2014年7月18日6:12
FeliCaカードの未来はTypeA/Bも1チップで実現
おサイフケータイはHCEソリューションを提供へ
ソニーとフェリカネットワークス(FN)は、2014年7月17日、18日の2日間、渋谷ヒカリエにおいて、非接触IC技術「FeliCa(フェリカ)」の最新技術・商品を紹介するイベント「FeliCa Connect2014」を開催している。7月17日の基調講演では、国内で社会インフラとして成長したFeliCaの現状や開発中の商品・サービスについて基調講演が行われた。
FeliCa対応サービスは社会インフラに
ボーダレス化への取り組みを強化
ソニーの「FeliCa」は、お年寄りから若い世代まで使える技術として定着した。主要交通IC乗車券と主要電子マネーの利用件数は、150億件以上あり、老若何女問わずすべての日本人が年間100回以上利用している計算となる。また、2013年の主要電子マネーの年間決済総額は3兆1,000億円となっている(ソニー/フェリカネットワークスの推計値)。さらに、FeliCa/NFC機能が搭載されたソニーの家電製品は150機種以上あり、今後も搭載機器は拡大する予定だ。
これまで、FeliCaは交通、決済、ID・会員証、クーポン、チケット、CE機器・家電などで利用されてきた。今後は、ヘルスケア、O2O、エンタテイメント、認証、自動車等の分野でユースケースを創出していきたいとしている。
また、ボーダレス化の対応として、海外から日本に訪れる外国人の数は急増することが予想されているが、「海外からお越しいただいた皆様が持ち込まれる端末でもFeliCaを活用したサービスが利用可能な環境を整備していきたい」とソニー 執行役 EVP イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター長 根本章二氏は意気込みを見せる。
さらに、1997年のOctopus Cards Limited(八達通/Octopus)を皮切りに、海外市場はアジアを中心に展開しているが、相互接続性・セキュリティ・品質などの強みを武器に積極的に市場開拓を進める方針だ。そのほか、海外要件に対応した新ソリューションの導入を進めていくという。
香港OctopusのFeliCaはSIM上で動作
NFC標準規格準拠のモバイルFeliCaチップを開発
FeliCa ICチップについては、モバイル機器に埋め込んだ利用に加え、SIMやmicro SDソリューションも開発した。例えば香港では、2013年秋から、Gemalto製のSIMカードを活用したチケットシステムをOctopusが、キャリアのPCCW-HKTと協力して実験を行ってきたが、4月から商用サービスがローンチされた。
また、モバイルFeliCa ICチップについては、世界で初めて、NFC標準規格に準拠した日本および世界で利用できるモバイル機器向けのFeliCaチップを開発。AESの暗号方式に対応しており、2014年夏からSamsung Electronics、東芝、ソニーから出荷される予定だ。
FeliCa、接触、TypeA/B準拠の多機能カードを開発
複数のカードを格納できる「インタラクティブ・FeliCaカード」
カードに関しては、「グローバルに使えるFeliCaをコンセプトに開発を進めている」とソニー プロフェッショナル・ソリューション事業本部 FeliCa事業部 事業部長 坂本和之氏は説明する。具体的にはFeliCa、EMV準拠の接触および非接触(ISO/IEC 14443 TypeA/B)機能を一体化したチップの開発を2015年に向け開発を進めている。「技術的にはTypeAのインターフェースを使ってFeliCaを動かすことが可能」(坂本氏)となる。つまり、WAONやnanacoといったFeliCaベースの決済、Visa payWave、MasterCard PayPass、J/SpeedyのTypeA/B決済を1チップで提供できる。
デバイスとしては、ウェアラブルの開発を行っている。課題としては、バッテリー消費等が挙げられるが、2015年の導入に向け準備を進めている。FeliCa Connectでは、コンセプトモデルとして、複数のカードを1枚に集約できる「インタラクティブ・FeliCaカード」を展示。カード2倍ほどの厚さの中に、FeliCaチップ、薄型の2次電池・非接触給電、1.4型のカラー液晶などで構成されており、Bluetoothでスマートフォンに接続できる。また、スマートフォン側で、カードのバリューチャージや利用履歴確認などが行える。
10周年を迎えた「モバイルFeliCa」(おサイフケータイ)
クラウド活用に力を入れる
モバイルFeliCa(おサイフケータイ)は、2014年7月10日にサービスインから10周年を迎えた。おサイフケータイ対応のサービス数は累計100以上となり、1,000万人が日常的に利用しているそうだ。同社では、ユーザーへのコミュニケーションの確保として、さまざまなデバイスにシームレスに対応していきたいとしている。また、新たなコミュニケーションメディアとシームレスに融合させ、オンライン・オフライン問わず、サービス事業者とのタッチポイントを提供していく方針だ。さらに、ユーザーの利便性を意識した、安全な認証方式の提供を目指す。例えば、現状、ワンタイムパスワードトークンを利用している二要素認証をユーザーがすでに保有するFeliCa対応デバイスにより、便利に実現可能だ。
フェリカネットワークス 代表取締役社長 眞鍋マリオ氏は、「クラウドを含めたハイブリッドな形で、既存のプラットフォームを使いながら、如何に今のサービス範囲を広げ、ユーザーを増やしていくかが大きな課題」であると話す。同社では、おサイフケータイを構築するために必要な機能をクラウド側に実装するHCE(Host Card Emulation)を活用した会員証、クーポン、ポイントといったCRMサービスを2014年度中にローンチする予定となっている。