2011年10月3日8:00
スマートフォン決済を加速するAmexの戦略
☆☆☆ Serveをベースに顧客利便性を追求 ☆☆☆
The Road to Smartphone Payment
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
Amexのスマートフォン決済にかける情熱はすさまじい。生残りの鍵はスマートフォン決済だ、といわんばかりの勢いである。2011年に入ってから、連射砲のように新企画を撃ちつづけている。
3月10日、foursquare(フォースクエア)と位置情報特典サービスの実証実験開始。
3月28日、次世代電子決済プラットフォーム「Serve(サーブ)」を発表。
4月12日、モバイル決済事業者Payfone(ペイフォン)に出資。
6月12日、AOLのローカルコミュニティサイト「Patch(パッチ)」と提携。
6月23日、foursquareの位置情報特典サービスを全米に拡大。
7月18日、携帯キャリアのSprint(スプリント)と提携。
7月19日、Facebookでリウォーズサービス「Link, Like, Love」開始。
7月19日、Facebookで中小加盟店向けサービス「GoSocial」開始。
8月1日、携帯キャリアのVerizon(ベライゾン)と提携。
一見しただけでは、これらすべてがスマートフォン決済に関するものである、ということはわからない。しかし、次世代電子決済プラットフォームのServeを中心において読み解けば、なるほどすべてが連関していることがわかる。
Payfone出資、SprintやVerizonとの提携、そしてFacebookの「Link, Like, Love」は、スマートフォン利用者に向けたサービスの拡充だ。
いっぽう、foursquareやPatchとの提携、そしてFacebookの「GoSocial」はスマートフォン決済ができる加盟店ネットワークの整備が目的である。
取扱高はまだほとんどない。インフラも十分整備されていない。そんなスマートフォン決済分野に、なぜAmexはこれほどまで闘志をたぎらせているのだろうか。
●金融危機の打開策は手数料収入拡大
チャンスは思わぬところからやってくる。そこに明確なビジョンとアクションがあれば。
2008年のリーマンショックでAmexは大きな痛手を受けた。債券市場や証券市場が機能不全におちいり、資金調達がむずかしくなった。公的資金の注入も検討したほどである。
その際打ちだしたのが、金利収入モデルを凍結し、手数料収入の拡大に注力することだった。一括払いのチャージカードとリボルビング払いのクレジットカードの両方を発行するAmexは、クレジットカードのブレーキを踏み、チャージカードのアクセルを踏込んだ。
「チャンス(運任せのカード返済)をとらず、チャージ(一括払い)をとろう(Don’t Take Chances, Take Charge!)」というキャッチフレーズは、2009年秋に打ちだしたキャンペーンテーマ。Amexの戦略を端的に表現している。
金融危機下で瀕死の財政状況にあったAmex。普通はリストラ一辺倒になる。日本の金融機関もそうだった。しかし、Amexはリストラに加え、手数料収入を拡大するマーケティングやニューペイメント分野への積極投資を忘れなかった。