2011年1月19日13:00
(18)オリエントコーポレーションの「MasterCard PayPass」「NFC」 の取り組み(下)
ソフトバンクモバイルとの実証実験では
単なる決済だけの実験にとどまらず、商用を意識
同社では2011年1月中旬から3カ月間、ソフトバンクモバイル、クレディセゾン、ジェムアルト、共同印刷、MasterCard、HTCコーポレーション、Trusted Logic S.A.とともに、NFC 技術を用いたAndroid 2.2搭載スマートフォンによる、非接触IC 決済サービスの実証実験を実施する(図)。
オリコではこれまでもNFCのトライアルには積極的に参加しており、2008年6月はソフトバンクモバイル、MasterCard、ジェムアルト、サムスン電子、日立製作所、日本ヒューレット・パッカードと、2009年2月には、KDDI、ジェムアルトと千葉県内の複合型商業施設で実験を行っている。
「過去2回の実証実験と異なるのは、お客様がおサイフケータイと同様にクレジットカード情報をNFCケータイにダウンロードし、利用することを意識した実験となっている点です。つまり、カード会員の本人認証や現行のFeliCaベースの決済スキームにはないセキュリティの強化など、このまま商用化できるような運用体制を整えています」(山口氏)
申込みからダウンロード、
紛失・盗難時の運用や再発行対応も細かく規定
同実験は、クレジットカード・アプリケーションとクレジットカード情報を、携帯電話端末にあるNFC 対応USIMカード上のICチップ内に、無線ネットワーク経由で簡単・スピーディーにダウンロードし、モバイルによる非接触IC決済を行うものである。
例えば、利用者がクレジットカード情報をどのような方法でダウンロードするのか、紛失・盗難の際にどのようにNFCケータイの決済機能をストップさせるのか、再発行やロックなどの仕組みも含めて幅広く検証するという。
「世界各国でNFCケータイを利用した実証実験が数多く行われていますが、仕様は統一されていません。今回の実証実験で得た運用面やサービスオペレーションに関するノウハウを活かし、世界に日本のモバイルNFCサービスを発信していきたいと考えています。世界で初めてVisaやMasterCardの認定を取得したジェムアルトの『トラステッド・サービス・マネジメント・システム』を利用している今回の実証実験がモデルとなり、他国で展開するなどの構想を抱いています」(長谷川氏)
同実証実験ではサービスを重視した点も大きなポイントだ。例えばNFCケータイを紛失・盗難した際にキャリア、カード会社にそれぞれ連絡するケースが想定されるが、「カード会社に連絡をいただければPayPassのみの機能を停止し、キャリアに連絡した場合は端末そのものの機能をストップする。このように不測の事態が発生した際やケータイを買い替えた時の再発行の仕組みなどを組み立てる予定です」と長谷川氏は説明する。
端末そのものも「FeliCaで実装されているアプリケーションに比べるとデザインや動作は格段に進化したモデルとなっています。例えば、Android端末の良さを活かし、アプリをダウンロードしている際もグラフィックインターフェースで利用者を飽きさせないようにするなど、“スマートな支払い”を実現するための工夫が可能です」と長谷川氏は話す。
他のカード会社も
国際標準の決済手段に注目
同実験では、国際的な利用を意識しており、国内だけではなく韓国での実験も行う予定だ。 実証実験には、クレディセゾンが参加したように国内のクレジットカード会社やモバイル関連の協議会の中では、PayPassのような国際標準のインフラを活用できる決済方式に着目する企業が増えているようだ。オリコでは今後、PayPassなどの国際標準の非接触決済は国内でも普及すると考えており、それを加速させる技術としてNFCの動向に注目していきたいとしている。