2022年7月21日8:00
アクセンチュアは、2022年7月5日、2022年に企業が押さえるべきテクノロジートレンドの最新調査レポート「Technology Vision 2022」に関する記者会見をメタバース空間上で開催した。
登壇者、視聴者ともにメタバース空間で開催
今回の会見では、アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ共同日本統括 マネジング・ディレクター 山根 圭輔氏がメタバース上で登場。記者会見に参加する記者もメタバース上で視聴した。メタバースが遍在する新たなビジネス環境における顧客との関わり方や、現実世界との融合のあり方などのトレンドについて、調査データや先進事例も交えながら紹介した。
メタバースはポジティブなインパクトを与える?
「Technology Vision」は3年に1セットとなっており、2016年から3年間は“人”を中心に活用する時代、2019年からは“ポストデジタルの時代”になり、“テクノロジー企業”になり、テクノロジーCEOがリーダーシップをとるという世界について語られた。そして、今年は新しいシリーズが始まりを迎え、すべてのテクノロジー企業が備える技術革新はメタバースであると考えているとした。98%の経営幹部は、長期戦略の政策について、経済や政治、社会よりもテクノロジーの進歩を信頼すると回答している。また、71%の経営者がメタバースはポジティブなインパクトをもたらすと答えた。
同社では、メタバースの定義として、「現実世界から完全仮想化世界まで、そしてその中間にまたがる連続的な共有体験において、『ブラウジング』から『参加や居住』の場へと移行可能なインターネットの進化系」と捉えている。よって、アクセンチュアはメタバースを偏在するあらゆる要素が「テクノロジーがつながる」「仮想と現実を行き交う」「企業と顧客の接点が広がる」という3つの連続性によってつながることで、深化する「メタバース連続体」が人々の生活を取り囲み、企業に再構築と変革をもたらすと捉えている。
メタバースの4つのトレンド
そのうえで、山根氏は①「WebMe ――メタバースの中の『私』」、②「プログラム可能な世界 ――世の中をパーソナライズする」、③「アンリアル ――本物の世界を人工的に作る」、④「不可能を可能にするコンピューティング ――新たなマシンが可能性を切り開く」というメタバースの4つのトレンドを挙げた。
「WebMe ――メタバースの中の『私』」
まず、「WebMe」で中核となっている概念は、インターネットの世界を「リアル」にし、デジタルアセットを支える基盤技術となるWeb3だ。Web3による基盤技術により、情報の来歴が改ざん不可能なブロックチェーン(分散基盤台帳)へ記録されることで、データの身元が明らかになる。また、自分の保有するデータを、中央機関の介在なしにP2Pでやり取り可能だ。代替性のトークン(NFT)によって、そのデジタルデータがユニークなものであるかをブロックチェーン上で担保できる。さらに、仮想通貨とNFTを紐づけることにより、情報に価値を与えられる。例えば、仮想通貨が法定通貨と交換可能である場合には、物理世界・仮想世界の双方での貨幣価値をも持ち得るとした。
同社によるWeb3の定義として、「より分散したデータ層をインターネット上に構築する新たな取り組み。データの出所、真正性、価値を確立することで、その扱い方を変え、Web全体に信頼レイヤーを生み出す」としている。例えば、Web3とメタバースが連動することで、さまざまな空間やサービスをボーダレスに往来する世界が到来するとした。
例えば、5億人が利用するEpic Games, Inc.「FORTNITE(フォートナイト)」では、ゲーム内でイベントやコンサートを開催。トラヴィス・スコットさんのコンサートは約2,770万人以上、アリアナ・グランデさんのコンサートは1,230万人が視聴した。フォートナイト クリエイティブを利用することで、ゲームや世界をデザインし、それを公開してオンライン上でフレンドとシェアができる。さらに、ウクライナへの人道支援として、1日で約43億円の寄付を集め、寄付総額は約176億円となったそうだ。
汎用メタバースとしての仮想世界も新たなコミュニケーションや投資の場として注目を集めた。例えば、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型メタバース「The Sandbox」は、LAND(土地)上でイベントを開始し、作成したアイテム、キャラクターのNFTをNFTプラットフォームで売買できる。現在、α版で、全世界で4,000万ダウンロード、月間アクティブユーザーも100万人を超えている。さらに、AR技術を利用して、現実世界と仮想世界をつなぎメタバースソーシャルプラットフォーム「FlickPlay」と共通のブロックチェーンアセットの相互利用を目的とした提携を発表している。
一方で、価値を紐づけたデジタルアセットの概念は拡張するが、価値判断は個々人に委ねられるとした。例えば、実物の美術作品をNFTに変換してユーザーで共有し、所有権は他のマーケットプレイスで取引できる。また、記事をNFTに変換して供給。ライターは審査を通った場合のみ参加できるため、信頼性を担保できる。さらに、Walk to EarnのNFTゲームはサステナビリティとヘルスケア拡大で成長したが、仮想通貨価格が下落した影響でユーザーに不利益をもたらしたケースもある。
ユーザー自身がサービスそのものへの進化への責任や行動・責任を担うケースもある。Decentralandでは、ユーザーが独自トークン「MANA」を所有することでDAO(Decentralized Autonomous Organization)への参加が可能だ。また、ユーザー自身がDecentralandの運営に関して保有トークンを用いて投票や提案が行える。さらに、資金の投資先、流通させるアイテム種類、開発の方針といった重要事項の意思決定に参画可能だ。
また、WWW創設者のティム・バーナーズ氏が創設したInruptのように、データ所有からアイデンティティ認証まで、データ所有権をユーザーに取り戻しながら総合運用性の向上を目指す取り組みが行われている。
なお、メタバース上でデジタルアセットを往来させるためには、ブロックチェーン同士での相互運用性の担保が課題だ。ブロックチェーン同士が相互接続されたインターネットを目指すWeb3 Foundation主導のプロジェクト「Polkadot」は、ネットワーク全体のセキュリティを担保するメインのリレーチェーンに各種ブロックチェーン(パラチェーン)を接続し、コミュニケーションできるアーキテクチャだ。従来のブロックチェーンと違い、アップデートによって元のブロックチェーンとの互換性がなくならない特徴があり、日本でもAstar Networkがパラチェーンとして接続している。
「プログラム可能な世界 ――世の中をパーソナライズする」
「プログラム可能な世界」では、従来のデジタル技術では、現実世界に与えられる影響は限界に達しつつあるとした。今後は、現実世界と仮想世界の生活がシームレスにつながることで、これまでにないレベルで人々の感覚や交流方法のコントロール、自動化、パーソナライゼーションが実現されるとした。山根氏は、現実世界と仮想世界の「デジタルツイン・トリブン」という発想を、あらゆるビジネス活動の変革に向けた発想の核・フレームワークとすべきとした。
実際、プログラム可能な世界について、物理世界の構成要素にコントロールやカスタマイズ機能を組み込み、プログラム可能な世界にする「マテリアル」、あらゆる環境やデジタル情報として活用することで、世界に対する洞察や認識、コントロールによって新たな価値体験を提供する「エクスペリエンス」、シームレスかつディスプレイに依存しない方法で、必要とされる情報にアクセスできる環境を提供する「コネクト」の3層構造で構成するという。例えば、コネクトでは、超高速通信網のIoTデバイスの相互接続により環境に溶け込む一貫したデジタル体験を提供する。エクスペリエンスでは、デジタルツインとATの組み合わせにより、デジタル体験を物理世界に組み込むことができる。また、都市空間や建物・物体のデジタルツイン化が実現可能だ。さらに、マテリアルでは、可変性のある素材技術が、物質のダイナミックな制御やカスタマイズを可能にするという。
なお、プログラミング可能な世界をけん引するためには、マテリアルで投資やパートナーシップを推進することで、エクスペリエンスを変革する物理技術の活用体制を強化する必要がある。エクスペリエンスでは、デジタルで変革するイノベーションの創発、デジタルツインの構築・活用を磨き続ける必要がある。コネクトでは、エコシステムへの参画やルール形成、ユースケースを早期に検討する必要があるとした。
一方で、物理世界にはプログラムと親和性が低い複雑な領域が存在しているが、日本科学未来館で展示された「機械人間オルタ」、人間の意識を機械にアップロードすることを目指す「MinD in a Device」など、テクノロジーの挑戦は始まっているとした。
「アンリアル ――本物の世界を人工的に作る」
このコンテンツは会員限定(有料)となっております。続きを読むには「Paymentnavi Pro 2022」のお申し込みが必要となります。
詳細はこちらのページからご覧下さい。
すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。