2017年3月15日8:00
チャージ機能も搭載のメンバーズカード「肉マイレージカード」
予約不要の立ち食いスタイルでステーキを提供する「いきなり!ステーキ」が、2016年8月開店の恵比寿店にて100店舗目を達成。銀座4丁目の1号店開店から3年足らずの快進撃だ。ステーキの原価率70%超の高コストパフォーマンスのみならず、客が指定した量を肉塊から切り分け、炭焼きで提供するオーダーカット方式も話題となり、瞬く間にファンの胃袋を掴み出店を加速させた。その好調を後押しするユニークな施策が「肉マイレージカード」を柱としたスマートCRMだ。
金額や来店回数ではなく、食べたグラム分のマイルが貯まる
今まで食した総量が数字で見える楽しさも来店動機に
ペッパーフードサービスは、2014年7月から「いきなり!ステーキ」全店で「肉マイレージカード」を導入。支払った金額ではなく、食べた肉の合計量が分かるカードとして誕生した。「1回で800グラムや1キロを注文される方、週に何度も来店される方もいらっしゃいます。そうしたお客様からのご要望もあり、食べた記録をつけよう、という発想で始まりました」と、ペッパーフードサービス 取締役 川野秀樹氏は語る。グラム=マイルという試みは日本初だろう。
積算グラム数に応じ、当初は3キロ未満の通常メンバーズカード、20キロ未満のゴールドカード、それ以上はプラチナカードの3ランクを設定した。食べるほどにカードの色が変わる達成感もファン心理を刺激。サービス開始から約一ヵ月でプラチナカードに到達する猛者が現れ、その後も続々と増えたため、2016年2月に100キロ超のダイヤモンドカードを加えて4ランクで展開している。
ランクアップ時には各ランクに応じたクーポンが贈られる。加えて、来店のたびに、ゴールドカードはソフトドリンクが、プラチナおよびダイヤモンドカードは好きな飲み物が1杯無料となる。さらにメルマガ会員に登録をすれば、誕生月に300gのステーキなど、ランクに応じた特典が受けられる。
たとえばゴールドカードなら、300gのステーキを10回食べれば到達可能。リピーターにはさほど高くない目標のため、カード利用率は店舗により異なるものの20~40%に上るという。
食べた量を客同士が競い合い、アプリでランキングを確認
プリペイド機能「肉マネー」も搭載
2015年7月からは、同カードと連携したアプリとランキング機能をスタート。総合ランキング、月間ランキングと、一食分のみの重量級ランキングを競い、順位は毎日更新される。月間ランキング1位の会員にいたっては月に約40キロ、単純計算で毎日1キロ以上食べているという。
「新店舗オープンの前日に試運転を兼ねた試食会をして、会員様を無料で何人か招待しますが、『お金を払うから肉マイレージがつかないかな』とおっしゃる方がいるくらいです」と川野氏は目尻を下げる。
公式アプリではスマートフォンからマイル数や会員ランク、順位等を確認できる。順位が気になって頻繁に見る会員が多いため閲覧率は高くなる。また、伝えたい情報はアプリでプッシュ型配信しているが、ビートレンドの効果検証において、メルマガに比べ商品ページ誘導率が約6倍に上っている。
カード発行は2016年末で67万人。今年3月末の100万人突破を見据える。今年2月開店のニューヨーク店でも現地仕様のマイレージカードを導入し、「世界ランキング」を加えてグローバル化していく計画だ。今後はカードレス化に向けての開発にも取り組む構えで、実現すれば会員の裾野がより広がるのは間違いない。
さらに2015年10月からは、プリペイド機能を「肉マネー」として同カードに搭載。入金額に応じチャージポイントが付与される。現在、「肉マネー」での支払いは全体売上の約5%だが月を追って増えており、チャージした人の来店回数や客単価増に寄与しているという。同店では楽天Edyもよく用いられており、プリペイドとの親和性が高い傾向にある。
他のユニークな試みとしては、70歳以上を対象に、プラチナカード同様の特典や、行列時の優先入店等のサービスをつけた「シニアカード」を2016年7月から発行している。「創業社長の一瀬は74歳で開拓者。問題は山積みでも、可能性があってワクワクすることなら、改善を重ねながら進んでいく。それがなかったら『いきなり!ステーキ』も『肉マイレージカード』も生まれませんでした」(川野氏)。時代を牽引するシニア社長の陣頭指揮により、次なる一手をどう打つか。決済の面からも同社の施策から目が離せない。