2019年8月29日8:00
日本マイクロソフトは、2019年8月28日、新年度のパートナービジネスの事業方針や注力分野に関する記者説明会を開催した。同社では、デジタルトランスフォーメーション(変革)のさらなる推進に向けたパートナーとの連携を拡大する。注力分野の1つである金融機関のデジタルトランスフォーメーションを支援する取り組みとして、インフキュリオン・グループとのキャッシュレス決済普及のための協業を発表した。
「MPM for Industry」で業種に特化したソリューションを提案
日本マイクロソフトでは、ワークスタイルイノベーション、インダストリーイノベーション、ライフスタイルイノベーションと、3つのイノベーションの推進に取り組んでいる。当日は、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長 高橋 美波氏が登壇し、同社の戦略について紹介した。
国内での№1のクラウドベンダーを目指す取り組みとして、業界特化マイクロソフト パートナー プログラム「MPM for Industry」の対応業種を拡充している。「MPM for Industry」は、製造、流通、金融、ヘルスケアの4業種に92社のパートナーが参画。パートナーが業種に特化したソリューションの提案を進めている。また、業界標準の非競争領域におけるシステム実装やデータ構造をなどをリファレンスした「インダストリー リファレンス アーキテクチャー」により、業種や業態の垣根を超えたオープンイノベーションを推進している。
「ウォレットステーション」をAzure上で展開
マイクソフトでは、キャッシュレスサービス等を提供するインフキュリオン・グループと、 金融機関の利用企業等のデジタルトランスフォーメーションを支援する次世代金融プラットフォームにおいて協業すると発表した。
まずは、QRコード決済に対応したウォレットSoftware as a Service (SaaS) システム「ウォレットステーション(for Banking and Retail)」を マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上で提供を開始する。インフキュリオンがAzureを採用した理由は、まず堅牢性だ。金融機関などでの実績に加え、高セキュリティなども採用のポイントだった。Microsoft Azureが提供するデータ保護の「Azure Backup」、ネットワーク機能の「Traffic Manager」により、大規模災害発生時にも日本国内リージョン内での24時間365日稼働を実現する。
また、国内東西でのディザスターリカバリー構成だったことも挙げられる。さらに、エンジニアフレンドリーな要素、今後もサービスを拡大する中でデータの活用を含めて変革できることが大きかったという。
外部サービスとの柔軟で安全な接続が可能に
インフキュリオン・グループは、「MPN for Industry パートナープログラム」が提供するインダストリー リファレンス アーキテクチャーの策定にも協力している。 Azureの採用により、 金融機関では基幹システムや外部サービスとの柔軟で安全な接続が可能になる。インフキュリオン・グループ 代表取締役社長 丸山 弘毅氏によると、金融業界の在り方が変わっていくなか、銀行はAPI連携などにより、異業種との連携を深めているが、技術ベースでつながっていくためにはリファレンスアーキテクチャやセキュリティは重要だとした。その際、金融機関は、流通事業者やインターネットサービス提供企業の仕組みを知る必要もある。次世代の銀行はコンシューマー向けにより良いサービスを提供することに加え、消費データを活用してお店を活性化させ、金融サービスの強化につなげていく必要があるとした。
なお、インフキュリオン・グループでは、金融機関による加盟店向けのダッシュボード機能・融資申請機能の提供を2019年内に開始する予定だ。今回のマイクロソフトとの協業では、30行の銀行への導入を目指す。
そのほか、日本マイクロソフトでは、パートナービジネスモデルの変革として、マーケットプレースによる拡販強化、パートナー to パートナー(P2P)によるエコシステム拡大を目指す。また、Azure認定技術者を5,000名増強、業種SE向けトレーニングを7,000名に展開、クラウドやAIの技術者を1万人増強など、人材育成にも力を入れるとした。
当日は、SB C&S 代表取締役社長 兼 CEO 溝口 泰雄氏も登壇した。クラウドビジネスを強化するSB C&Sでは、2018年に50%だったマイクロソフト商材クラウド比率を2021年には75%まで高めていきたいとした。