2022年7月1日8:20
TISは、2022年6月29日に記者説明会を開催し、バーチャル店舗内で注文から決済まで完結できる小売業向けSaaS「XR Pay」の提供を開始すると発表した。バーチャルショップに決済機能を組み込み、購買における深い没入感とスムーズな決済体験を実現するという。
デジタル技術としてXRへ着目
リッチな体験と決済による体験型重視のサービス
TISでは、2026年に向けて人材の先鋭化・多様化を目指している。多様な社員がプロフェッショナルとして活躍し、SDGsをはじめとした社会課題を、デジタル技術を駆使して解決につなげていきたいとした。TISは、中期経営計画において、革新を遂げるデジタル技術としてXR(X Reality)へ着目し、2017年から中長期的な研究を進めている。観光、工事現場、建設業界などへの展開に加えて、2020年から同社が得意とする決済領域での「XR Pay」への取り組みをスタートした。
XR技術の動向として、米・IDCは5月26日に、世界の2021年のAR/VR支出額と、2026年までの成長率を発表したが、世界における2021年のAR・VRに対する支出額は146億7,000万ドル (約1兆8,000億円)に上る。また、2022~2026年の5年間では、747億3000万ドル(約9兆 4000億円)に増加すると予測している。
VRは「啓発期」へ差し掛かかっており、さまざまなユースケースが登場している。一方で、没入体験は「幻滅期」に入っているという。確立したビジネスが登場する前の「乱立期」であり、いよいよ市場が形成されていく時期に入った。TISでは、NFTに関して、作品の権利や盗用などの課題もあるため、市場動向を注視している段階だという。
EC市場を消費者視点で見ると、現在のオンライン取引はコロナ禍で活性化しているが、2Dとテキストで表され、そこに情緒的な体験要素は少なく、感覚的に得る情報も意思決定するには不十分だとした。その課題解決に向けてARが活用されているが、継続的な利用にはつながっていないケースも多い。また、現状のECでは、ブランディングやストーリーテリングの限界があるとした。XR Payは、XR特性のリッチな体験と決済による体験型重視のサービスとして、単純なARにはない新たな体験価値が、コアな顧客獲得に寄与すると仮定した。
バーチャルショップは年々消費者に求められている傾向が強まっている。オンラインの購買ではパーソナライズ化を求める要望もある。適切な情報を伝える企業に対しては、追加料金を出すなど好意的な声もある。
TISでは、XR技術や実感を持てるような3D空間は、消費者に魅力的な体験を与えつつ、 その意思決定にも影響を及ぼすことができると考えている。まずは店舗を空間的に提供し、研究を進めることで仮想体験でエンターテイメント性を持たせたり、追実体験型として過去体験したことを再度体験できたり、五感によるリラクゼーションなどに進化できるとした。
メタバースをはじめ、仮想上の体験に興味を抱く人は増えているが、「展示だけでは集客力に乏しい」「空間のみの提供になる」「デバイス、通信環境に依存」などの課題がある。これまでの没入体験での決済では、最終的にECサイトの決済ページに遷移して行うことが多く、「せっかくの没入感が途切れてしまっています」とTIS 金融事業本部 カード第2事業部 カードシステム第2営業部 主査 松下江美子氏は指摘する。体験的に分断されるとかご落ちなどの機会損失が発生していた。そこで、XR Payでは、バーチャル空間内で購入まで行えるよう意識して、決済機能を組み込んだ。
既存の店舗、またはECにおけるビジネス課題に対しても XR Payの活用で多くの改善が期待できるとした。EC店舗では、ロケーションに囚われない新規顧客獲得が可能だが、地方活性化や観光PRなどに対応できる。また、高齢者や障がい者、海外観光客等へのインクルーシブな対応も可能だ。ECについては、店舗とECの棲み分けを考慮した営業戦略を検討できる。
「Matterport」でのバーチャルショップ空間制作
決済を含めたEC構築の各種機能提供へ
XR Payでは、決済まで組み込まれた体験型店舗が、オンライン上で構築可能だ。AR(Matterport)、ライブコマース、VRも含めて提供し、より深い没入感と決済までのスムーズなUI(ユーザーインターフェース)で、シームレスな購買体験を目指している。まずは、 360度カメラで空間を3Dスキャンする、米Matterport社の「Matterport」によるバーチャルショップ用の空間制作と、商品管理、売上から注文、発注管理など、オンラインショップ運営に関わる各種機能を提供する。店舗、ブランドの世界観や、イベントの空間をその場にいるように構築した。XR技術で実際の店舗の雰囲気を模した没入感とリッチな商品情報に加え、偶然商品に出会うワクワク感までを取り込んだ購買体験を提供する。TIS 金融事業本部 カード第2事業部 カードシステム第3部 エキスパート 中山宏一氏は「XR Payでは、決済機能を空間内に組み込むことで、没入体験を途切れさせず買い物を完了できます」と説明する。
例えば、観光施設・リゾートでは、現地の雰囲気を体験してもらうためのサービスとして、XR Payの活用が見込めると考えている。また、美術館や博物館・工場見学では、見学に加え、購買への導線につなげ、館内を閲覧しながら購買につなげるために活用できるとした。インテリア・ショールーム、エンタメ・コンテンツ事業での活用も見据えている。
XR Payのスコープや市場売上の目標は?
ECプラットフォーマーに必要な機能群をSDKで提供
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