2018年10月23日8:00
1990年代後半にヨーロッパを中心に世界各地でトライされたコンタクトICカードを用いたIC電子マネープロジェクトの多くが頓挫した。また、コンタクトICカードによるオープンループのMondexとVISAキャッシュなどクローズドループのIC電子マネーの大半が挫折して以来、コンタクトレスペイメントのIC電子マネーや国際ブランドのコンタクトレスペイメントが注目を集めるようになった。今回はフューチャーペイメント要覧の4章からIC電子マネーとコンタクトレスペイメントの広がりについて紹介したい。
コンタクトレスのIC電子マネーはアジアを中心に拡大
IC電子マネーに代わり注目を集めるようになったコンタクトレスペイメントのIC電子マネーは、香港のOctopusや日本のSuica、シンガポールのEZリンク、韓国のT-Money、台湾のEasyCardといったアジアのIC乗車券を中心にクローズドループのプリペイド型のIC電子マネー機能を付け、いずれも決済のトランザクションを拡大させている。日本のEdyやnanaco、WAON、台湾のiCash、韓国のCashbee、シンガポールのNETS Flash Payなど、アジアを中心に、コンタクトレスICカードを採用し、カード決済端末機にカードをかざすあるいはタッチするコンタクトレスペイメント方式のオープンループのプリペイド型のIC電子マネーが発行され、拡大している。
また、VISAやマスターカード、アメリカン・エキスプレス、JCB、中国銀聯といったカードブランドのオープンループのオンラインプリペイドカードも近年クレジットカードやデビットカードのEMV ICカード化に伴い、デュアルインターフェースのICカードの採用が進み、IC電子マネーと同様の機能を有している。また、高機能モバイルフォンやスマートフォンにNFC(Near Field Communication)機能が搭載され、モバイル財布アプリによりクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードなどが紐づけされ、コンタクトレスの近接型モバイルペイメントが可能となっている。
欧州、カナダ、オーストラリアなどはEMVスタンダードのIC化を進める
クレジットカードやデビットカードなどのペイメントカードの偽造によるカード不正の増大に悩まされていたイギリスやフランス、カナダ、オーストラリアなどの先進国は、クレジットカードやデビットカード、ATMカードといったバンクカードのセキュリティの向上を図るため、コンタクトICカードによるEMVスタンダードのICカード化をATMやPOSカード決済端末などのデバイスを含めて推進してきた。EMVスタンダードのICカードが実現すると、カードの更新時期などに合わせて、コンタクトICカードからデュアルインターフェースのICカードへ切り替え、一定金額までPIN(暗証番号)入力を省くことができるコンタクトレスペイメントの普及拡大を行うようになった。遅れてEMVスタンダードのICカード化を行っているアメリカでは多くの銀行がデュアルインターフェースのICカードを採用し、コンタクトレスペイメントにも対応している。
Visa payWave(日本ではタッチ決済)やMastercard コンタクトレスなどのコンタクトレスペイメントは、クレジットカードやデビットカードのほか、VisaやMastercardブランドのオープンループのオンラインプリペイドカードにも応用することができる。コンタクトレスペイメント対応のプリペイドカードは、コンタクトICカードによるIC電子マネーと同等以上の機能を有している。
欧米では、クレジットカードやデビットカードは銀行口座にリンクされて発行されるが、プリペイドカードは銀行口座にリンクすることなく発行されるケースが多い。カードで決済できる範囲も、VISAやマスターカードの世界中の数千万店の加盟店で利用できるほか、少額決済でコンタクトレスペイメントが利用できるショップでは、カードを手渡すことなく、カードリーダーにタッチするだけでよく、PIN(暗証番号)入力も不要である。ATMからの現金の引き出しも可能である。