2012年5月25日8:00
新・生活者参加型商品開発
“遊び心”のある企画設計が生活者の積極的な参画を促す
従来の生活者参加型商品開発は、あくまでも企業が主体であり、生活者は企業の求めに応じて情報を提供するというかたちが一般的であった。しかし、 “ソーシャル時代”においては、企業と生活者が同じ地平に立って、“一緒に商品を創り上げる”取り組みが加速している。生活者の積極的な参加を促す仕組みづくりが、成功のカギとなると言えるだろう。
企業と生活者の関係性の変化によって
新たなステージを迎えつつある生活者参加型商品開発
商品開発に生活者の知見や感性を活用することは、決して新しい手法ではない。消費財の商品開発の過程で生活者を対象としたグループ・インタビューを実施して、開発を進めている商品分野の使用実態や生活者の不満、ニーズなどを聞きだして参考にしたり、いくつかの試作品が感性した段階で会場テストなどを実施して生活者の好みやニーズに合致するものを見極めたりといった取り組みは、これまでも盛んに行われてきた。また、インターネットが普及してからは、ネット上でこのような作業を進める商品開発サイトなども登場し、実際にそこから多くの商品が生み出された。
しかし、これらの取り組みの主体はあくまでも企業であり、生活者は企業の求めに応じて情報を提供するサポート役に過ぎなかった。企業と生活者が商品の“売り手”と“買い手”として明確に線引きされていた時代には、それも当然のことだったと言えるだろう。
だが、近年では企業と生活者の関係性は大きく変わろうとしており、特にソーシャルメディアの普及がその動きを加速させている。ソーシャルメディア上で企業と交流する生活者は、企業を特別な存在としてではなく、自らと同じ地平に立つ“社会の一員”として認識しつつあるのだ。従って、そのコミュニケーションの内容は、従来中心であった企業から生活者への情報発信、生活者から企業への問い合わせやクレームなどだけにとどまらず、多彩なものとなっている。もちろん、特に企業側が一定の節度を保つことが前提になっているものの、その関係性は従来と比較して大幅にフランクでフラットになってきたと言えるだろう。
このような変化の中で、生活者参加型の商品開発も新たなステージを迎えつつあるように思われる。今回の特集では、生活者参加型商品開発に積極的に取り組む企業のケーススタディを中心に、“ソーシャル時代”に適合した生活者参加のあり方を探った。