2015年8月3日10:12
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
突然動き出したこの潮流はとめられそうもない。
世界中のPOS業界が一斉にNFC非接触対応を加速させているのだ。
大手のインジェニコやベリフォンからベンチャーのスクエアやアイゼトル、
その他大勢のmPOSベンダーまで続々とNFC非接触決済端末を前面に押し出してきている。
mPOSのマーチャント向けコンテンツにも新たな流れが生まれている。
ベンダーが開発した特定のアプリケーションしか使えないクローズドな戦略から、
だれでもアプリケーションを開発してベンダーのコンテンツメニューに加えられる
オープンな戦略へとシフトしている。
これによってマーチャントの利便性は一気に高まり、
固有ニーズにあった最適のアプリケーションを選んで使えるようになってきた。
なにがきっかけでこの潮流が生まれたのだろうか。
日本はどう対応すればいいのだろうか。
生き馬の目を抜くmPOSビジネスについて解説していくことにしよう。
■誰も予測しなかったNFC非接触決済の復活
米国ではこの10月からライアビリティシフトがスタートする。カード発行会社はEMV(ICチップカード)発行を、アクワイアラはマーチャントにEMV対応決済端末の設置を義務づけられた。これにそわない方法で不正取引が発生すると、EMV非対応者の責任となる。
しかし、EMV対応を迫られるマーチャントの興味は、EMVよりもむしろNFC非接触に向いている。
マーチャントが求めているカードリーダの前提条件は、1台に磁気カード、EMV、そしてNFC非接触決済機能を搭載したものなのである。米国はもとより、欧州でも、オーストラリアやニュージーランドでも、そのニーズは強い。
そのきっかけとなったのはApple Payである。2014年10月のリリースから、モバイル決済の主流はNFC非接触決済に切替わった。
今から2年前にだれがNFC非接触決済の隆盛を予測できただろう。2012年12月、当時PayPalの社長だったデビット・マーカス氏は「2013年は、NFC決済に関する議論は徐々になくなるだろう」というショッキングなコメントを自身のブログで発表した。
「英国はNFCに対する懐疑論と失望感に満たされている」とコメントしたのは、英国のモバイルニュースだった。