2011年12月15日8:00
気仙沼復興協会にFeliCa Liteを利用した出退勤管理システムを導入
PCだけでなくAndorid搭載スマートフォンをリーダに活用
コスモ・サイエンティフィック・システムは、ソニーの協力を得て、被災地の雇用促進と復興を支援する一般社団法人気仙沼復興協会(KRA)に、「FeliCa Lite」を搭載したカードを使って、PCやAndorid搭載スマートフォンで勤怠を管理するシステムを導入した。
コスモ・サイエンティフィック・システム
スタッフが増えるなか出退勤管理の効率化が課題に
勤怠ケータイで屋外やLAN/WAN設備がなくても勤怠管理を実現
気仙沼は、沿岸部加工場や事務所が集中しているため、2011年3月の東日本大震災で市内の事業者の7~8割が被災し、失業者は1万人を超えたという。一般社団法人気仙沼復興協会(KRA)は、被災を受けた気仙沼の人々の雇用支援と、1日も早い生活再建を目的に4月28日に立ち上げられた。
KRAの設立に携わった東京大学 修士課程新領域創成科学研究科 西塔大海氏、慶應義塾大学 修士課程理工学研究科 畠山享氏は、「被災地で職を失った人のために仕事を作り出し、雇用を確保する。もう1つは被災者が自分たちの手で街を復興させる手だてとなるようにしようと考える有志が集まり、設立されました」と説明する。
KRAは現在、清掃部、福祉部、写真部、ボランティア受入部から構成されている。清掃部は、被災家屋の泥だしやゴミ拾い、側溝の清掃、福祉部は仮設住宅居住者に対し、お茶会などのイベントを開催している。写真部は被災した写真の洗浄やアーカイブを行い、被災者にもとに近い形で戻すことを目的としており、これまで約100万枚を洗浄して40万枚が持ち主のもとに手渡された。また、ボランティア受入部は、ボランティア活動を行う団体や個人の受け入れを支援している。
KRAでは11月頭の時点で約80人が勤務していた。しかし、社員の勤怠管理システムについては、タイムレコーダーなどがなく、スタッフが紙ベースの出退勤表を手作業でチェックしていたという。KRAの職員も徐々に増えているなか、業務効率の面でも手作業では効率が悪い。また、遠隔地に複数拠点が存在しているため、管理作業の一元化も課題になっていた。
コスモ・サイエンティフィック・システムでは、3月11日発生の大震災により被害を受けた人々に対して、募金活動などの支援を行っている。また募金などの間接的な支援以外にも、企業としてできることは無いかと模索していたところ、KRAの支援者のひとりである任意ボランティア団体Nomadic Volunteersの浜田雄氏から出退勤管理についての相談を受け、導入に至った。
今回、KRAに導入したコスモ・サイエンティフィック・システムの「勤怠ケータイ」は、PCはもちろん、市販のスマートフォン、従来の携帯電話をICカードのタイムレコーダーとして使用することが可能な出退勤管理サービスである。被災地での仕事では、複数の現場での作業があり、なかにはLAN/WANといったネットワークの環境がない場合もある。特に外出先の現場で直行直帰を行う作業では、タイムリーに出退勤管理を行うのが難しかった。その点、携帯電話のネットワークを利用して、タイムリーに出退勤の管理を行うことはKRAとして魅力的だった。
GPS機能を利用して位置情報を取得
ソニーがFeliCaカードを200枚拠出
また、スマートフォンからはGPS機能を利用して位置情報を取得する機能の搭載を計画しており、「万が一、余震があった場合、誰がどこの現場で作業を行っているのかを把握することが可能となり、迅速な対応が可能となります」とコスモ・サイエンティフィック・システム モバイルFeliCa事業部 部長 新井誠氏は説明する。
コスモ・サイエンティフィック・システム 代表取締役社長 岡本能幸氏も1995年の阪神淡路大震災で自ら被災を経験しており、東日本大震災発生後も現地を訪れボランティア活動を行っている。
「例えば、手書きの管理の場合は、架空の人物を入れて請求することも考えられます。その点、ICカードを利用したシステムであれば、信頼感の高い客観的なデータを取得できます」(岡本氏)
KRAでは、11月4日から、勤怠ケータイのシステムを実際に稼働している。導入のテストから実稼働まで、わずか1週間程度で実現した。導入に向けては、ソニーがFeliCa Liteのカードを約200枚、無料で提供したという。室内の作業ではPCを利用したシステムを出退勤管理に利用しているが、屋外の環境などでは、Android搭載スマートフォンや携帯電話をリーダに使用するシステムを導入し、稼働がスタートしている。
「清掃部では、作業現場で直行直帰をするケースがありますが、これまでは日報で行っていた管理を勤怠ケータイで行うことになりました」(新井氏)
今回は、1日の最初の打刻は出勤、2回目の打刻は退勤とシンプルな設計にしてある。勤務者がICカードをかざすと「確認しました!」という音声アナウンスがなる仕組みとなっている。
従来2~3人の作業が1人で可能に
出退勤管理以外の活用も提案へ
出退勤管理の情報は、KRAのシステムの担当者が一覧して閲覧が可能となっている。従来、出退勤管理の情報は2~3人が手作業で集計していたが、1人で済むようになり、被災地の復興にスタッフをまわすことが可能となる。
コスモ・サイエンティフィック・システムでは、出退勤管理以外のシステムでも勤怠ケータイのシステムを応用していきたいとしている。
「例えば、気仙沼では、KRA同様に活動する復興のための団体がほかにもありますが、仮設住宅に訪問する時間がバッティングすることもあります。そうした情報を共有できれば、各団体の訪問などが効率よく行えるようになると思います」(岡本氏)
また、仮設住宅入居者にカードを配布し、入居する高齢者の健康管理を行ったり、福祉部が実施するイベントの出席履歴を閲覧することも考えられる。
同社では今後も勤怠ケータイやICカードシステムを活用し、被災地の復興支援に協力していきたいとしている。