており、本格的なサービスインは2年先であると想定している。そのため同社では引き続き、関連企業と協力し、サービスの可能性を検証していきたいとしている。
カード会社のジェーシービー、クレディセゾンと提携
スマートフォンを利用した「Yahoo!ウォレット」アプリを開発へ
すでにヤフーでは、「Yahoo!ウォレット」や「Yahoo!ポイント」の各社との連携をスタートしている。例えば、パシフィックゴルフマネージメントとは、ゴルフ予約やゴルフ場利用の決済に関するポイント連携について協議している。また、カード会社や家電量販店、共通ポイントサービス運営事業者とは、ポイント交換サービスも積極的に実施している。
さらに、カード会社のジェーシービー、クレディセゾンと提携をスタート。両社では、「Yahoo!ロコ」の加盟店開拓およびカード会員へのサービスの利用促進を行っている。大手から中小まで、クレジットカードが利用できる加盟店網を持つカード会社との提携により、サービスの推進がスムーズに進むと同社では期待する。また、JCBとは将来的に、スマートフォンを活用した決済端末のアプリケーションを開発し、「Yahoo!ウォレット」をリアルの店舗でも利用できる環境を整備することを検討中だ。
なお、福岡の「Yahoo!JAPANドーム」では、ソフトバンクモバイルが提供するスマートフォンを利用した決済ソリューションが採用されているそうだ。
ヤフーでは、将来的にグループ全体で収益を倍にする方針を打ち出している。同社では今後も、Yahoo!JAPAN利用者に対し、インターネットに加えリアル店舗でのサービスの場を提供することで、リピーターとして同社サービスを便利に利用してもらう方策を考えていきたいとしている。