2023年10月10日8:00
2023年10月1日から、インボイス制度が導入された。実質的な消費増税であり、個人事業主を中心に多くの国民が反対の声を上げたものの、最終的には政府に押し切られた形となった。さまざまな業界にわたり深刻な影響が懸念されるが、ECモールへの出店者についてはどうだろうか。
通販研究所 渡辺友絵
記事のポイント!
①煩雑な事務手続きが必要に?
②免税事業者と取引しない等のケースは1割
③個人事業主にとってインボイス制度開始は死活問題
④制度スタート後は「対応コスト」も発生
⑤アマゾンや楽天市場の対応
⑥フリマアプリの影響
⑦「免税事業者」や個人事業主の動きは鈍い
■小規模事業者や個人事業主にとって厳しい制度
インボイス制度は、これまで消費税が免税だった年間売上高1,000万円以下の小規模事業者や個人事業主(フリーランス)、副業ワーカーにとって厳しいものだ。取引(販売)先にインボイス(適格請求書)を発行するためには、従来の「免税事業者」から「課税事業者」へと変更しなくてはならない。消費税を収める義務が生じると同時に、納税額を自分で算出して申告するなど、煩雑な事務手続きが必要となる。
年間売上高が1,000万円以下であれば、形式的には「免税事業者」のままでいることもできるが、販売先からインボイス発行を求められれば断ることは難しい。インボイス発行ができない「免税事業者」の請求書だと販売先は仕入税額控除を受けられず、消費税の納税額が増えてしまうからだ。
そうなると納税額増を理由に、販売先はインボイス発行ができる「課税事業者」に発注先を変更する可能性がある。取引継続のためには、結果的に「免税事業者」の多くが「課税事業者」にならざるを得ない。東京商工リサーチが8月に行った調査では、制度開始後は「免税事業者」と取引しない、または取引価格を引き下げると答えた企業は1割強にのぼった。
■史上最多の署名が集まるなど反対の声が止まず
「課税事業者」となって消費税を払い複雑な事務手続きをするか、「免税事業者」のまま発注先を失うか、もともと収入が少ない個人事業主にとってインボイス制度は死活問題。そのため、俳優や声優、漫画家、ライター、カメラマン、イラストレーター、校正者、作家、司法書士、店舗経営者、個人ドライバーなど幅広い分野の個人事業主たちが反対運動を繰り広げている。
オンライン署名サイトで「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が集めた「STOP!インボイス」の署名は、目標を超えて9月には約54万筆にまで拡大。オンライン署名史上最多だった、東京五輪の開催中止を求める約46万筆を上回った。
反対を唱えるこれら個人事業主の中には、「課税事業者」と「免税事業者」のどちらも選ぶことができず、インボイス制度導入を機に廃業を考える人たちも目立つ。社会に根を下ろす多様な働き方とカルチャーを衰退させ、実質増税につながる不利益しかない制度であるとの声は止む気配がない。
実際、政府が2019年の国会で示したインボイス導入による税収入は年間でわずか約2,480億円。一方で、会計管理ソフトを提供するLayerX社の調査によれば、制度スタート後は企業の経理担当者による作業増加などで、毎月3,413億円、年間4兆956億円と税収入の16倍以上となる「対応コスト」が発生するという。
■大手ECプラットフォームにみる対応
では、ECプラットフォームに出店・出品している小規模事業者や個人事業主への影響はどうだろうか。
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