2025年3月26日8:00
阪急阪神ホールディングスでは、2021年よりグループ共通ID「HH cross ID」を導入し、それまでグループ各社がそれぞれ独自に発行していたIDの統合を進めている。現状のアカウント数は約100万で、統合が終了すると数百万規模になる見込みだ。2024年7月には、「HH cross ID」とクレジットカードや銀行口座を紐づけて決済を行える「HH cross PAY」の提供を開始。交通、不動産、エンタテインメントなど幅広い事業を展開する同社の最終的な狙いは、「HH cross ID」によってお客様のサービス利用状況を横断的に把握し、それに基づくOne to Oneマーケティングを展開して顧客ロイヤリティの向上を図ることにある。

現時点で25サービス、100万のIDを統合
One to Oneマーケティングの展開を標榜
交通、不動産、エンタテインメントなど幅広い事業を展開する阪急阪神ホールディングスでは、2021年に「HH cross ID」を導入し、これまでグループ各社がそれぞれ独自に発行していたIDの統合を進めている。「HH cross ID」の現時点でのアカウント数は約100万。統合が終了すれば数百万規模のアカウントが獲得できる見込みだ。
「HH cross ID」導入の最終的な目的は、顧客のグループ内のサービス利用状況を一元的に管理して、これに基づくOne to Oneマーケティングを展開すること。同社グループでは、子どもの見守りから、通学や通勤に利用する交通機関、商業施設、ウェディング、住宅、旅行やホテル、観劇やスポーツ観戦、葬祭サービスと、まさに「ゆりかごから墓場まで」のサービスを提供しているが、「これまでは逐一『はじめまして』になっていた。それを『いつもご利用ありがとうございます』の関係に変えて、IDを軸として蓄積される情報をもとに、それぞれのお客様に合ったアプローチをしていく」(阪急阪神ホールディングス グループ開発室 DXプロジェクト推進部 箱﨑勇人氏)ことが狙いだ。
同社グループは鉄道をはじめ、宝塚歌劇、甲子園球場、ビルボードライブといったリアルの体験を提供する施設を数多く運営している。それらがコロナ禍で大きな打撃を受けたことが、「確実に収益を上げるためにはまずお客様を知る必要がある。そのためにID統合が急務だという認識に至るきっかけの1つになりました」と箱﨑氏は振り返る。
「HH cross ID」は、宝塚歌劇Webチケットサービス、ビルボードライブ、見守りサービス「登下校ミマモルメ」、京阪神エリアの駅、ホテル、商業施設などで使える「HH cross Wi-Fi」など合わせて20を超えるサービスに導入済み。今後も随時拡大していく。
2024年7月には、「HH cross ID」とクレジットカードや銀行口座を紐づけて決済を行える「HH cross PAY」の提供を開始した。ビルボードライブと宝塚歌劇の配信サブスクリプションサービス「タカラヅカスクエア」から利用を開始しており、今後は決済が発生するすべてのサービスに導入していく予定だ。
「STACIAカード」「Sポイント」と連携し
グループ各社の業績アップに貢献
「HH cross ID」を導入したことで、ID認証にかかわるシステムが1つに集約され、管理・運用コストのスリム化が実現した。また、セキュリティに関しても、グループとして統一したセキュリティポリシーにしたがった運用を行うことで、レベルの高いサービスを安定して提供することが可能になった。
One to Oneマーケティングについては、「たとえば大阪在住のお客様が東京の宝塚劇場の公演を予約した場合に、近隣の系列ホテルを案内するといった取り組みが可能になる」(箱﨑氏)。既存の顧客が「HH cross ID」を取得するにはIDの移行手続きが必要だが、一度手続きを済ませれば1つのIDで複数のサービスを利用できるようになり、利便性を実感してもらえると同社は見ている。
現在の「HH cross ID」の利用者は宝塚歌劇のファン層の比率が高いため、居住地域は関西に限らず首都圏にも広がっている。「HH cross PAY」での決済はクレジットカードによるものが大半で、紐づけられているカードの種類はさまざまだ。今後既存の顧客ID統合が進むにつれ、関西圏在住の利用者の割合が増え、「HH cross PAY」に紐づけて使われるクレジットカードの種類も、同社グループのハウスカードである「STACIAカード」の比率が高まっていくものと見られる。
同社では「HH cross PAY」に「STACIAカード」を登録した場合、最初の利用の際に同社グループの共通ポイント「Sポイント」を200ポイントプレゼントする企画を実施中だ。今後は「STACIAカード」や「Sポイント」との連携をさらに強めて、関西圏に集中している同社グループの商業施設の売上アップにも貢献していきたいと考えている。
「決済・金融・流通サービスの強化書2025」より