EC連動のOMO店舗「THE [ ] STORE」、リアル/ネットの顧客データ取得とマーケティング実現へ

2023年7月14日9:30 

SUPER STUDIOは、2023年7月15日に「ecforce」の常設店として初のリアル店舗「THE [ ] STORE」をRAYARD MIYASHITA PARK(東京都渋谷区)にオープンする。第一弾として、自社のファッションブランド「MEQRI(メクリ)」が出店するが、そのほかの出店者も決定しているという。

左からSUPER STUDIO 代表取締役 林 紘祐氏と三井不動産 ベンチャー共創事業部 共創事業グループ 主事 上窪洋平氏

ECのリアルとのシナジー期待
OMOストアが広がるきっかけに

2014年設立のSUPER STUDIOは、ECブランド運営者向けのソリューションとして、クラウド型のEC基幹システム「ecforce」を展開している。また、自社でECの機能やブランドの開発も行っており、ノウハウを積み上げてブラッシュアップしているという。「ecforce」は、スタートアップから大手まで幅広く導入されている。

「THE [ ] STORE」開始の背景として、三井不動産とグローバルブレインが共同で実施する「31VENTURES」(サンイチベンチャーズ)から総額44億円の資金調達を実施。これを機にSUPER STUDIOのEC運営に関する知見と三井不動産のリアルアセットの強みを掛け合わせたECブランドへのOMOソリューションの提供に取り組んでいる。三井不動産はリアルインフラの提供やテナントの価値向上、SUPER STUDIOはリテールインフラや消費体験の価値向上に向けたSaaSを提供し、売上アップにつなげていく。三井不動産 ベンチャー共創事業部 共創事業グループ 主事 上窪洋平氏によると、人員の魅力やEC事業の成長に加え、将来的にリアルとの大きなシナジーが生まれると考えて、SUPER STUDIOへの出資に至ったという。

まずはファッションブランド「MEQRI」が出店
サイネージでブランドや商品を訴求

SUPER STUDIO 代表取締役 林 紘祐氏によると、EC運営企業はリアル店舗の出店に向けて、ノウハウの不足やコスト懸念があるという。「THE [ ] STORE」では、リアル店舗に必要な内装、接客人員、システムがすでに用意されており、それらを合わせた料金で一般的なテナント出店より安価な設定となる。また、リアルでありながら、店舗での購入データは「ecforce」に取り込まれる。ECの購入導線を使用するため、その場で定期購入を訴求することも可能だ。その後、LINEやメールなどでコミュニケーションを図ることで、購入者と継続的なコミュニケーションにつなげていく。

SUPER STUDIOと三井不動産では、2022年5月に2週間、RAYARD MIYASHITA PARK「&BASE」でポップストアをオープンした。同取り組みでは約2,000名が来店し、売上が目標の2倍を記録するとともに、サブスクリプションの促進につながったという。同実証実験で得たノウハウやシステム上の改善点をもとに、店舗設計やOMOソリューションの仕組みを構築した。上窪氏は「ECブランド様にとっての価値として、リアルに出店することが有力な販売経路になることを証明したいです。定量的な効果検証を整えることによって、D2Cブランドに出店いただける流れを作っていきます」と話す。また、渋谷の一等地にあるRAYARD MIYASHITA PARKに訪れる人は新しいブランドへの期待や、他では購入できない商品との出会いを求めるため、その要望にも応えていきたいとした。今後は両社が展開する他の施設への横展開など、OMOストアが数多く展開されるまで成長させていきたいそうだ。将来的には、ECブランドに加え、リアル店舗にとっても価値のあるものになっていく可能性がある。

商品に紐付けられたQRコードを読み取ることで、「買い物かご」へ追加できる
クレジットカード情報を入力
商品選択完了後に、その場で必要な情報を入力することで、レジに並ぶことなく商品購入が完了
商品購入後、スマホに表示されたQRコードを店舗のタブレットで読み込む

店舗名を自社ブランドに変更可能
完全にECカートと連動したOMO実現

THE [ ] STOREの店頭サインは、THE [ ] STOREの[ ]内に液晶が埋め込まれており、ブランド名や商品ジャンルを入れることで店舗名を自社ブランドに変更できる。また、店舗通過時に店内が見えるため、偶発的な来店を期待できるそうだ。

店舗の外観

具体的に、ECブランドは週単位でリアル店舗に出店可能だ。ブランドに空きがある期間であれば、最短1週間で出店できる。

洋服のブランドに加え、食品の試食や新商品発表、トークイベントなども行える。また、店頭には大型モニターと2面のデジタルサイネージを用意して、自社商品やサービスを告知できる。さらに、可変式の什器を用意しており、自由に店内をレイアウト可能だ。

具体的な店舗の導線として、店頭の各商品に紐付けられたQRコードを来店者のスマートフォンで読み取り、カートに遷移することでEC同様に商品の購入が可能だ。利用者には、購入から一定期間経過後にメールを配信したり、割引セールの告知などが行える。また、店内に関するアンケートへの回答や公式LINE登録ができるスペースも用意。登録情報はTHE [ ] STOREやその後のECサイトの情報と紐づけが可能だ。

店内で購入までの流れを説明

店内や店外にはAIカメラを設置。来店者の行動・目線データを取得し、商品配置や店舗内導線についてデータを基に改善が可能だ。また、オンライン購入のCVR・LTV、顧客アンケート、オンライン購入数・購入単価、オフライン購入数・購入単価との比較などが行える。

天井にはAIカメラを設置

同社 執行役員 大谷元輝氏によると、例えば、QRコードなどを活用してECページに遷移するといった事例は過去にもあるが、完全にECカートと連動したOMOストアであることが特徴だとした。

今回のTHE [ ] STOREでは、ecforceの導入先を中心に告知しているが、他のカートベンダーを使用していても出店できるようにしていくという。

なお、SUPER STUDIOの「次世代EC構想」では、ECブランドの担当者が2名の体制でも年商10億円の事業が運営できる効率的なEC基盤づくりを目指しているという。包括的にEC事業者を支援するために、複数のサービスを自社で開発し、保有している。THE [ ] STOREもその一環となり、リアルやECの販売チャネルごとのシステムやデータを統合管理することで、スタートアップから大企業まで、顧客対応やマーケティング、サイト運営、サプライチェーンが円滑に回るように支援する。また、「ecforce ma」では、利用者の導線を分析し、直感的なCRMの実施が可能になるという。林氏は「次世代EC構想をもとにECそのものをシンプルにしていきたい」と意気込みを見せた。

Apple Payで定期購入、PayPayでリアル決済促進も期待
店舗でのカメラ活用の方法は?

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