2017年4月6日8:00
学内のみならず地域における快適・便利な生活をサポート
県立広島大学は、ICカード化を機に、職員証・学生証に地域電子マネー「HIROCA(ヒロカ)」の機能を搭載する。同学は広島県内に3キャンパスを擁するが、「HIROCA」では複数の電子マネーが利用できることから、使える範囲が広く、福利厚生の充実が期待できる。「HIROCA」の発行元である広島銀行との協力関係を基盤に、今後も継続して機能の追加などを検討しつつ、職員や学生の生活支援に力を入れていく意向だ。
職員証のICカード化を先行して開始
コストを抑え、導入・運用が可能に
広島県内の広島市、庄原市、三原市の3カ所にキャンパスを構える県立広島大学では、職員証および学生証に、電子マネー「HIROCA」の機能を搭載。すでに約130名の事務職員については職員証の切り替えを終えており、2017年4月から大学1年生から4年生まで約2,600名の学生全員に、「HIROCA」機能等が搭載されたICカード学生証が交付される。
「HIROCA」は、2015年11月25日から約3カ月間、広島県の取り組みとして運用されていた電子マネー方式プレミアム付き商品券を、この事業者でもあった広島銀行が地域電子マネーとして生まれ変わらせ、2016年4月11日から新たに運用を始めたものだ。
県立広島大学の以前の職員証・学生証は、紙製のものだった。職員の出退勤の時刻や、学生の出欠状況は、手作業で管理していたため、集計に時間や手間がかかることに加え、ミスが生じても確認することができなかった。特に職員の残業時間を正確に把握することが急務となっており、これを解決する手段として職員証のICカード化を決めたのだという。
学生の出欠情報も、これまでは教員が一定期間まとめて集計・管理していた。これをICカードによってリアルタイムに把握できるようになれば、急に欠席しがちになった学生を、タイムリーにケアすることができるようになる。同学のモットーは一人ひとりを手厚くフォローする少人数教育であり、ICカード化はその一助になり得るのだ。
「ICカード化を具体的に検討していた折り、広島銀行さんから『HIROCA』の活用についての提案をいただきました。まずは先行して職員証を導入し、その後教学システムの切り替え時期にあわせて学生証のICカード化を図ることにしました。このタイミングであれば、ほかの機能も付加し、福利厚生や学修支援にも結び付けられると考えたのです」(公立大学法人 県立広島大学 理事 事務局長 栗栖恭三氏)
「HIROCA」はキャッシュカードに付帯して電子マネーが発行される仕組みになっている。同学の職員は、給振口座として全員が広島銀行に普通口座を持っているため、追加の手続きが不要。このことも、導入の大きな決め手となった。
カードの発行は広島銀行が担当。ICカードで出退勤管理をするためのアプリは同学の教員が開発した。したがって、職員証切り替えの際に同学が支出したのは、出退勤の際に職員がカード情報を読み込ませるためのデバイス十数台の購入費用、数十万円のみと、スリムなコストでのスタートが実現できた。
地域店舗との連携で学生生活の向上に寄与
庄原市街地のにぎわい創出に活用
「HIROCA」の利用範囲は幅広く、職員や学生の生活支援という側面で価値が高い。さらにこれに加え、学生証を提示した学生に、割引やプレゼントを提供する加盟店を募る。
「例えば、ケーキセット100円引き、コーヒー無料といった具合です。本学は、規模が大きくない上に、キャンパスが3カ所に分かれているため、大学生協を持っていません。『HIROCA』は、それに代わる機能を提供してくれています。まるで市内が丸ごとキャンパスになっているような感覚です」(栗栖氏)
すでに庄原市、広島銀行とともに、2016年12月9日、県立広島大学学生証を活用して庄原市街地のにぎわい創出に協力するという取り組みについて基本合意している。
学内では、飲料の自動販売機で「QUICPay」の機能が使えるほか、「4月からは広島銀行が提供するリーダとレジスターを連動させる方法で、各キャンパスの売店でも利用が可能になる予定です」と、同大学 本部教学課 総括教学課長 千崎道生氏は説明する。
広島銀行では、交通系電子マネー「<ひろぎん>PASPY(パスピー)」を発行しており、2016年からこれに「HIROCA」の機能を搭載している。現在、県立広島大学の職員証・学生証に「PASPY」の機能は搭載されていないが、将来的にはぜひこれを追加したい考え。交通機関も利用できるようになれば、学生証1枚で、大学に来て、食事も買い物もできる環境が整い、格段に利便性を高めることができるからだ。また、セキュリティ強化などの面で、広島銀行が研究を進めている顔認証の技術にも期待を寄せている。