加賀市、マイナンバーカードによる個人認証で行政手続きをオンラインで完結可能に

2020年8月17日8:00

石川県加賀市、トラストバンク、xIDは、2020年8月12日に記者説明会を開催し、トラストバンクの行政申請フォーム作成ツール「LoGoフォーム」とxIDのデジタルID(身分証)アプリ「xID」を連携させた行政手続きデジタル化ツール「LoGoフォーム電子申請」を全国で初めて加賀市で提供開始したと発表した。これにより、マイナンバーカードによる個人認証を完了させることで、次回以降の行政手続きをオンラインで完結できるようになった。

左上が加賀市市長 宮元陸氏、右上がトラストバンク 代表取締役 川村憲一氏、下がxID CEO 日下光氏

デジタルガバメントやマイナンバーを積極的に推進する加賀市

加賀市では、デジタル化に力を入れており、2018年には「ブロックチェーン都宣言」を行った。また、スマートシティを実現するために、2019年8月に加賀市スマートシティ推進官民連携協議会を発足。2020年3月にスマートシティ宣言を行い、住民の生活の質の向上、来訪者の満足度向上、稼ぐ力の向上を目指している。

昨今は、世界的なコロナ禍の状況で、蜜や接触を避けることを目的に、デジタル化は急務となっている。加賀市でもデジタルガバメントの推進やマイナンバーの一層の推進を掲げている。xIDとは、2019年12月20日に次世代電子行政の実現に向けた連携協定を締結し、デジタル行政の検討を進めてきた。今回のサービスについて、加賀市市長 宮元陸氏は「市民1人1人が持つスマートフォンが公的個人認証を済ませた身分証へと進化するアプリです」と自信を見せた。

加賀市のマイナンバー普及率は50%に迫る

トラストバンクは、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営しており、加賀市でも同サイトを利用することで、多額の納税につながっている。トラストバンクとxIDは5月に業務提携し、「LoGoフォーム電子申請」を開発し、今回のサービス開始に至った。加賀市は今年度のマイナンバーの普及率の目標を80%としている。新型コロナウィルスの影響を受ける小売店、飲食店の支援策として、6月から「かが応援商品券事業」を開始。すでに多くの市民がマイナンバーカードを作りに来ており、8月11日現在の普及率は48.2%となっている。加賀市では、将来的なマイナンバー普及率の100%を目指しているが、「皆様のご協力を得て、早く目標を達成したい」と宮元氏は意気込みを見せた。

24時間、スマホから行政サービスに申請可能に

今回発表した電子申請は、マイナンバーカードとスマートフォンで申請が完了できる強みがある。一度マイナンバーカードをスマホのNFC機能で読み込ませることで、以後はマイナンバーカードを持ち歩く必要がないという。これにより、市役所窓口に出向く必要がなくなることに加え、電子申請の仕組みにより、名前や住所など基本4情報の入力が不要となり、来訪者の手間を最大限に排除した。

加賀市では、まずは、 市の人間ドック助成金申請といった一部の行政申請をオンライン化する。今年度中には補助金・助成金の申請に加え、イベント予約やアンケートなど、市民、来訪者、庁内の三方向の視点から開始することを目指している。今回の電子申請の開始は市民の生活の質の向上、QOL(Quality of Life)を実現させる重要な取り組みとなる。24時間、いつでもどこでも電子申請が可能になり、生活が便利になるとした。同情報を活用し、電子情報のモデル都市を目指し、住民の利便性の向上、市内産業の活性化はもちろん、産業集積につなげていきたいとした。

LoGoフォーム電子申請の利用フロー

8カ月でローンチに至る、NFC機能付きのスマホで利用可能

宮元氏に続いて登壇した、xID CEO 日下光氏は、次世代デジタルIDアプリ「xID」の概要について説明した。xIDは、デジタルID先進国のエストニアで培った知見・経験をもとに、「xIDアプリ」を開発している。日下氏によると、加賀市とは昨年12月から準備を進め、コロナ禍の中、わずか8カ月のスピードで今回のリリースに至ったという。マイナンバーカードを取り巻く流れとして、昨年はデジタル手続法が施行され、今年の3月からは交付数が日々増加している。現在は17%を超える普及率となっており、2,200万人以上がマイナンバーカードを保有している。特別給付金やマイナポイント施策などの追い風もあり、マイナンバーカードの必要性や認知も拡大している。さらに、2021年3月度からの保険証との一体化が発表されており、より一層必需性が増すと想定される。マイナンバーカードは、運転免許証、パスポートに比べ、無償で取得できる公的身分証となり、民間での利活用が進み、日常的に使える便利なサービスが増えていくとした。今年度末には2人に1人が持つと想定される。

xIDアプリ(デジタル身分証アプリ)

xIDアプリの特徴として、利用者は、マイナンバーカードをスマートフォンのNFC機能等で読み取り、公的個人認証を実施すれば、名前、性別、生年月日や住所など、毎回の面倒な入力を省略し、アプリ1つで改正犯収法等の法令に準じたeKYCを実現可能だ。また、身分証撮影も不要となる。さらに、生体認証でログインができるため、パスワードを覚える、忘れる、奪われるといった課題を解決できる。今回の申請でも生体認証を使ったログインが実用化された。また、電子署名でハンコ(捺印)を置き換えることで、行政サービスの電子申請・電子契約やネット銀行の取引など、オンライン取引において本当に当人が申請・承認したのかという証明が容易になり、改ざん・否認防止することでペーパーレス、ハンコレスを実現できるとした。

さらに、個人情報のデータは秘密鍵で保護されるため、プライバシー・データが保護される。また、ログインや電子署名のログはブロックチェーン上に記録することで、改ざん・否認を防止可能だ。そのほか、初回登録時に提示されるマイナンバーは、ID生成のために端末上でのみ処理され、生成後に破棄される。xIDアプリではマイナンバーを保管・収集することはないとした。

3者の強みを生かした地域共創を実現へ

xIDと「LoGoフォーム電子申請」を開発したトラストバンクの「ふるさとチョイス」では、全国87%にあたる1,570自治体と契約している。現在、行政の職員を取り巻く環境は厳しく、人口減少、高齢化により、地域の課題が多様化、複雑化している。自治体の職員も24年間で約55万人が減少した。その課題解決として、事務処理のデジタル化、コミュニケーションのデジタル化、住民接点のデジタル化を掲げている。

ウィズコロナ・アフターコロナで進む自治外のデジタル活用に向けて、 2019年11月にリリースした自治体向けビジネスチャット「LOGOチャット」は445自治体で利用されている。また、今年3月に開発した「LoGoフォーム」は特別定額給付金の業務効率化などで活用されており、導入は70自治体を突破した。

LoGoフォーム

トラストバンクでは、エストニアに初の海外支店を設立し、LoGoフォーム電子申請開発拠点として活動している。トラストバンク 代表取締役 川村憲一氏は「今回の連携は日本の課題を見てきた、日本の未来を見てきたxID社が作る共創の形となります」と話す。

なお、加賀市は、ふるさとチョイスアワード2019において、日本初の「コンピュータクラブハウス」開設資金をガバメントクラウドファンディングで1,000万円調達する事業で「未来を支える部門」優秀賞を受賞している。今回の新サービスにより、3者の強みを生かした地域共創を実現していきたいとした。

自治体に加え、金融機関の本人確認や電子署名にも利用可能

トラストバンクの調査によると、「窓口や紙、ハンコによる行政の申請手続きで不便さを感じたことはありますか?」という質問で68.6%の人が不便さを感じていたという。また、「行政の申請手続きがオンラインで完結できるサービスを利用してみたいと思いますか?」という質問では、「とても利用したいと思う」「やや利用したいと思う」を合わせて約8割の人が利用したい意向を示した。現状、マイナンバーカードを持っていない理由として、「利活用できる行政サービスが少なく、保持するメリットを感じない」という回答が一番多かった。そういった課題を今回のサービスで解決できるとした。

LoGoフォームは、①役所に行かなくても24時間いつでもどこからでも待ち時間なしで行政手続きができる、②面倒な氏名や住所等の情報の入力やハンコによる押印が不要、③自治体は必要な申請フォームを簡単に迅速に作成・開設することが可能、といった強みがあるため、今後は他の自治体にも採用を広げていきたいとしている。

行政職員にとっては、プログラミング言語や高度なITの知識がなくても、パーツを組み合わせることで(ノーコード)、行政職員が申請手続きフォームを作成し、迅速に手続きの受付が可能だ。また、利用者にとっては、スマートフォンにインストールしたxIDアプリにマイナンバーカードを初回登録しておけば、申請ごとにマイナンバーカードを読み込ませる必要はないため、マイナンバーカードを持参していなくてもいつでもどこでも申請が可能となる。行政の手続き申請に加え、金融機関の手続きなど、他の分野における本人確認や電子署名にも利用可能だとした。

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