2026年10月7日8:05(JST)
和田 文明
|
プロフィール キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材 |
AIコマースとオンラインペイメント (第1部)の4回目は、北米、ヨーロッパ、アジアの3つの地域のAIコマースの展開状況について概説してみたい。
AIコマースとオンラインペイメント 第1部(9月~10月)
|
Index(目次) 1、AIコマースのキーワード 2、AIコマースとは? 3、AIエージェンティックコマース(AI Agentic Commerce) とは?4、地域的AIコマースの展開状況について 5、AIコマース(AI Commerce)とペイメント(決済)の融合について |
AIコマースとオンラインペイメント 第2部(11月~12月)
|
Index(目次) 1、AIコマースとVisa 2、AIコマースとMastercard 3、VisaとMastercardのAIコマース戦略の比較 4、AIコマースとStripe 5、AIコマースにおけるデジタル財布の機能と役割 |
AIコマースおよびその進化形であるエージェンティックコマースの(Agentic Commerce)市場は、2026年現在、世界規模で拡大・成長を遂げている。マッキンゼーなどの試算では、2030年までにエージェンティックコマースの(Agentic Commerce)市場は世界全体で3兆〜5兆ドル規模の経済圏になると予測されている。しかし、その展開状況や進化の方向性は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地域で市場特性や規制などのお国柄を反映して大きく異なっている。先ず、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各地域の展開状況と特徴を(表)で比較してみたい。
(表)地域別のAIコマース展開状況:比較表
|
比較項目 |
アメリカ |
ヨーロッパ(欧州) |
アジア |
|
市場シェア / 成長率 |
・世界シェアトップ(約38%) ・テクノロジーのイノベーションの中心地である |
・世界シェア第2位 (約27.5%) ・堅実なエンタープライズ導入 |
・世界最速の成長率(CAGR 約33.6%) ・巨大なモバイルEC人口が急速な成長を牽引 |
|
主な進化の方向性 |
・インフラ・プロトコルの標準化 ・AI(人工知能)にデジタル財布を持たせる金融技術 |
・規制(データプライバシー)準拠 ・透明性と消費者の権利保護を前提としたAI |
・スーパーアプリ・実店舗・SNSの融合 ・対話型・ライブ・オムニチャネル |
|
主導する主なプレイヤー |
・Visa ・Mastercard ・Stripe ・OpenAI ・Google ・Microsoft、など |
・欧州大手小売 ・決済事業者(Adyenなど)、など
|
・Alibaba ・Tencent ・Grab ・NEC ・TOUCH TO GO、など
|
|
最大の特徴 |
・Universal Commerce Protocol (UCP)などの規格化が進み、AIエージェントによる自動購入(M2M)の実験場となっている |
・GDPR(欧州一般データ保護規則)やAI法(AI Act)への完全準拠が最優先 ・データ品質(構造化データ)の作り込みが精緻
|
・チャットで話して買う(会話型)文化が定着 ・中国やシンガポールでは実店舗のAI化(顔認証・自律型無人決済)が先行
|
北米(アメリカ・カナダ)
北米(アメリカ・カナダ)におけるAI(人工知能)を活用した商業・小売AIコマースは、これまでの単なる実験や小規模な導入(パイロット)のフェーズをすでに終え、ビジネスのインフラとして本格実行・スケール化するフェーズに突入しているといわれている。北米(アメリカ・カナダ)は世界で最もAI投資が進んでいる地域であり、世界のAI小売市場の約4割を北米が占めているといわれている。
- 北米の消費者向け:会話型から「エージェント型(自律型)」への劇的進化
これまで主流だったおすすめ商品を提案するAI(人工知能)や一問一答のチャットボットは、より自律的に動くエージェンティックコマースの(Agentic Commerce)へと進化しているといわれている。
・検索からAI(人工知能)との対話へのシフト アメリカの消費者の間で、商品を探す際に従来のGoogle検索など検索エンジンを使う時間が減り、GeminiやChatGPTといった大規模言語モデル(LLM)と対話しながら探す時間が急速に増加しているとされている。ユーザーはAI(人工知能)に対して、自分の好みや具体的なシチュエーションを詳しく伝えるようになってきているといわれている。
・決済まで自動化する共通プロトコルの登場
2025年後半から2026年にかけて、テクノロジー大手によってAI(人工知能)が人間の代わりに決済まで完了できる仕組みを本格化させている
|
Universal Commerce Protocol (UCP) |
・Google のGeminiなどのAI(人工知能)が、リテール企業のサイトと直接連携し、ユーザーの指示だけでネイティブ決済まで行える標準規格を整備 |
|
OpenAI × Stripe Agentic Commerce Protocol (ACP) |
・ChatGPTの画面から離れることなく瞬時にシチュエーションに応じた買い物が完結するInstant Checkoutを展開 ・定期的に購入する日用品や消耗品については、人間が介在せず、AIエージェント同士が自律的に在庫をチェックして自動発注・決済するマシーン・ツー・マシーン(M2M)のコマースもすでに始っているといわれている |
・パーソナライズとバーチャル試着の日常化
GoogleのAIモードなどによるバーチャル試着(Virtual Try-On)が定着し、あらゆる体型や肌のトーンのモデルに服を瞬時に着せ替え、サイズ感や質感を確かめてから買うことで、北米ECの最大の課題であるサイズ違いによる返品を大幅に減らしているといわれている
- 北米の企業・サプライチェーン向け:予測と効率化による「コスト削減」
アメリカやカナダの小売企業は、インフレや運賃の変動に対抗するため、AI(人工知能)をバックヤードの効率化に向けて総動員している。
|
プレディクティブ(予測型)サプライチェーンの標準化 ・売れてから補充するのではなく、AI(人工知能)が気象データ、地域のイベント、SNSのトレンド、さらには競合の動向までを分析し、どこで・何が・どれくらい売れるかを先読みするシステムが大規模に普及している ・ECリーダーの7割以上が、AI(人工知能)を今後の最重要の原動力と位置づけている ・これにより、物流コストが10〜20%削減され、在庫切れが約50%減少しているといわれている |
|
リアルの店舗(Merchant)とデジタルの融合とオムニ不正対策 ・実店舗(Merchant)でのセルフレジでの万引きや、オンラインでの返品・決済詐欺(これらを総称してオムニ不正=Omni-fraudと呼ぶ)がアメリカで深刻化している ・これに対し、店舗(Merchant)ではコンピュータービジョン(画像認識AI)を導入したセルフレジや、例外行動を自動検出するAI(人工知能)を配置し、従業員の安全を守りつつ損失を防ぐ対策が急ピッチで進んでいるといわれている |
|
マーケティングの内製(インハウス)化 ・生成AIを使って広告クリエイティブ、バナー、商品説明文などを大量かつ瞬時に作成できるようになったため、アメリカの小売企業の約4分の3が外部の広告代理店への依存を減らし、AI(人工知能)を使って自社内でマーケティングを高速で回す方向へ舵を切っているといわれている |
- 北米市場における現在の壁と課題
急速に普及する一方で、次のような北米特有の課題も浮き彫りになっている。
|
・大手企業(Scaled)と中小企業(Small)の格差 売上高が数十億ドルを超えるウォルマートやAmazon、Shopifyなどの巨大PF(プラットフォーム)を活用する大企業は、AI(人工知能)を組織全体にスケールさせて大きな恩恵(売上5〜15%増、顧客生涯価値の30%向上など)を得ている ・中小企業はAIツールの導入に留まり、予算や技術的負債(古いシステム)が足枷となり、AI(人工知能)の真の恩恵を受けきれていない「二極化」が起きている |
|
・信頼(Trust)とデータの透明性 特にアメリカでは、高齢の世代(ベビーブーマーなど)を中心にAIのレコメンドを信用しない、個人情報をAI(人工知能)に渡したくないといった根強い懐疑論がある ・そのため、企業にはなぜこの商品を提案したのかを説明できる、透明で人間中心(Human-centered)のAIデザインが強く求められている |
北米(アメリカ、カナダ)のAIコマースは、単にチャットで買い物が便利になるというレベルを超え、AIエージェントが人間の代わりに探して買い、バックヤードではAI(人工知能)が需要を予測して自動で物流を動かすという、商業全体の構造改革(構造的トランスフォーメーション)段階を迎えているとされている。
ヨーロッパ(ドイツ、フランス、イギリスなど)
このコンテンツは会員限定(有料)となっております。
詳細はこちらのページからご覧下さい。
すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。















