2014年2月25日8:00
多文化共生時代の外国人対応
総 論:外国人対応の充実化をビジネスのグローバル化のきっかけに
外国人対応は対象が定住者か観光客かに大別されるが、共通する重要なポイントは、文化の多様性を認め、尊重する姿勢にある。多分化共生時代に対応するコミュニケーションを実現できれば、言語や文化の壁を乗り越えて、ビジネスを拡大していくことも可能になるだろう。
“すぐそこ”にある多文化共生社会
近年、街を歩いていて外国人と思われる人に出会うのは、珍しいことではなくなっている。
法務省の統計によれば、2013年6月末時点の在留外国人数は204万9,123人。ピークは214万人を超えた2008年で、その後は2011年の東日本大震災の影響などもあり2012年末まで漸減傾向にあったものが、再び増加傾向に転じている。2007年以降、常に200万人以上を記録していることからも、外国人が日本社会の一角をなす構成員となっていることは、まぎれもない事実である。
さらに今後、日本が少子高齢化による人口減少社会となることが確実な情勢の中、労働力確保の観点からさまざまな分野で外国人労働者の受け入れが進むことは想像に難くない。その結果、日本がさまざまな国籍や民族の人間がともに暮らす“多文化共生社会”への道をたどることは間違いないと言えよう。
また、訪日外国人旅行者も増加傾向にある。日本政府観光局(JNTO)の発表によれば2013年の訪日外客数は、円安に加え、7月から東南アジア5カ国向けの査証(ビザ)の発給要件を緩和したことなどにより前年から24.0%増加し、過去最高の1,036万4,000人に達している。政府が訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)を積極的に展開していることに加え、2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催が決定したことなどで、今後、この傾向はさらに加速していくことが予想されよう。
このような状況の中で、特にB to Cビジネスを展開する企業においては、外国人対応の充実化が必須の課題となっている。
外国人対応においては最初の壁となるのが、コミュニケーションのベースとなる言語の問題だ。日本語の国際的な汎用性は低く、外国人にとっては習得が難しい。従って、現状では企業側が国際的な汎用性が高い英語などでのコミュニケーションに対応する必要に迫られている。
また、文化や習慣の相違も大きな壁となる。例えば、食生活における宗教に由来するさまざまな禁忌は、その宗教を信じる人にとっては譲れないものであり、食材や料理を提供する企業は、それぞれの禁忌に対応しなければ、そのニーズを満たすことはできない。
しかし、前述のように国内市場において、在留外国人、訪日外国人旅行者が無視できないボリュームとなった今、これらの壁を乗り越えることができれば、ビジネスの発展に結び付けることも可能なはずだ。
今回の特集では、さまざまなかたちで外国人対応の充実化を図る企業のケーススタディを中心に、外国人対応の現状とあるべき方向性を探った。