2011年10月25日10:00
トリプルメディア時代のWebマーケティング
Webサイトの役割の明確化が有効な施策設計の第一歩に
近年、企業と生活者をつなぐコミュニケーション・メディアが多様化する中で、多くの企業が自社に適したメディア活用のあり方を模索している。特に自社のWebサイトをどのように位置付け、他のメディアとどのように連携させるかに苦慮する企業は多いようだ。 今回の特集ではトリプルメディア時代にふさわしいWebマーケティングのあり方を探った。
古くて新しい“トリプルメディア”
Webサイトはマーケティング装置として他のメディアにはない多くの特性を有しており、今後もその有効活用がマーケティングの成否を大きく左右することは間違いない。成功への第一歩は「誰に何を伝えたいのか」を明らかにし、それに基づいた施策設計を行うことにあると言えるだろう。
マーケティングの世界で「PC画面」「モバイル画面」「大型デジタルテレビ画面」を指す“トリプルスクリーン”とともに、“トリプルメディア”というワードが話題になり始めたのはいつごろのことだっただろうか。少なくとも2010年2月、(社)日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が、2010年のWebマーケティング戦略として「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」との宣言を発表した段階では、それほど一般的なワードではなかったように思われる。しかしその後、マーケティング担当者において急速に普及が進み、今ではマーケティング用語としてすっかり定着した感がある。
トリプルメディアは言うまでもなく、自社で管理・運営するWebサイトやメールマガジンなどの自社所有メディアを指す「オウンドメディア(owned media)」、企業が広告費を支払って広告を掲載する「ペイドメディア(paid media)」、SNSやTwitter、Facebookなど、信用や評判を得ることを目的に活用する「アーンドメディア(earned media)」の3つのメディアを意味する(図表参照)。昨今、多くの企業がマーケティング・コミュニケーションにおいて、これらをどのように組み合わせていくべきかを模索しているのが現状だ。
しかし、今回の特集でインタビューにご協力いただいた(株)ビービット・広報宣伝部長の渡辺春樹氏が「販売店、カタログなどによる営業、販促の分野がオウンドメディア、新聞広告、テレビCM、折り込みチラシなどの宣伝の領域がペイドメディア、そしてアーンドメディアは、従来のパブリシティの分野に相当すると考えればわかりやすいと思います」と指摘するように、複数のメディアを効果的に組み合わせてマーケティング・コミュニケーションの最適化を図るという考え方は旧来からあるものだ。トリプルメディアという概念は、それがWebマーケティングの本格化に伴って進化したものであると言えるだろう。
ともあれ、コミュニケーション・メディアの多様化に伴って、自社に適したメディア活用のあり方を模索する企業は増加しており、特に自社Webサイトをどのように位置付け、他のメディアとどのように連携させるかについては、なかなか正解を見出せない企業が多いようだ。そこで、今回の特集では、自社Webサイトの有効活用に積極的に取り組んでいる企業のケーススタディを中心に、トリプルメディア時代にふさわしいWebマーケティングのあり方を探った。