2020年3月18日9:15
TOUCH TO GO(タッチトゥゴー、TTG)は、2020年3月23日にJR山手線の「高輪ゲートウェイ駅」の構内に無人AI決済店舗の「TOUCH TO GO」の1号店をオープンするが、17日に記者向けの内覧会を実施した。
600種類の商品を販売
7~10人が同時に入店可能
TTGは、JR東日本スタートアップとサインポストの合弁会社として2019年7月1日に設立された会社だ。サインポストは、2017年度の「JR東日本スタートアッププログラム」の最優秀賞受賞企業に選出されている。JR東日本スタートアップとサインポストでは、2017年度に、サインポストの無人AI決済システム「スーパーワンダーレジ」を使い、無人AI決済店舗の実証実験を大宮駅で行った。2018年度には、商品認識率と決済認識率を向上させ、実証実験を赤羽駅で実施した。その成果を踏まえ、2019年2月21日に合弁会社の設立を検討する基本合意書を締結し、同7月に無人AI決済店舗のシステム開発を行うTTGを設立している。
高輪ゲートウェイ駅にオープンする「TOUCH TO GO」の営業時間は6時~24時。取扱商品は、弁当、総菜、菓子、飲料(アルコール含む)、TOUCH TO GOのオリジナルグッズなど、約600種類。赤羽での実験は140店舗だったため、約4倍の販売点数となる。
具体的な無人AI決済店舗の流れとして、利用者は店内に入り、ゲートを通過(ゲートは1人ずつ通過する)。赤羽の実験では入店を3人までに絞っていたが、7~10人程が同時に入ることができる。TTGでは、将来的には人数制限なく、入店できるようにしていきたい考え。
店内のカメラや重量センサーで利用者と商品を認識
交通系電子マネーで支払いが可能
店内には約50台のカメラを設置。TOUCH TO GO 代表取締役社長 阿久津智紀氏は「商品の認識には、重量センサーに加え、赤外線、二次元の画像も使っています」と説明する。
利用者は、商品を手に取ると、AIシステムでどの人が、どの商品を手に取ったのかがリアルタイムに認識される。出口付近の決済エリアに利用者が立ち、タッチパネルで購入商品と購入金額を確認し、問題がなければSuica等の交通系電子マネーで支払いを行う仕組みだ。仮に金額や購入商品が間違っている場合は、修正を行う。また、決済手段は現在、交通系電子マネーのみだが、6月頃には他の電子マネーやクレジットカード決済を追加する予定だ。
同店舗は無人AI決済店舗としては珍しく、アルコール類も販売しており、タッチパネルで20歳以上かの確認ボタンを押し、バックヤードのスタッフなどが確認したうえで購入できる。
なお、出口付近にはUCCと共同開発したコーヒーマシンを設置。同マシンではゲートを通らずにコーヒーの購入ができる。利用者がマシンにコーヒーカップを入れ、購入する商品のボタンを押して、交通系電子マネーで支払う仕組みだ。
品出しなど店舗のバックオペレーションも改善
リッチクライアント型の決済システムを採用した理由とは?
TTGでは、今回、高輪ゲートウェイ駅の実験店舗で初めて「TOUCH TO GO」のシステムを提供しているが、365日稼働させることで、より精度を高めていきたいとした。TTGでは同店舗を「ラボ」として位置づけ、そのノウハウを他の小売業に提供し、多くの小売業界が抱える労働力不足や、地域店舗の維持など、さまざまな課題解決に向けて展開していく。当面は店舗に人員を配置し、顧客へのフォローを行う。また、札幌のコールセンター等で人の動きを可視化している。
阿久津氏は「店舗のバックオペレーションを主眼にシステム開発をしています」と話す。他の無人AI決済店舗の場合、事後に商品と販売金額を突合しているケースもあるが、交通系電子マネーによる即時決済のため、さらなる精度の向上が求められる。また、LTEの電子マネーの通信速度では夕方使えなくなるケースも想定し、リッチクライアント型の決済システムを採用したという。
さらに、赤羽の実験では、システムを止めて品出しを行っていたが、AIで利用者とスタッフを識別することで、仮に店舗に来店者がいてもバックヤードから店内に入って品出しができるようにした。「お客様が店員の前でクロスして取るなどはテストをしています」(阿久津氏)。
なお、JR東日本グループでは、エキナカのコンビニエンスストア「New Days」を展開しているが、TTGは無人AI決済店舗の技術を提供する会社であり、JR東日本グループを含めたシステム導入を目指すという。阿久津氏は「5年以内に100店舗に導入したいです」と意気込む。
通常、高輪ゲートウェイの「TOUCH TO GO」店舗面積の場合、3名程のスタッフが必要だが、無人AI決済により人員を削減させることで、80万円程の削減効果が期待できる。TTGでは、月額サブスクリプションサービスとして、来年度中に月額80万円程でのシステム提供を想定している。今後は、AIの精度向上はもちろん、カメラの台数を減らしたり、ゲートの什器を安価にすることなどで、システムコストはさらに削減できるとした。