2011年9月12日8:00
決済ブランド処理やセキュリティの機能をサーバに集約
シンクライアント方式で電子マネー端末のコストが従来の3分の1に
店舗側の端末にカードやおサイフケータイの読み取り機能のみを残し、決済ブランドの処理やセキュリティ(暗号化)などの主要機能をセンター側に集約する電子マネーの決済システムをいち早く開発したのがトランザクション・メディア・ネットワークス(TMN)だ。シンクライアント方式を採用した電子マネーの決済システム「TMNシンクライアントシステム」について話を聞いた。
決済ブランド処理・セキュリティ処理の機能は
TMNセンターに集約
トランザクション・メディア・ネットワークス(TMN)は、2008年に電子マネーやポストペイのさらなる普及を目指し、三菱商事とトヨタファイナンシャルサービスにより設立された企業である。現在は、両社に加え、NTTデータ、インターネットイニシアティブが株主となっている。
同社では従来の電子マネー/ポストペイの決済端末の課題をクリアするため、シンクライアント方式を採用した決済システム「TMNシンクライアントシステム」を開発した。2009年には、同方式を利用してiDとQUICPayの実証実験を実施。この取り組みには一定の成果を得たが、その際にSuicaの機能もシンクライアント方式で実現させてほしいという要望があったそうだ。同社ではすでにSuicaのフィールドテストを終了。SuicaとQUICPayについてはシンクライアント方式での本格運用を開始した。iDも年内に利用可能となる。
従来の電子マネー/ポストペイの決済端末はリッチクライアントで、オフラインで決済処理を行う仕組みになっている。TMNシンクライアント方式では、店舗側の端末「UT1」にリーダライタ機能だけを残し、決済処理や暗号化などのセキュリティといった主要機能はTMNセンター側に集約する。加盟店は、従来の端末よりも安価な価格で電子マネーやポストペイ決済を導入できる。
決済処理のデータはTMNセンター側で保持するため、店舗側はネガデータのダウンロードが必要なく、ダウンロードにより決済端末が利用できない状態が発生しない。
「電子マネー/ポストペイの一回の決済で、残高確認、金額の引き去りなどの主だった命令処理を8つ、細かい点も含めると40程度の処理を行います。セキュリティ強化の観点から、決済端末とTMNセンターの間は、インターネットVPNで接続しています。売上を組成するのはTMNセンターになり、決済端末にはデータが残りません。トータル2秒弱でセンターとのやり取りが可能で、これまで業界内で不可能と言われたシンクライアントシステムでの処理時間の短縮を実現しています」(トランザクション・メディア・ネットワークス 取締役副社長 村松陽二氏)
同端末はインターネット回線を利用できるため、専用線などに比べイニシャルコストとランニングコストを抑えることが可能な点も特徴となっている。
UT1の製造は、海外メーカーに依頼し、同社自身が開発したという。村松氏は、「当初は国内メーカーに開発を依頼しましたが、各社とも1~2秒でセンターとのやり取りを行うシンクライアント方式の実現は難しいという認識だったため、弊社自身で設計案の企画から開発までを行いました」と話す。同端末は、NFC対応となっており、TypeA/Bとのマルチ端末としても利用でき、将来的には海外展開も視野に入れる。
CCT接続型で展開
CCT端末とセットで10万円を切る価格を実現
加盟店への提供方法は、まずはCCT接続型で展開していく。このCCT接続型は、NTTデータのINFOX端末に接続するタイプで導入のリードタイムが短い点がポイントだ。同端末を導入した場合、クレジットカードの決済処理はNTTデータのセンターで行われるが、電子マネー/ポストペイの処理はTMNセンターで実施する。
同社では端末をカード会社に購入してもらい、カード会社から加盟店にアクワイアリングを行う形を想定している。
「月々1,000円以下の利用料が弊社の収益となります。端末は、CCT端末を合わせても10万円を切る価格となり、従来の約3分の1と大幅にコストを抑えることが可能です。アクワイアラーも現在はトヨタファイナンスが行っていますが、今後は広げていく方針です」(村松氏)
POS接続型については、名古屋のスーパーで、シンクライアント方式によるQUICPay決済がすでに実運用されている。POS接続型でのSuica、iD対応も進めていく。
ポイント、クーポン、ギフトなどの展開も視野に
早期に接続決済端末数30万台を目指す
今後は、常時接続の環境を生かし、ポイント、クーポン、ギフト、地域マネー、会員証などのサービスを提供するASP事業者とも連携していく予定だ。
シンクライアント方式の決済端末は、今後他社からもリリースされる予定だが、いち早くサービスを開始した強みを生かし、同社では営業展開を強化する方針だ。接続決済端末数30万台の早期達成を目指す。