2013年11月8日8:00
eコマース革命で決済手数料も業界最安値水準の3.24%で提供
決済時の「Tポイント」の手数料も無料に
ヤフー(Yahoo! JAPAN)は、2013年10月7日、インターネットショッピングサービス「Yahoo!ショッピング」のストア出店料(月額システム利用料)と売上ロイヤルティ、オークションサイト「ヤフオク!」のストア出店料(月額システム利用料)の無料化を発表した。これにより出店を躊躇していた出店者等の障壁が低くなるなど、EC業界を揺るがす発表となったが、実はクレジットカードの決済手数料も業界最安値水準の3.24%となったのはあまり知られていない。また、2013年7月1日から、「Yahoo!ポイント」を共通ポイント「Tポイント」に切り替えているが、従来必要だった決済手数料の0.5%の支払いも無料となっている。
カード決済手数料も従来の3.6%から3.24%に
大手出店者の「Yahoo!ウォレット」機能活用も増加へ
ヤフーが打ち出した「eコマース革命」。「Yahoo!ショッピング」では、これまで出店者から初期費用2万1,000円、月額費用2万5,000円、売上ロイヤリティとして1.7~6%を徴収していた。これをすべて無料とすることで2019年までに国内EC流通総額商品数で1位を目指すことを打ち出したが、その途端5万店(個人が3万店)もの申し込み希望があったそうだ。
Yahoo!JAPANでは、今回のシステム改定により、他のショッピングモールへの対抗というよりは、民間最終消費支出に占めるeコマースの割合(3%)を如何に10%、20%にするかということを考えている。そのため、出店者のエントリーハードルを下げることで、「Yahoo!ショッピング」を活性化させる狙いがある。従来は、期間限定商品を販売する店舗でも出店料を支払う必要があったが、これを撤廃することで気兼ねなく出店でき、それにより競争原理が働き、各コマースサイトの力も高まり、取り扱いも伸びる。
今回、初期費用、月額費用の無料に加え、出店者から徴収するクレジットカード決済手数料も従来の3.6%から3.24%に引き下げている。これにより大手モールでは最安値水準の手数料でサービスを提供することが可能となった。
「カード決済手数料が下がった分、出店者様からお客様へ還元をしていただきたいと考えています。既存の出店者からの要望もありましたが、決済の世界で0.36%の差は大きいです。弊社にとっても手数料の引き下げは収益面で大変になりますが、出店者の皆様が売上を伸ばしてもらえればカバーできると考えています」(ヤフー セントラルサービスカンパニー 決済金融本部 本部長 田鎖智人氏)
今回の手数料率改定は、新規の出店者に加え、既存の出店者も対象となっている。既存の出店者のなかでもYahoo!JAPANIDを持つユーザーが登録したクレジットカード等を利用して簡易に決済が可能なYahoo!ウォレット機能を利用していないコマースサイトもあったが、今回の手数料改定を機に基本的には全面導入される予定だ。
「今まで料率の問題でYahoo!ウォレット機能を導入していなかったところもありましたが、11月から導入を順次開始する予定です。これにより、お客様はその都度、カード番号の入力を必要とせず、ワンクリックで決済が可能となります」(田鎖氏)
Tポイントの手数料をYahoo!JAPAN自体が工面
出店者はポイントの原資のみで販促が可能に
また、7月から国内最大級の共通ポイントサービスである「Tポイント」もしくは「Yahoo!ポイント」を選択制から、Tポイント一本に切り替えたが、ポイントの手数料もYahoo!JAPAN自体が工面するようになった。従来、出店者はTポイントを選択すると、決済金額に対し0.5%の手数料の支払いが必要だったが、それが無料となり、ポイント原資のみの負担で済む。例えば、ユーザーが100円の買い物をした場合、1ポイントのTポイントが付与されるが、これまでは1.5円分の金額を支払っていた。それが、原資の1円分の負担で済むそうだ。
「これまでTポイントを運営するTポイント・ジャパンでは、EC加盟店の開拓はネット専業の大手企業を中心に行ってきました。そのため、リアルでTポイントに加盟している企業や、ネットの中小企業がEC加盟店になることは困難でしたが、 Yahoo!ショッピングに出店するだけで、投資はほとんどなくTポイントの導入が可能になります」(ヤフー セントラルサービスカンパニー 決済金融本部 決済企画部 ポイント サービスマネージャー 大根広元氏)
出店者の拡大により、Yahoo!ショッピングの店舗は大きく増える可能性があり、Tポイントが利用できる店舗数も飛躍的に伸びそうだ。
ネットに加え、リアルでの展開も強化
約2,800万人の会員を2倍に高める
「共通ポイントは大手企業の導入が多かったですが、それだけでは利用者の生活をカバーできませんので、ネットのテールとしてYahoo!ショッピング、リアルのテールとしてタブレット端末『T-UNIT 3』を用意しています。それにより、お客様の生活シーンの多くをカバーでき、ポイントの利便性も高まります」(田鎖氏)
ポイントの手数料を無料にしたことで、7月以降はTポイントを「Yahoo!ショッピング」の自社サイトの販促に活用する出店者も増加したという。例えば、ポイント付与を2倍にするなどキャンペーンに利用した企業は10%程度伸びているそうだ。
ヤフーではジェーシービーと提携して発行する「Yahoo! JAPAN JCBカード」の営業も強化しているが、「ポイントの魅力が高まることにより入会が促進できるプロダクトですので、どこでも、いつでも、便利に貯まるというインフラを作れば必然的にカードの入会者数も伸びると思います。eコマース革命により、ネットの品揃えは他社と遜色ないレベルに持って行けると思いますので、それに加え、リアルの店舗で貯まる魅力を訴えていきたいです」と田鎖氏は意気込みを見せる。
今後は、外部の世界でもYahoo!JAPAN IDが利用できる「Yahoo!ウォレット」の普及も期待されるが、「利用できるサイトが増えるように頑張りたい」とヤフー セントラルサービスカンパニー決済金融本部 決済企画部ウォレット/決済 サービスマネージャー 黒原貴文氏は力を込める。
なお、今回のサービス改定を機に、自社サイトからの外部リンクを可能にしているため、本店カートへの誘導も可能だ。場合によっては、「Yahoo!ショッピング」から本店カートへ送客されてしまうように思われるが、「Yahoo!ショッピング」にとっては品揃えが増えること、利用者にとってはYahoo!JAPAN IDを利用して簡便に買い物ができ、Tポイントも付与されるメリットがあるため、決してマイナスにはならないと考えているそうだ。