2022年6月17日8:00
国内では、大規模な会員基盤を持つ組織が共通ポイントを展開しているが、今後は量よりも質が問われる時代が来る? 2022年6月9日に行われた「Ponta」を展開するロイヤリティマーケティングのプレスセミナーでは、有識者として、企業のマーケティングや事業戦略の立案・実行支援、ポイントなどのロイヤルティプログラムや決済領域を中心に、幅広い業界でコンサルティングを手がけている野村総合研究所の冨田 勝己氏が「日本におけるキャッシュレス普及の動向とポイントの関係性」について分析した。
年々高まるキャッシュレス比率
キャッシュレスとポイントの関係性もより重要に
経済産業省の発表によると、2021年に国内のキャッシュレス比率は30%を超えた。2019年、20年にかけて「キャッシュレス・消費者還元事業」が行われ、キャッシュレス決済の注目が高まったが、決済支払額そのものに関しては粛々と増えてきたという。決済手段の伸びもクレジット決済が増えているが、決済件数についてはコード決済(QR/バーコード決済)の伸びが大きく、シェア1割を突破するところまできた。コード決済はコンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアでの用途が増えてきている。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレスロードマップ2021」のデータとして、2019年9月に中小企業向けに行ったアンケートでは、キャッシュレス決済の導入は3割を切っていたが、2020年5月は36%近くまでになり、2020年9月は導入店舗がさらに増えている。
最近では、支払い方法でUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を高める取り組みが行われている。スマホ決済やコード決済など、新たな決済手段がフロントとして利用されている。また、決済事業者が新たな顧客接点を築き、定着しているのも重要なポイントとなる。例えば、PayPayが花王などと実施しているキャンペーンでは、対象となる店舗で決済するとボーナスポイントをプレゼントする取り組みなどを実施。「今までではプレゼンスそのものは決済事業者にありませんでしたが、販促手段に対するキャッシュレスのプレゼンスを高めました」と冨田氏は話す。さらに、決済手段と連携しているポイントの付与率が高いと、ポイントのプレゼンスも高まる。今後は、決済すると特定のポイントが付くといったように、キャッシュレスとポイントの関係性もより重要となる。
また、事前に発注してお店で受け取る「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」も徐々に浸透。さらに、事前に利用者が登録しておくと、決済、ポイント、クーポン、割引といった処理が一回で終わるような取り組みも進んでいる。
6割以上の人が2種類の共通ポイントを保有
消費者のポイントリテラシーは高まる
ポイントサービスでは、「キャッシュレス・消費者還元事業」や「マイナポイント」において、2019年から20年は大きな額のポイントが供給された。21年は若干減っているが、民間でのポイントは若干増えていくとした。共通ポイントサービスも伸びており、同社の2021年夏のアンケート調査では、6割以上の人が2種類の共通ポイントを保有している。その影響もあり、「ポイントがお店を変えさせるだけの力があるか?」という問いに関しては、ややその力が落ちている。その理由として、キャッシュレスの影響もあると言い、従来は店舗で付与するポイントは100円で0.5~2ポイントだったが、これに対し、クレジットカード決済した場合は0.5%~1%だった。これが、キャッシュレス・ポイント還元事業を節目にして、5%、場合によっては20~40%の付与になるなど、その数字が多くなってきているため、「1ポイントあたりで促せる消費者への態度変容効果が変わっています」と冨田氏は説明する。消費者のポイントリテラシーが高まり、創意工夫をしないと十分な効果が得られないそうだ。
冨田氏は、各共通ポイント同士の格差が縮まっている現状についても説明した。同社のアンケートでもこれまでは「Tポイント」の利用が圧倒的だったが、現在は、2番手の「Ponta」、それに続く「楽天ポイント」や「dポイント」が差を詰めている。また、10月から「PayPayポイント」(旧PayPayボーナス)が外販もスタートするなど、シェアを伸ばす可能性もある。
共通ポイントの競争優位性を左右する4つの要素
アクティブ会員の差がほぼなくなる時代が到達?
そういった中、冨田氏は、「ロイヤルカスタマースケール」「インセンティブスケール」「コンタクトスケール」「プランニングスキル」の4つが共通ポイントの競争優位性を左右するとした。
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