2012年3月28日8:00
端末のコストを下げるシンクライアント型決済システムをいち早く実用化
「Suica」「QUICPay」「iD」に加え、「Edy」にも対応へ
店舗側の端末に電子マネー/ポストペイの読み取り機能のみを残し、決済ブランドの処理やセキュリティなどの主要機能をセンター側に集約するのがシンクライアント型決済システムだ。トランザクション・メディア・ネットワークスでは、「Suica」「QUICPay」「iD」のシンクライアント型決済システムの提供を行っている。また、2012年中には、「Edy」の機能も追加を予定している。トランザクション・メディア・ネットワークス 代表取締役社長 大高敦氏にサービス展開について話を聞いた。
決済処理や暗号化などのセキュリティ主要機能はサーバ側に集約
国内の主要カード会社ならびにPOSメーカーと連携し端末設置を推進
トランザクション・メディア・ネットワークス(TMN)は、他社に先行してシンクライアント型の決済システムを提供している。従来、国内の電子マネーの決済端末は、“リッチクライアント”と呼ばれる、オフラインで決済処理を行う仕組みが用いられていたが、TMNでは、決済端末にリーダライタ機能だけを残し、決済処理や暗号化などのセキュリティ主要機能はサーバ側に集約するシステムを提供している。
店舗側にとっては、ネガデータのダウンロードが必要なく、ダウンロードにより決済端末が利用できない状態が発生しない。また、インターネット回線を利用できるため、専用線などに比べイニシャルコストとランニングコストを抑えることが可能な点も特徴となっている。
すでに、JR東日本の「Suica」などの交通系電子マネー、ジェーシービーの「QUICPay」とNTTドコモの「iD」のポストペイ決済に対応している。また、ビットワレットが提供する電子マネー「Edy」の2012年内の稼動に向け、開発に着手している。
TMNは2011年9月から商用運用を開始し、対応端末の設置などを行ってきているが、同社はシンクライアントシステムのセンター運営だけでなく、専用のリーダライタも提供している。複数の電子マネーブランドからの認定を受けているシンクライアント型リーダライタで商用運用に至っているものは同社製品のみ。カード会社がクレジットカードと合わせて電子マネーの加盟店を開拓するとき、クレジットカード端末とTMNのリーダライタをセットにして、加盟店に設置をしていく。カード会社にとっても、クレジットや銀聯等の従来のアプリケーションに加え、シンクライアントシステムとの融合により、複数の電子マネーやポストペイのブランドの決済を提供できる拡張性や、FeliCaとTypeA/Bベースのシステムの共存などが期待できる。現状は、NTTデータのINFOX端末と接続しているが、今後は日本カードネットワークのJET-S端末などにも接続していきたいとしている。また、すでにPOSにリーダライタを直接接続する方式にも対応しており、運用に至っている先も出てきている。
「電子マネーやポストペイの端末については、日銀統計によると2010年が約80万台、2011年は95万台になるなど、数字は伸びています。これまでも電子マネーのすそ野を広げたのはカード会社(アクワイアラ)の功績が大きく、また、加盟店に対し、電子マネー以外の視点でも提案が可能な点から、アクワイアラを中心に端末の設置を進めています」(トランザクション・メディア・ネットワークス 代表取締役社長 大高 敦氏)
現在の端末の設置台数については非公表だが、「大手から個店まで、日に日に問い合わせは増えており、手ごたえは感じています」と大高氏は笑顔を見せる。ただし、シンクライアント型の決済端末は、新しいサービスでもあるため、その良さを理解してもらうのには時間も必要とのことだ。
リーダライタはTypeA/Bにも対応
ポイントやクーポンなどCRMサービスにも力を入れる
今後の目標としては、まず国内で利用できる主要な電子マネーのすべてに対応することが挙げられる。また、サーバの高速化やシーケンスの見直しによる決済時間の短縮は継続して取り組む方針だ。現状、同社の決済システムは、各ブランド秒間で100トランザクションの処理が可能だ。「決済処理が増えた際は、サーバにボードを追加するだけでブランドごとに柔軟に対応できる点もメリットとなっています」と大高氏は話す。今後は、「流通系電子マネーのシンクライアント型決済システムの実現を目指します。その中では、すでにこれらを実現しつつある企業とセンター間で接続し、サービスを提供する方法なども検討していきたい」としている。
また、同社の端末のリーダライタはTypeA/Bにも対応しているため、「TypeA/Bベースの国際ブランドが提供する決済の提供についてもソフトウェアの追加で対応できると思います」と大高氏は自信を見せる。今後、スマートフォン、タブレットを利用した決済にも対応するためにすでに国内メーカーとの開発に着手したとしている。
また、TMNでは、決済だけではなく、ポイントなどのCRMサービスの提供の準備も進めている。すでにNTTドコモと提携し、会員証の発行、商品の購入履歴などの収集、割引クーポンの配信など、おサイフケータイを活用したCRMを実現するASPサービス「モバイルASPサービス」の提供も行う方針だ。また、ポイントやクーポンサービスのASP事業を展開する企業とも積極的に提携していきたいとしている。TMNでは、「単純に決済端末・システムを設置するだけの企業ではなく、ポイントやクーポンとの連携も含め、非接触を利用したサービスは取り揃えていきたいです」と意気込みを述べる。
端末価格はCCT(クレジットカード・銀聯対応共同利用端末)と
電子マネーのリーダライタをセットで10万円以下
TMNでは、シンクライアントを利用した決済を加盟店に推進しているが、「処理スピードの速さなど、リッチクライアントならではの良さもあり、今後も両方式が共存していくのではないか」とみている。また、「同じ筐体の中にシンクライアントとリッチクライアントが共存することも将来的には考えられる」としている。
価格はCCTとリーダライタセットで、10万円以下で市場導入が進んでいる。加盟店はクレジットカード、銀聯、電子マネーの決済をまとめて導入することが可能だ。また、電子マネーについては、毎月3ブランドまで1,000円以下のTMNセンター利用料で、決済が可能になる。
端末の設置目標は年間4~5万台を想定。順当にいけば2万台の設置で単月度の黒字化が期待できるという。大高氏は、「高い目標であると言われることもありますが、アクワイアラ各社、POSメーカーとの連携で十分に到達可能な数字であり、個人的にはさらに高い目標を抱いています」と意気込みを見せる。