AWSがデジタル人材が生み出す経済効果を紹介、三菱UFJニコス等のDXコア人材育成事例も

2023年6月26日9:40

アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、2023年4月17日にデジタル人材育成に関する説明会を開催した。AWSでは、日本とAPAC(アジア・パシフィック地域)におけるデジタル人材が生み出す経済効果などに関する調査レポートを発表。また、AWSの支援プログラムなどをご利用の、三菱UFJニコスなどの顧客事例から考察した、顧客起点のDXのポイントやその支援に向けた施策について紹介した。

50万人にクラウドスキル提供
日本は伸びしろが大きい

AWSは、これまでグローバルで1,300万人に無償のトレーニングを提供し、クラウドスキルをすぐに活用できるようにサポートしてきたという。日本では2017年から50万人にクラウドスキルを提供してきたそうだ。昨年は30万人と発表していたため、1年で20万人が増加している。アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎 忠雄氏は「日本のデジタル競争力の持続的な向上に向けて、お客様と一緒に人への投資を加速させたいと思っていますし、一番重要なのはリーダーの方々の人への投資のコミットだと思っています」と話す。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎 忠雄氏

AWSでは、米ギャラップに委託し、作成した新調査レポート「APACデジタルスキル調査:テクノロジー人材がもたらす経済効果とは」の第三弾を発表した。同調査に関しては、トレーニングサービス本部 本部長 岩田 健一氏が紹介した。

今回は、デジタルスキルが経済全体にどういった影響をもたらすのかを中心に調査している。調査対象はオーストラリア、インド、インドネシア、 日本、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、 タイの9カ国で、雇用主・労働者へオンライン調査を実施。また、2021年6月~2022年5月の33カ国の求人広告データ(合 計1億件を超える求人)に関するデータを分析している。実施期間は、2022年8月2日~8月23日となり、労働者1万6,000人、雇用主7,500人 (日本:労働者2,796人、雇用主974人)から回答を得た。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン トレーニングサービス本部 本部長 岩田 健一氏

一番大きな結果は、デジタル人材は、大きな経済効果を創出するということだ。クラウドアーキテクチャやソフトウェア開発などのデジタルスキルを使用する日本の労働者は、日本の年間国内総生産(GDP)に推定 1.7兆米ドル(164.3兆円)貢献しているという。

どういったデジタルスキルレベルがあるかを調べたところ、高度なデジタルスキルを持っている人は少ないそうだ。売上成長を考えると、高度なデジタルスキルを活用する従業員を雇用する日本の組織の36%が、過去1年に堅調な売上成長(10% 以上の売上増)を実現した。また、中程度のデジタルスキル組織では その割合が27%、基礎的なデジタルスキル組織では 20%となった。また、高度なデジタルスキルを活用する労働者を雇用する日本の組織のほぼ半数(49%)が過去2年間に革新的な新製品をマーケットに出したという。ビジネスの大半をクラウド活用して推進している日本企業は、クラウドをビジネスの一部のみに活用している、もしくはまったく活用していない企業に比べ、イノベーションを進展させている割合が2倍近く(49%と25%)高かった。

実態として、知識を身に着けたいと考える人が増えた。回答者の約半数が、今後1つ以上のデジタルスキルの習得に向けたトレーニングを受講することに関心を示した。また、労働者の94% が、デジタルスキルトレーニングを受講する上で1つ以上の課題があると回答。具体的には、時間不足(49%)、予算不足(36%)、キャリア向上に必要なスキルやトレーニングがわからない(32%)となった。日本の企業・組織の61%が、今後5年間のビジネスにおいて、デジタルスキルが「とても重要」もしくは「極めて重要」と回答したが、日本の企業・組織の45% が、必要とするデジタルワーカーの採用が非常に困難だと感じており、48%がその理由として、応募要件に見合う人材の不足を指摘している。日本をはじめとしたAPACでは、業界の資格認定やトレーニング修了を学位の代わりとして認める企業・組織が増えた。

AWSは、IT人材だけではなく、非IT人材、未来のIT人材も有効に活用できるという。また、人材育成の裾野は大手だけではなく、中小・ベンチャー企業、開発者へと拡大していくことが重要だとした。AWSでは、AWS トレーニングパートナーでもあるシステムシェアードと一緒に、クラウドプラットフォーム上でJavaのトレーニングを提供した。中小・ベンチャー企業を中心に、毎年 3,000名規模の新卒JAVA研修を実施していくという。

ガバメントクラウドの事例も増加
JALインフォテックは130以上のアプリ稼働

最近では、ガバメントクラウドでAWSを活用してもらうケースも増えてきた。2022年9月からは自治体向けオンラインの基礎トレーニングを実施している。すでに地方自治体を含め、約500名が受講したという。

クラウドを教科として学生に学んでもらう無償プログラム「AWS academy」では、加盟校 200 校、認定教員300 名を有している。日本では2018 年に開始し、大学、高等専門学校 (高専)、 私立専門学校 、職業訓練校などが加盟している。富山ビジネス専門学校では、IT知識のなかった高校卒業生がITインフラストラクチャーを勉強し、AWS Academy で学んだスキルを活かして、地域の企業に就職し、社内インフラに携わっているそうだ。

企業の取り組みとして、例えば、日本航空(JAL)では2018 年にクラウドシフトを開始。コロナ後の世界を見据えて 2021年、JAL Vision 2030を発表している。グループのJALインフォテックでは、過去3年間で延べ約840人がAWSトレーニングを受講し、約80名がAWS認定資格を取得した。現在、日本航空ではAWSを活用して構築したクラウド基盤「CIEL/S」上に130を超えるアプリケーションが稼働している。

企業のデジタル人材で直面するデジタル人材育成における現状課題として、「失敗が許容されにくい環境」「短期で求められる成果」「ビジネス価値を支えるべき人材育成そのものの目的化」の3つを挙げたが、その課題に関する解決の方向性として「トライ&エラー文化の醸成(失敗を許容)」「中長期視点での成果の定義 •」「ビジネス価値創出を目的に(人材育成は手段に)」という3つを挙げた。この成功事例に大手印刷会社の凸版印刷の例を挙げ、経営層がこの3点を網羅する形で 現場に対して方針を示せている場合は、人材育成が成功している確率が高いとした。

中長期人材育成の基盤として、「AWS Skill Builder team subscription」でのゲーム形式のクラウド学習「AWS Cloud Quest」、100以上の手順書付きハンズオン環境「AWS Builder Labs」、分野別の課題を個人で解く「AWS Jam Journey」や400 問以上の課題を解いていく「AWS Jam Event」等を提供している。企業と伴奏することにより、ビジネスの貢献を目指している。人材育成は中長期視点、かつアジャイルに、育成プランはビジネス価値創出からの逆算で提供している。

三菱UFJニコスのDX育成など3社の取り組み
ガバメントクラウド移行の自治体も支援

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