BISとCBDC(Central Bank Digital Currency、中央銀行デジタル通貨)(世界の決済シーン)

2021年8月5日8:00

グローバル決済の動向に詳しい、和田文明氏による世界の決済シーンを紹介する本コーナー。今回は、日本でも関連記事を目にすることが増えてきた、BISとCBDC(Central Bank Digital Currency、中央銀行デジタル通貨)について紹介してもらった。

和田文明

BISが中央銀行のデジタル通貨の報告書公表

BIS(Bank for International Settlement、国際決済銀行、本部:スイス、バーセル、設立:1930年)は、6月29日に予定されていた2021年度の年次報告の発表に先立って、その一部である中央銀行のデジタル通貨(CBDC、Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)に関する報告書(第3章、CBDCs:an opportunity for the monetary system;CBDC通貨制度の機運)の部分を1週間程前倒しして、6月23日に公表している。

その要旨は、次の通り。

・中央銀行のデジタル通貨は、これまでの“概念”の段階から“実用的な設計”の段階へと移行し、デジタル時代に向けて設計された新しい形でお金の制度を“更新”している
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は、中央銀行への信頼に基づいたお金の新しい章を開くものである
・技術的に進んだお金の表現として、CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は公共の利益を促進することができる
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は、2層システムの一部として最適に機能し、顧客対応活動の大部分は銀行やその他のペイメントサービスプロバイダーによって行われる
・一般的な“使用”のための最も有望な設計は、デジタルIDスキームに基づいて構築されたCBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)であり、データプライバシーを保護しながら、違法行為からの保護を提供し、国境を越えた支払いを合理化する可能性がある
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)の設計上の“選択”を示し、紙幣などの現金とともに、各国の中央銀行によって発行および支援され、消費者、金融機関、および中央銀行自体に対するそれらの影響の経済分析を提供する
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は、支払い(決済)が最終的かつ確実であることを保証するために、ペイメントシステムにおける中央銀行の従来の役割に基づいて構築される
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は、ペイメントシステムが機能するのに十分な流動性があり、中央銀行の資金をすべての当事者が平等に利用できるようにすることで、競争の場は平等であることが求められる
・CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)は、中央銀行がお金のテクノロジー的に高度な表現を提供することにより、通貨システムの新しい章を開くことで、中央銀行だけが提供できるお金の核となる特徴を維持し、中央銀行への信頼の基盤に固定されるべきものである

こうしたCBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)への関心は近年大いに高まっており、各国の中央銀行を対象とした2021年のBIS(Bank for International Settlement)の調査によると、86%もの中央銀行がCBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)の可能性について調査し、60%もの中央銀行がCBDCのテクノロジーを実験し、14%の中央銀行がパイロットプロジェクトを展開しているとされている。

中央銀行が発行した最初のデジタル通貨としては、およそ30年前の1993年にICカードベースの電子マネーカードの“AVANT”カード(図表1)が北欧フィンランドの中央銀行であるフィンランド銀行によって発行されていた。AVANTは1993年当初ディスポーザブル型の電子マネーで、テレホンカードとして用いられていたが、1994年にはATMでバリューの補充ができるリローダブル型電子財布・電子マネーに変更され、一部のショップや自動販売機、パーキングメーター、乗り合いバスなどで利用できるようになった。さらには、1997年からパソコンにつないだカードリーダーを通じて、パソコンの操作で銀行口座からバリューのリロードが可能になり、インターネットでのオンラインショッピングの決済も可能になった。“AVANT”カードは、使用するのが面倒であり、コストがかかり、不人気であっため、2006年に正式に廃止されている。(図表3)は、私の“カードコレクション”の中の一枚である1993年発行の初期のディスポーザブル型の“AVANT”カードである。

(図表1)中央銀行発行の電子マネーカード“AVANT”カード

CBDC(Central Bank Digital Currencies、中央銀行のデジタル通貨)とは

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