岡山県瀬戸内市、「ふるさと納税」寄付の返礼品として地域循環の「旅先納税システム」推進

2022年3月16日8:30

2度のプレミアム付商品券の電子化でも活用し、成果を上げる

岡山県瀬戸内市は、「ふるさと納税」の寄付の返礼品として、デジタル商品券「e街ギフト」を提供している。また、新型コロナウィルスの影響を受けている市内の観光事業者への支援の一環として発行・販売したプレミアム付商品券でも成果をあげた。さらに、旅や出張で訪れた地域に旅先で寄付を行い、返礼品として地域で利用可能な電子商品券を受け取り、市町村内の店舗で利用する、ふるさと納税の手段となる「旅先納税」のコンソーシアム「旅先納税広域連携コンソーシアム」にも立ち上げ時から参加している。

国宝「山鳥毛」里帰りプロジェクトの一環で開始
専用スタンプをスマホ画面に「ポン」

岡山県の南東部に位置する瀬戸内市は、牛窓町、邑久町、長船町が合併してできた人口約3万7,000人の市だ。牛窓町は、牛窓オリーブ園の高台から臨む瀬戸内海の美しい眺めを楽しめる観光地で、邑久町は美人画で一世を風靡した「大正ロマン」を代表する画家「竹久夢二」の出身地。長船町は、鎌倉時代から日本刀の一大産地として栄えた。

瀬戸内市総合政策部 秘書広報課 石井陽治氏

瀬戸内市は地域の活性化を目指し、2019年11月、eギフトプラットフォームのギフティが展開する地域で発行・利用可能な商品券を電子化しギフトとして流通させるソリューションである「e街ギフト」をふるさと納税の返礼品として導入した。瀬戸内市総合政策部 秘書広報課 石井陽治氏は「美しい刃文が特徴の国宝・山鳥毛(さんちょうもう)を里帰りさせるプロジェクトでクラウドファンディングを実施していた時期に、寄付の起爆剤となる返礼品として、e街ギフトをスタートさせました」と説明する。

「ふるさと納税 瀬戸内市e街ギフト」は、瀬戸内市内で使える電子商品券。ふるさと納税で寄付後、メールで送られてくる電子商品券を店舗で見せて、電子スタンプを押してもらい決済する仕組みだ。専用ウェブページからクレジットカードでの申し込み後に発行される。振り込みや瀬戸内市窓口での発行も可能だ。発行して約6カ月間(180日間)使用することができる。「これまでは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、有効期限を適宜延長する措置を取ったこともありました」(石井氏)という。

石井氏は「ふるさと納税の返礼品には品物を寄付者へお届けするものが多く、どうしても、参加できる事業者が限られていました。飲食や宿泊など、これまでふるさと納税に参画できなかった店舗にも参加していただき、寄付者からも利用しやすい仕組みを考えました。加盟店数は目標としていた100店舗を超え、月額200万円(年間2,400万円)の寄付額を目標にしていますが、コロナ禍の影響もあって、目標は達成できておりません。それでも令和3年12月は過去最高月額を記録しました」と話す。

返礼品券種は、「寄付額5,000 円 瀬戸内e 街ギフト1,500 円」と「寄付額1 万円 瀬戸内e 街ギフト3,000 円」、「寄付額5 万円 瀬戸内 e 街ギフト1 万5000 円」、「寄付額10 万円 瀬戸内e 街ギフト3 万円」の4 種類

プレミアム付商品券で約2.5億円完売
「自治体ポイント」サービスの導入を検討

また、e街ギフトの展開によって、思わぬ効果もあった。新型コロナウイルスの影響を受けている市内の観光事業者への支援の一環として発行・販売したプレミアム付商品券が「爆発的に売れた」(石井氏)という。ふるさと納税と違い、ガソリンスタンドなどの店舖でも使えるという利便性もあるが、「ふるさと納税 瀬戸内市e街ギフト」によって、電子商品券の購入・利用の仕組みができあがっていたことが奏功した。1年目は9,900万円が完売し、21年の8月からの第2弾は22年1月末までの期限で1億5,000万円分を販売し、これも売り切れている。

店舗でスマートフォンを店員に見せて、専用スタンプをスマホの画面に「ポン」と押すだけの決済が特徴の一つだ。瀬戸内市内の飲食、宿泊施設、物産店、日用品、サービスなどさまざまな加盟店で利用できる。使いたい金額を1円単位で使用可能で、発行された電子商品券へアクセスし、使いたい金額を自分で入力する

さらに、瀬戸内市では「ふるさと納税 瀬戸内市e街ギフト」と同時期に始めた「瀬戸内市旅先納税システム」を展開している。「旅先納税システム」と「e街ギフト」のシステムを連携することにより、瀬戸内市に滞在中の旅行者が、現地で「ふるさと納税」を行い、返礼品として「瀬戸内市e街ギフト」を寄付後即時に受け取れる仕組みだ。

寄付の方法も簡単で、「旅先納税システム」の専用サイトから寄付金額を選択した後、クレジットカードで決済を行う。決済後「申し込み完了」ページに表示される「瀬戸内市e街ギフト」へのリンクボタンを押すと、商品券ページが表示される。「e街ギフト」を即座に受け取れる「旅先納税システム」により、「ふるさと納税」から返礼品の受取り・利用までの一連の行動を旅先で喚起することが可能となり、よりスピーディーな地域への還元が実現し経済波及効果の向上も期待される。

旅先納税システムを展開するギフティは、瀬戸内市に続いて、同システムを活用する他の自治体を中心に、旅先納税の普及による地域活性化を目指すコンソーシアムを立ち上げた。瀬戸内市もメンバーに名を連ねており、今後、他の自治体と連携しながら、旅先納税システムや「e街ギフト」の利便性の向上に取り組む。

このほか、瀬戸内市では、市が指定したイベントや、清掃などのボランティア活動へ参加することによってポイントが付与される「自治体ポイント」サービスの導入を検討している。同様の取り組みはすでに、同じ岡山県の西粟倉村が「あわくらポイントサービス事業」として、21年6月からスタートしている。

カード決済&リテールサービスの強化書2022より

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