2012年12月25日8:00
創刊200号特別企画
CRMの未来 ~関係性マーケティング~
総 論: CRMの成功は顧客との共生にある
日本国内では1990年代後半から普及が進んだマーケティング概念“CRM”(Customer Relationship Management)。そのあり方は時代と生活者、それを取り巻くインフラの変化などによって変遷してきた。長年にわたってCRMの行方を注視してきた弊誌編集部が、「CRMの未来」の方向性について探った。
テクノロジーの進化、ソーシャルメディアの登場などによって、企業が“できること”は拡大しているが、その本質は変わらない。求められるのは顧客をより深く理解し、より良い提案を行うことだ。顧客視点の徹底こそが、CRMを成功に導く条件である。
今回、「CRMの未来」という特集を企画するに当たって、本誌とCRM(Customer Relationship Management)のかかわりを振り返ってみた。
CRMは、日本国内では1990年代後半から普及が進んだマーケティング概念だ。本誌が毎年実施している「読者アンケート」の結果を見ても、CRMという言葉が国内のマーケターの間で一般化したのは2000年前後だったことがわかる。同アンケートでは毎回、「興味のあるキーワード」を尋ねているが、その中で「CRM」という回答が1999年の42.5%から、翌2000年には70.0%と一気に27.5ポイントも増加したのだ。以来、高スコアをキープし続け、2012年の調査でも77%でトップとなっている。
本誌の特集タイトルに初めてCRMという単語が登場したのは(カタカナ表記ではあるが)、1999年7月号(Vol.38)の「カスタマー・リレーションシップ・マネジメントを実現するCTIの効果的活用を探る」。しかし、CRMという単語こそ使用していないものの、1996年4月号(Vol.3)ではメーカーのデータベース・マーケティングを、1996年8月号(Vol.5)では店舗小売業のデータベース・マーケティングを、それぞれ特集テーマとして取り上げており、その意味ではいささか手前味噌ではあるが、日本国内でいち早くCRMのあり方やマーケティングにおける有用性に注目してきた雑誌媒体であると言って差し支えないであろう。
そして2000年以降、本誌の特集タイトルにはCRMという単語が頻繁に登場する。
直接、CRMという単語が使われていない号でも、“優良顧客の維持・育成”、“顧客との関係づくり”など、CRMの本質に触れる内容の特集は多く、また、2000年7月号(Vol.50)には、今号で第151回を迎える長期連載「CRM実践講座」がスタートした。さらに2003年1月にはCRMの成功事例などを集めた資料集として『CRM白書』(2006年版から『CRM年鑑』に改題)を刊行し、以後、2010年まで毎年発行。2011年からは企業のCRMへの取り組みが多様化したことを反映し、テーマを細分化した「CRMシリーズ」として刊行を続けてきた。