「置き配」にポイント、待ったなし「2024年問題」に再配達削減の動きが加速(EC NOW)

2024年2月8日8:16

長時間労働を是正する「働き方改革」の一環として、2024年4月からトラックドライバーの年間残業時間上限が960時間に規制される。ドライバー不足にさらに拍車がかかる恐れがあり、「2024年問題」の名称で政府や業界内で議論が進む。中でも物流が必須な通販・EC事業者にとっては重要課題であり、まずは再配達削減を目指し「置き配」を強化。利用者にポイントを付与する取り組みが加速し、政府も後押しに着手している。

通販研究所 渡辺友絵

記事のポイント!
①再配達削減に注力する配送業界や通販・EC業界
②「Yahoo!ショッピング」は置き配でPayPayポイント
③置き配率38%を24年度に目指すファンケル
④アスクルやフェリシモも取り組む
⑤政府が「物流革新緊急パッケージ」策定
⑥ポイント付与で再配達率半減へ

⑦ポイント付与だけによる効果は限定的?
⑧自社顧客の意識改革を進めることも重要

■目前に迫る重要課題、置き配拡大が救世主に

4月からはドライバーが1日に運ぶ物量が減ることは確実で、配送の遅れや配送料金値上げなどが懸念される。国土交通省の「令和4年度宅配便・メール便取扱実績について」によれば、2022年度の宅配便取扱個数は50億588万個で前年度と比べ5265万個増加。コロナ禍によるEC利用の急増をきっかけに、配送件数が増えたことも大きな要因といえる。

注文件数自体を減らすことはできないものの、23年10月時点で取扱個数の11.1%を占める「再配達率」の削減は可能というのが、政府をはじめ物流業界や通販・EC業界の考え方だ。ドライバーの時間外労働や人手不足を解消でき、CO2削減にもつながる。そこで、再配達削減の有望施策として進められてきたのが、商品注文の段階で宅配ボックスや物置などの場所を指定しておく「置き配」という受け取り手法だ。

例えば、一戸建て住宅玄関前にカギ付きの簡易型宅配ボックスを設置する取り組みは、自治体単位での実験的な導入が進む。自宅近くのコンビニや、駅構内に置かれた宅配ロッカーを利用する手法も、対応策として次第に増えてきた。

こういったさまざまな「置き配」手法を導入し再配達削減に注力する配送業界や通販・EC業界だが、ここにきて目立つのが「置き配」利用客へのインセンティブとなるポイント付与施策だ。

■ヤフーやファンケルが置き配利用顧客にポイント付与

「Yahoo!ショッピング」は2024年1月から、配送方法を置き配指定するだけでPayPayポイントを付与するキャンペーンを開始。再配達を防ぐために「置き配」の認知度を上げ、顧客に利用してもらうことを目的とする。

1,000円以上の買い物をした顧客が玄関ドア前や物置、車庫といった場所から選んで置き配指定すると、1回の注文ごとに10円相当のPayPayポイントを提供。事前エントリーは不要で、キャンペーンは同年3月まで3回に分けて行う。

「置き配」のキャンペーンを実施(出典:ヤフー)

ファンケルも24年1月下旬から2月末までの期間限定で、不在・在宅にかかわらず「置き配」を選択した顧客に自社ポイントを提供するサービスを始めた。1回当たり10ポイントで、置き場所は玄関前やメーターボックスなどから選ぶことができる。

ファンケルは業界に先駆け、1997年から「置き配サービス」を導入。さらに、複数回の注文をまとめ配送回数を削減してくれる顧客に対し、30ポイントを付与する「おまとめ配送」も展開する。今回のキャンペーンを機に「置き配」をさらに推進し、現在30%程度の置き配率を24年度には38%まで拡大させたいという。

アスクルが運営する「LOHACO」も22年8月から、5のつく日の注文で急がない荷物は余裕がある届け日を指定する「おトク指定便」を展開。届け日によりポイント数は変わるが、3,780円以上の注文でPayPayポイントを提供する。また、24年2月には、置き配指定でPayPay 10ポイントを提供する期間限定キャンペーンも行っている。

通販大手のフェリシモも出資する物流インフラ提供会社LOCCO(ロッコ)は、置き配の利用者にTポイントを付与するサービスを2021年から手がける。同社の置き配サービス「OCCO」を通じて手続きすると、荷物1個で10ポイントを付与。ポイント原資は自社が負担する仕組みで、再配達削減効果により安価な配送料を提供できるとしている。

置き場所は利用客が選ぶ(出典:ファンケル)

■再配達削減に向けて政府が実証事業開始

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