2016年1月13日8:00
スーパーやドラッグストア等に対しCRMを強化できるプリペイドサービスを展開
2016年から決済情報と商品情報を連携したCLOを本格展開へ
大日本印刷(DNP)では、ギフト・プリペイドカードの運用から販促支援までをワンパッケージ化した「VALUE TACTiX」を展開しているが、近年はポイントサービス等の販促と絡めた採用が増えているという。また、複数の決済手段に対応し、購買情報を活用した販促を実現できる決済連動マーケティング「マルチペイメントサービス」の準備を進めている。さらに、プリペイド・クレジット・デビットの決済データと加盟店のPOS(売上明細)データを連携し、購入した商品を特定可能な「CLO(Card Linked Offer)サービス」など、流通店舗のCRMをトータルに支援している。
「VALUE TACTiX」の導入は順調に拡大
ポイントや販促と絡め、記名式を採用するケースが増加
DNPでは、2007 年からVALUE TACTiXを展開しているが、プリペイドサービスの実績は堅調に増えており、特にスーパーとドラッグストアからの引き合いが多いそうだ。
大日本印刷 C&I事業部プラットフォームサービス本部 ペイメントプラットフォーム事業開発室 室長 西田真氏によると、「特に記名式のプリペイドカードの採用が増えており、VALUE TACTiXの仕組みに、ASP型のCRMプラットフォーム『POINT TACTiX』を組み合わせて展開するケースが目立ちます」と説明する。単純な決済手段としての提供に加え、稼働率を高め、顧客接点を強化する目的で記名式のカードが採用されているそうだ。
以前は、年商1,000億円以上の企業がサービスを導入するケースが多かったが、ここ1~2年はより小規模な流通企業の採用も増えてきた。DNPでは、バリューデザインとASPサービスで連携しているが、スーパーマーケットの顧客企業を数多く抱えるクレジットカード会社やPOSベンダーと連携を行うケースもあるそうだ。
ギフト・プリペイドカードの営業については、既存で展開するASPサービスに加え、近年はSIerと競合するケースもあり、手数料による収益も厳しくなっているが、「弊社のサービスはCRMを強化できるのが特徴です」と西田氏は話す。同社では単純な決済サービスに留まらない販促サポートを行うことで、手数料に代わる付加価値を提供していく方針だ。
『マルチペイメントサービス』は3つの軸で展開
企業からの引き合いをベースにサービス起点で構築へ
DNPでは、加盟店のクレジットカードやプリペイドカードといった決済インフラを共通化し、さまざまなサービスを提供できる「マルチ決済ゲートウェイサービス」と、その決済手段の履歴情報を活用した販促を実現できる「決済情報を活用した販促サービス」による『マルチペイメントサービス』を準備している。2014年3月にビジネスのコンセプトを発表したが、その引き合いをベースに、3つの切り口でサービスの構築を進めている。1つめは、スーパーマーケットやドラッグストアに向けたマルチ決済の対応となり、プリペイドカードと連動したサービスを視野に入れる。2つめは、地域独自の電子マネーとなり、サーバ管理型のプリペイドカードに加え、交通系電子マネーなどFeliCaと連携したサービスを挙げる。3つめは共通ポイントを活用した展開で、ポイント交換などと絡めた展開を想定している。
「弊社のゲートウェイは、CLOやプリペイドも含めて、サービス起点で導入していただきたいと考えています」(西田氏)
イズミで「ゆめカード」「ゆめか」会員へCLOサービスを提供
商品まで特定できるサービスへの期待は高い
また、決済データとPOS(売上明細)データの連携により、購入した店舗だけではなく商品まで特定できるCLOサービスも展開している。2015年10月からは、イズミが中国・四国・九州地域で展開する「ゆめタウン」と「ゆめマート」の113店舗で「ゆめタウンアプリ ら・ら・ら お得にチャレンジ!キャンペーン」を実施した。これまでDNPでは、カード会社へのアプリによるサービス提供はあったが、流通店舗のPOSと連携したサービスとして国内初の事例となった。
同キャンペーンの対象者は、イズミの「ゆめカード(クレジットカード)」と「ゆめか(電子マネー)」の会員となり、イズミが提供しているスマートフォン向けの「ゆめタウンアプリ」で事前にキャンペーンにエントリーし、店舗でキャンペーンの対象商品を「ゆめカード」または「ゆめか」を提示して購入すると、自動的にキャンペーンに応募でき、抽選で景品が当たるものだ。
大日本印刷 C&I事業部プラットフォームサービス本部 CLOプラットフォーム事業開発室 室長 中根祐二氏は、「たとえば、通常のPOSデータだけでは、“アプリで商品の案内を見たのに買わなかった”などはわかりませんが、弊社のCLOサービスでは把握できます。デジタルマーケティングの枠組みの中で、日時でキャンペーンの分析を行いながら、効果を高めることが可能です」と、特徴を説明する。
会員IDをキーにして、商品単位でCLOを展開できるのが特徴であり、マルチ決済ゲートウェイサービスとの連携も考えているそうだ。CLOについては、市場からさまざまな意見があるが、商品まで特定できるサービスへの期待値は高く、サービス開始後も想定以上の効果が出ているという。
「2015年までは基盤およびコンセプトを作る時期でしたが、2016年はより多くの取り組みを展開できると考えています。今回はハウスクレジットとプリペイドカードを紐づけましたが、デビットカードにも対応していきたいです」(中根氏)
また、日本ではポイントサービスをはじめとする会員サービスが発達している国であるため、複数の事例を展開することで、将来的にさらに進んだサービスを展開できるとしている。
カード会社と連携した販促サービスも想定
決済連動マーケティングの差別化のポイントは?
今後は、流通企業に加え、カード会社と連携した販促サービスも想定。カード会社は加盟店で販売された商品の情報を把握するのは難しいため、プリペイドカード等と絡めたサービスも提案していきたいとしている。
また、DNPでは、決済連動マーケティングとして、決済情報を活用した販促サービスを展開しているが、ハウスプリペイド、カード会社を中心に提供するブランドプリペイド、CLOなど、顧客企業にあったサービスを展開していきたいとしている。
前出 西田氏は、「自社のお客様に提供するサービスは料率になりますが、新しいお客様を連れてくる場合には違うコストがかかります。それをマネジメントできる仕組みやコーディネイトして提案できるプランニング力が決済連動マーケティングの差別化のポイントになります」と強みを語った。