2010年7月16日 00:01
NFCアプリケーションの開発とパーソナライズサーバを構築へ
「FeliCa_Lite」を活用したFeliCa_Lite搭載ポスターの実験も実施
凸版印刷は1983年に国内で初めてICカードを開発した企業だ。クレジットカードや電子マネーといった金融をはじめ、ICカードシステムの企画、開発から製造まで、すべての領域をサポートしている。同社ではNFCに関してもパーソナライズサーバ構築をはじめ、準備を進めている。
NFCによりカードやリーダライタ市場も拡大
ICタグを利用したFeliCa_Lite搭載ポスターも視野に
凸版印刷ではこれまで培ったICカードOS開発などのノウハウを生かし、NFC技術においても先行してアプリケーション開発を進めている。
「NFCに関してはFeliCa_Lite搭載ポスター、デジタルサイネージ、入退室のTypeA、TypeBでの活用など、いろいろなビジネスが考えられます。なかでも電子マネーアプリケーション開発とパーソナライズサーバ構築を進めています」(凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター セキュアソリューション本部 戦略・企画推進部 課長 チームリーダー 武田 稔氏)
具体的には、NFCケータイを使ったサービスを提供する事業者やクレジット、電子マネーなどのサービスを行う金融機関に対し、NFCデータを生成しパーソナライズする機能を提供する。導入企業にとってはシステム構築にかかる費用を軽減できるとともに、運用についてもアウトソーシングすることにより業務を軽減することが可能だ。
同社ではアプリケーションの開発だけではなく、NFCが普及することにより、カードやリーダライタの市場が広がると期待している。まずはTypeAの低価格カードの開発を進めている。「1枚で数十円レベルでの提供を考えています。また弊社ではICタグ関連のビジネスを行っており、将来的にNFCケータイにISO/IEC 15693のタグリーダが搭載されれば、FeliCa_Lite搭載ポスターなどに添付したアプリケーションが運用しやすくなるでしょう」(武田氏)
同社ではTypeA、TypeBに対応した据置型リーダライタのアプリケーションも検討していきたいとしている。また、リーダライタモジュールなど、ハード製品の開発も視野に入れる。すでに同社のグループ会社であるトッパン・フォームズではNFCに関連したリーダライタモジュールの開発を行っており、今後も連携してビジネスを展開していきたいとしている。
キラーアプリはポイントシステム
磁気カードからの置き換えを狙う
NFCの分野ではシンガポールや韓国などでビジネスが立ち上がり始めている。そのため、日本でもスマートフォンにNFCチップが搭載されれば、普及に拍車がかかると同社では期待する。
なかでも同社が考えるNFCのキラーアプリケーションはタイプA、Bを使ったポイントシステムだ。特に磁気カードを利用してビジネスを展開している分野がターゲットになる。
「国内では交通、決済の分野など、FeliCaを使ったアプリケーションが整備されています。そのため、既存の事業者がFeliCaからNFCに置き換えるかといえば、そうではないと思います。弊社が狙っている市場は磁気カードなど、まだIC化していない分野で、NFC普及後もFeliCaとの共存共栄は可能であると考えています」(情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター セキュアソリューション本部 戦略・企画推進部 若林久敬氏)
同社ではNFCの普及も想定し、6月11日からFeliCa_Lite搭載ポスターを利用したテストマーケティングを自ら実施している。同実験はソニーの「FeliCa_Lite」を添付した広告ポスターにタグリーダーアプリをインストールしたおサイフケータイでタッチすることで、対象のWebサイトへ自動的に接続することができるものだ。同テストマーケティングは、アニメイト、紀伊國屋書店、近畿日本ツーリスト、クリアックスなどが参加し、池袋・新宿・渋谷・有楽町を中心としたエリアで約2カ月間実施する予定だ。
「今回は若者が集まるエリアを限定し、QRコードを利用した場合に比べどのくらい手軽に情報入手が可能であるか、またどの程度興味を引いてもらえるのかを検証します。加えて、お客様の動きや行動についても把握していきたいと考えています」(情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター マーケティング本部 ID・決済ビジネス企画部 部長 坂田裕泰氏)
KDDIの実証実験ではNFCケータイを活用した情報配信
NFCのブレイクは2013年?
KDDIが実施するNFCの実証実験も秋口の開始を目指し、準備を進めている。今回の実験では文化施設でNFCケータイを活用した情報配信を予定する。「弊社ではこれまでセキュアなICカードを発行してきていますので、カードアプリ開発とパーソナライズサーバの構築はNFCビジネスを展開する上で強みになると考えています」(若林氏)
KDDIの実証実験後には、NFCケータイの登場が期待される。凸版印刷が考えるNFCのブレークポイントは早ければ3年後の2013年。同社では来るべきNFCの普及に備え、他社に先行する形で準備を進める方針だ。