2015年4月8日8:40ドコモのフィンテック展開 「世界初」 ドコモ口座Visaプリペイドアプリの真価とは?
先日、NTTドコモがドコモ口座Visaプリペイド専用アプリ(以下Visaプリペイドアプリ)をリリースしました。
ドコモ口座は簡単にいうと、オンライン上で使えるお財布のようなものです。
コンビニなどでお金を入金し、携帯電話番号を使った個人間送金やネットショッピングができます。
ドコモ口座Visaプリペイドはドコモ口座のネットショッピング機能の一部で、
「オンライン上で使えるバーチャルカード」としての特性を持ち、従来からあるプラスチック型カードの決済機能を仮想化して、スマートフォンに最適化したサービスです。
まさに、いま話題の「FinTech(フィンテック)」分野のサービスであるといえます。
フィンテックとは金融とITの融合を意味する言葉です。送金や決済、資産管理(PFM)などのカテゴリで生まれるITを活用した金融サービスは枚挙に暇がありません。
今回新しくリリースされたのは、ドコモ口座専用アプリではなく、ドコモ口座Visaプリペイド専用アプリです。
一見、単なるスマホアプリですが、
「口座開設からVisaプリペイドカードの発行までの操作が直感的になり、画面遷移も約3割減らした。利用明細の確認やカード利用停止など、カード管理の操作性にも改良を加えている」と説明されています。
■なぜ「ドコモ口座スマホサイト」だけではダメだったのか?
ドコモ口座のサービスを使ってもらうだけなら、特段アプリを出す必要はなかったはずです。では、なぜドコモはVisaプリペイド機能特化型のアプリにこだわったのでしょうか?
答えを紐解くためにこれまでのドコモ口座Visaプリペイドの主要提供チャネルを整理してみます。
スマホ専用サイトでの提供、つまりiPhoneであればSafariなどでドコモ口座サイトにアクセスする場合、ユーザーはブックマークなどからドコモ口座サイトを選択する必要があります。
ドコモ口座専用のショートカットアプリはAndroid限定で提供されていますが、従来はスマホを起動した直後に「ドコモ口座Visaプリペイド」を利用するチャネルはありませんでした。
そこで、ドコモは以下のような提供チャネル刷新をはかりました。
彼らはドコモ口座のあらゆる機能のなかで、Visaプリペイド機能をあえて切り出す形でスマートフォンアプリにしました。
このチャネル刷新は、細かいですが非常に重要な工夫であるといえます。
フィンテックと定義される海外の最新決済サービスに目を向けると、SquareやApple Pay<passbook>、Google Wallet、PayPalなど、ほぼ例外なく、スマホ専用アプリベースのサービス提供が主流です。また、決済サービスを「総合ウォレット」としてアプリ化するのではなく、機能を切り出してアプリ化するケースが増えてきています。
Square創始者のジャック・ドーシー氏も語るように、特に決済はコミュニケーションで、
スピードと直感性が求められます。便利だからといってあれこれ機能を詰め込みすぎると、ユーザーエクスぺリエンスは低下し、敬遠されることになります。
そうした傾向を踏まえてか、ドコモもVisaプリペイド機能をあえて切り出す形でスマートフォンアプリを構築しました。
■ネット決済における導線に融合するユーザーインターフェース
Visaプリペイドアプリが起動されるのは、ユーザーがスマートフォンでネットショッピングやゲーム課金をする瞬間、あるいはその前が多いと推測されます。
ユーザーの目的は物やアイテムを手に入れることにあり、支払いは単なる手間な作業です。
いかに素早く、簡単に決済を終える事ができるかが大切になってきます。
恐らくドコモは、こうしたユーザーが実際にネット決済するシーンを細かく分析し、その導線に融合するような直感性とスピードをVisaプリペイドアプリで実現しました。
具体的には、
A.支払いができるかを確認する(残高照会)
B.支払いに必要な情報を取得する(カード番号コピー)
C.支払いの準備をする(入金、後払い設定)
D.セキュリティを管理する(カード一時停止、カード番号変更)
上記4種類、計6つの利用シーンを主にアプリで刷新しました。
では実際にどれだけ簡単に使えるようになったのか、検証をしてみましょう。
■あらゆる利用シーンが数秒で完結
検証に使ったのは、ドコモのiPhone6 64GBモデル。
iOS版のドコモ口座Visaプリペイドアプリをインストールし、LTE通信環境下で試してみました。(筆者はすでにドコモ口座を開設済みで、定額パックプランでVisaプリペイドを使っているため、口座開設のフローは割愛します)
アプリを起動した直後にネットワーク暗証番号入力画面が表示されます。
ドコモが提供するアプリでは珍しく(初?)、アプリ画面に表示されたテンキーでネットワーク暗証番号を直接タップして入力できるようになっています。ドコモ口座スマホサイトのように、番号入力欄をタップし、スマホの数字入力画面を立ち上げる手間がありません。
4桁の番号を素早くパパっと入力してログインをタップすると、すぐにホーム画面が表示されました(カード保有の場合)。1日の初回ログイン時はキャンペーン画面が表示されますが、「今日は表示しない」にチェックをつけると、2回目からはすぐにホーム画面がでます。ドコモ口座残高は、アプリ画面上部に表示されています。
ホーム画面からカード番号コピーのアイコンをタップすると、すぐにカード番号がコピーされました。ドコモ口座スマホサイトではカード番号入力欄をタップし、表示されている数字を自分で範囲指定をしてコピーをする必要がありましたが、ワンタップで非常に素早くコピーできるようになり、そのままECサイトのカード番号入力欄に貼付けることができるようになっています。
続いて、ログイン後にホーム画面から利用可能になるメニューについて。
ホーム画面の入金アイコンをタップし、入金方法でコンビニエンスストアを選択後、アプリ画面に表示されたテンキーで入金額を2,000円として入力。「利用規約に同意して入金額を確定」ボタンをタップすると、支払い先のコンビニ選択画面が出ます。先頭に表示されているセブンイレブンで支払いをする場合は、「お支払い情報を表示する」をタップ後、遷移先サイトで表示される「インターネットショッピング払込票を表示する」をタップすると、上記一番右の画面が表示される形です。
あとはセブンイレブンへ向かい、店頭レジでバーコードをスキャンしてもらったうえで、2,000円を支払えばドコモ口座への入金が完了。払込情報を表示するまで、ストレスなく、サクサクと進んでいきました。
ホーム画面の「後払い設定」をタップすると、後払い設定画面が表示され、変更>確定とタップすれば後払い設定がONになりました。手持ちがない場合やコンビニへチャージに行くのが面倒な場合、8秒で終わる本設定をするだけで、月額最大2万円まで、翌月のケータイ料金と一緒に支払う形でVisaプリペイド決済ができるようです。(設定をONにした上で、「後払い利用可能額」アイコンを確認し、後払いが利用可能であることを事前に確認する必要があります)
ホーム画面の利用中と表示されているバーの右端をタップすると、すぐにカード番号の利用を一時停止することができました。カード利用に少し不安がある場合などに、かんたんに止めておけるのは安心です。カードの利用を再開する場合は、一時停止状態でバーの左端をタップします。
ホーム画面のカード番号変更アイコンをタップし、確認画面で確定をタップすれば、すぐにレギュラーカードのカード番号が変更されました(ワンタイムカードは変更不可)。カード番号を変更すると、カード有効期限も自動的に変更されるようです。
レギュラーカードを使って買い物をしたネットショップで後日、「クレジットカード情報が○○から10万件流出か!」なんて事件が起こっても、たった3秒で冷静に対処することができます。クレジットカードなど、実際のプラスチックカードに表示された番号を使って支払った際は、こうした事件が起きた際、不安であればカードの利用を差し止めて、新しいカードを再発行する必要があります。手間なくセキュリティを管理できるのも、このアプリの魅力のひとつと言えそうです。
全体的に、Visaプリペイドアプリは固まることもなく非常にスムーズに使うことができました。アプリのサイズもiOSが3.9MB、Androidが3.0MBと非常に軽量で、スマートフォンの容量を必要以上に消費することなく、ホーム画面に置いておくことができます。
■フィンテックを勝ち抜くにはユーザー体験の向上が不可欠
これまで見てきたように、ドコモはユーザーが実際にネット決済する導線にフィットするようなアプリを開発しました。筆者も実際にアプリを使用してみて、ドコモ口座Visaプリペイドへのアクセスが格段に良化し、自由度の高い操作性が実現されていると実感しています。
プリペイド口座の開設からVisaカード発行、カード番号のコピーや変更を1つのアプリ内で完結できるアプリは、ドコモ口座Visaプリペイドアプリが「世界初」と言えます。(2015年4月 日本カードビジネス研究会調べ)
ユーザーが特定の状況でどのようにスマートフォンを操作するかを深く考え、その動きに合うようなユーザーインターフェースを提供することは、今後のフィンテックサービスで存在感を示すうえで、非常に重要な要素になるのではないでしょうか。
本記事は日本カードビジネス研究会の解説記事をご紹介しています。
http://www.ncbi.jp/ncbblog/2015/04/post-b0f1.html