2018年7月20日8:10
富士急行(山梨県富士吉田市)は、富士急ハイランドが中国・テンセントホールディングス(騰訊控股有限公司)のモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付:ウィーチャットペイ)」を導入し、中国国外で初の「WeChat Payスマート旗艦遊園地」となったと発表した。2018年7月19日は、富士急行運営のハイランドリゾート ホテル&スパで導入の記念セレモニーが行われた。
中国国外で初めて「WeChat Payスマート旗艦遊園地」に
専用アプリWeChat「Mini Program」を開設
富士急行では、2017年11月より富士急ハイランド園内のショップやカチカチ山ロープウェイ、富士急山梨ハイヤーなどの富士急グループの一部でWeChat Payを試験導入していた。その結果、想定以上の成果があったことから、2018年2月16日の春節に向けて富士急グループ29店舗で導入し、現在も導入店舗は増加している。
富士急ハイランドでは、中国国外で初めて「WeChat Payスマート旗艦遊園地」になった。これにより、ショップや飲食など、園内全体でWeChat Payの利用が可能となる。また、今後導入を予定するWeChat Pay専用の無人レジを体験できるコーナーも設置される。無人レジでは、最短30秒で商品購入が可能となる予定だ。
また、富士急ハイランドの専用アプリWeChat「Mini Program」を開設。これは、WeChatアプリ内にあるアプリとなり、企業はさまざまなモバイルサービスを提供できるものだ。同アプリにおいて、日本で初めてオンラインチケットを発売。また、アトラクション待ち時間の確認ができ、将来的には、パーク内のハンディ・ツアーガイド、アプリならではの情報発信などを予定している。
富士急行 代表取締役社長 堀内光一郎氏は、「ソフト、ハードのプラットフォームをさらに進化させていきたい」と意気込みを見せた。富士急ハイランドでは、WeChat Payスマート旗艦遊園地として、大規模なプロモーションにより集客を加速させ、体験価値の向上、消費拡大を図る。
アトラクションにQRコードを掲示し、利用者がシェア
旅前、旅行中、旅行後のすべてでマーケティングプログラムを実行可能
WeChatは世界で10.4億のアクティブユーザーを持つコミュニケーション・アプリであり、その決済機能であるWeChat Payは8億人以上のユーザーがおり、40を超える国と地域で利用可能だ。世界屈指のSNSを展開するテンセントと、遊園地として数々の世界記録を持つ富士急ハイランドが提携することとなったが、「お互い違う分野でトップを走っている企業が一体となり、もう1つの世界一を作りたい」とテンセント・ホールディングス・リミテッドWeChat Pay担当バイス・プレジデント 李培庫氏は意気込みを見せた。
具体的な活用例として、アトラクションに掲示されたQRコードをWeChatで読み込むと、歴史などについて知ることができる機能などを提供する。また、アトラクションに乗った人が、その刺激をWeChatでシェアすることで、さらにブランド価値を高めることが可能だ。
WeChat Pay 国際ビジネス総責任者 Grace Yin(殷潔)氏によると、国内におけるWeChat Payの状況として、2018年6月の昨年同期比の取引本数が6.2倍、取引金額が5倍、新規加盟店数が6倍、アクティブ加盟店数が5倍となったという。WeChatでは、公式アカウントを使ったり、モーメンツ広告を通してターゲットユーザーにリーチできる。Mini ProgramやWeChat Payの支払いを活用できれば、旅前、旅行中、旅行後のすべてでマーケティングプログラムを実行可能だ。
Mini Programでは、自社でEC用のアプリを開発するよりもコストを削減できるそうだ。すでに中国のスターバックスではリアルのカードをオンライン化して活用。また、上海ディズニーランドでは、園内の混雑が悩みだったが、ミニゲームや順番待ちの情報を提供することで課題の解決を図った。そのほか、LongChampオーダーメイド工房、アジア芸術博物館などでも採用されている。
テンセントは日本の各業界のリーダーとより深い提携を強化
富士急ではグループ外も含めWeChat Payの利用環境を整備
現在、富士急ハイランド以外では、ドン・キホーテが旗艦店、新千歳空港が旗艦空港となっている。当日は両社の担当者が事業戦略説明会で登壇したが、いずれもテンセントとのパートナーシップにより、売り上げアップにつながったそうだ。殷潔氏は、「次の1年は各業界のリーダーとより提携を深めていきたい」とした。具体的には、モーメンツ広告の開放、Mini Programの展開、クーポンや割引キャンペーンなどにより、付加価値を提供していきたいとしている。
なお、富士急行は鉄道会社として創業、運輸・不動産、レジャーなどを提供している。富士山周辺は中国人観光客にも長年人気の観光地となっており、その数も増加している。たとえば、河口湖駅の外国人観光客の比率として、2014年度は35%だったが、2017年度は53%になり、半分以上は外国人の利用者となっている。また、ロープウェイも2014年度は30%だったが、2017年度は64%に増加している。
富士急行では、富士山周辺における面での展開も加速させていく方針だ。富士急グループとしての展開はもちろん、グループ外店舗でもWeChat Payの導入を加速させることで、中国人観光客がキャッシュレスで便利に支払いができる環境を整えていきたいとした。富士急行 執行役員 企画部部長 斉藤隆憲氏によると、同社ではインタセクト・コミュニケーションズとWeChat Payのアクワイアリング契約を締結。富士急グループの富士急トラベルを中心にWeChat Payの導入をグループ外でも進めているそうだ。