2015年5月7日9:10スモールビジネス融資を革新するフィンテック~Small Biz Lending~
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
リーマンショック以降たびかさなる金融危機で、多くの不良債権を抱えてしまった大手銀行や既存のレンダーにとって、スモールビジネス融資はリスクが高い分野である。景気が好転している状況でも、なかなか積極的にアクセルを踏めない。
しかし、スモールビジネスの資金ニーズは強い。景気が悪い時は生き残りのため、景気が良い時は成長のため。スモールビジネスは経済の活力である。米国では1995年以降、新規雇用の3分の2を生みだしてきた。スモールビジネスの従業員数は1.2億人。一般企業の全労働力の約半数がスモールビジネス従業員なのである。英国では毎年45万件の起業家が生まれている。
スモールビジネスやスタートアップのニーズに積極的に対応しようというベンチャーが米欧でつぎつぎに生まれている。テクノロジーを駆使した金融サービスを提供するフィンテックレンダーだ。どのようなビジネスモデルで、どんな情報技術を活用してリスクをコントロールしているのだろうか。
■銀行を抜く勢いのフィンテックレンダー
2013年第4四半期、米国スモールビジネスの借入金残高を調達チャネル別にみると上図のようになる。
最も多いのが銀行融資で5,500億ドル超。ついでビジネスクレジットカードが1,800億ドル、リース1,500億ドル、SBA(連邦中小企業庁)800億ドル、ファクタリング700億ドル、MCA(マーチャントキャッシュアドバンス)300億ドル、そしてフィンテックレンダーが90億ドルとつづく。
フィンテックレンダーの残高は100億ドルに満たないが、伸び率はすごい。前年からの伸び率をみると、銀行融資はマイナス3.1%、対してフィンテックレンダーは100%の伸びとなっている。
なぜフィンテックレンダーは急成長しているのだろう。それは、スモールビジネスが融資先を探す際、Webやモバイルで検索し比較するようになったからである。より簡単で、より速く、そしてもっと有利な条件でローンを借りたいというニーズが強まっているのだ。
米国スモールビジネスがグーグルでローンを検索した件数は2006年のレベルから2014年には45%もアップしている。
銀行よりも簡単に申込め、スピーディに資金を確保できるレンダーが、ちょうどこのタイミングでつぎつぎに萌芽している。プロスパーやレンディングクラブ、オンデックなどのフィンテックレンダーである。
現在のトレンドからみると、スモールビジネス対象のバンキングサービスは2020年までに消滅するおそれがある、とグリーンスパン元FRB議長は予測する。それは承認率をみれば明らかだ。