2011年8月30日1:08
ID・ポイント連携や新カード発行で業務提携
スマートフォンを活用した新しい決済インフラ構築も視野に
「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーと、ジェーシービー(JCB)は、2011年8月29日、EC分野における両社の顧客へのサービス向上と、O2O(オンライン・トゥ・オフライン)分野におけるリアル店への集客支援を目的とした業務提携を行うと発表した。
MyJCBのIDとYahoo! JAPAN IDの連携サービスを提供
新「Yahoo!カード」をJCBブランドで発行へ
EC市場は2010年で8兆円の規模があると言われているが、「外食産業の24兆円、小売業の135兆円などに比べるとまだまだ規模は小さい」とヤフー取締役最高執行責任者 喜多埜裕明氏は話す。JCBは加盟店ネットワークが、Yahoo! JAPANはメディア力が生かし切れていないのが現状だ。また、オンラインでの情報がオフラインの購買活動に一定の影響を与えているが、両社ではまだまだリアル市場を活性化できると考えている。
JCBには6,926万人のブランド会員がおり、Yahoo! JAPANは「Yahoo!オークション」の訪問者が月3,957万人、「Yahoo!ショッピング」の訪問者が月3,926万人いる。O2O市場でみると加盟店契約数は700万強あり、Yahoo! JAPANのユニークカスタマー数は月5,202万人いる。両社では、それぞれが持つ強みを生かし、店舗の集客支援や決済環境整備につながる取り組みを共同で実施する。
具体的には、JCBカードの会員専用のWebサービス「MyJCB」のIDと「Yahoo! JAPAN ID」の連携サービスを提供する。JCBカードのポイントサービスである「Oki Dokiポイント」が貯まるJCB会員は、「JCB×Yahoo!ポイントクラブ(仮称)」へ登録するとさまざまなサービスを受けることが可能となる。
まず、2011年10月から、Yahoo! JAPAN内のサービス利用に応じて特典を付与する優良顧客向けプログラム「スタークラブ」制度において、ID連携したJCBカードの利用金額をスタークラブへ加算し、ロイヤルカスタマー向けのサービスを提供する予定だ。
また、Yahoo! JAPANでは、2005年から「Yahoo!カード」の発行を行っているが、2012年5月をめどに、新「Yahoo!カード」をJCBブランドで発行する。既存のYahoo!カードも更新時には新カードに切り替える。新カードは、通常の買い物で1%のポイントが貯まるが、Yahoo!ショッピングの利用でプラス2%、スマートフォンの利用でさらにプラス1%のポイントが付与される。また、リアル店舗での利用でもYahoo!ポイントが1%貯まる。そのほか、スタークラブと連動した優遇なども予定している。
Oki DokiポイントをYahoo!ポイントへ移行可能に
JCB加盟店にYahoo!ロコ プレイスページへの登録を促進
ID連携を行うことで、Oki Dokiポイントを、自動的に「Yahoo!ポイント」へ移行することも可能になる。移行したポイントはYahoo! JAPAN内のサービスで利用可能だ。
「ポイントの移行により、オンラインだけではなくオフラインも含めてお客様に利便性を提供していきたい」(喜多埜氏)
Yahoo! JAPANは、日本最大級のジオサービス「Yahoo!ロコ」を展開しているが、2011年10月を目処に、JCB加盟店に対し、Yahoo!ロコが契約店舗に提供するホームページ「Yahoo!ロコ プレイスページ」への登録を促進する取り組みをスタートする。JCB加盟店では、Yahoo!ロコが提供する「クーポン」といった販促ツールの活用や、チェックイン機能を利用して利用者の友人なども含めた来店促進を図る。また、JCB会員向けの優待店舗を募り、「JCB優待店」を両社のサイトでPRする。JCBは取扱加盟店が718万あるが、数万~数十万のYahoo!ロコ加盟店の獲得を目指すという。
2012年5月からは、Yahoo! JAPAN IDをベースとしたネットでの購買、閲覧履歴とJCBのリアルでの購買履歴を合わせる形で、新Yahoo!カードの会員の嗜好にあわせたお勧め情報などを配信する予定だ。
スマートフォンを活用した決済端末を開発へ
BtoBや広告への活用も視野に入れる
将来的な構想としては、ネットで貯まったYahoo!ポイントをリアルの加盟店で利用できるようにするという。また、リアルの店舗でYahoo!ポイントが貯まり、使えるサービスも検討していく。JCBでは、それを実現するツールはスマートフォンであると見ており、JCB加盟店においてスマートフォンで決済できる環境を整備する予定だ。
「従来の加盟店の決済は(据え置きの)端末機を使っていましたが、スマートフォンを使って、既存のクレジット、デビット、電子マネーに加え、Yahoo!の決済やポイントサービスなどのアプリケーションをダウンロードすることにより、加盟店端末の機能としてスマートフォンが使える世界を実現する予定です」(ジェーシービー 代表取締役兼執行役員副社長 松本直樹氏)
加盟店端末がスマートフォンになれば、多彩な決済手段の処理を1台で実現でき、かつコストも安くなる。また、例え新たな決済手段が登場しても、アプリケーションをダウンロードして追加することが可能だ。さらに、スマートフォンのアプリケーションは店舗への送客だけではなく、仕入れなどBtoBへの活用や広告などのPRなどにも有効活用できるとしている。