2023年9月29日8:00
NTTドコモ(以下、ドコモ)は、電子マネー「iD」の仕組みを用いた独自の非接触ハウスマネー(独自Pay、ハウス電子マネー)サービスを導入できる「iDインハウス」を、2023年5月17日から提供開始した。企業や自治体は、自社(自域)の独自ブランドでの非接触ハウスマネーを発行できるとともに、全国約216万カ所(2023年6月末時点)のiD加盟店でも利用でき、外部での手数料収入と利用データの取得が可能だ。
ハウスマネーをiD同様にかざして利用可能に
企業や自治体の課題を解決へ
ドコモのiDは2005年12月からサービスを開始した電子マネーだ。ドコモ スマートライフカンパニー ウォレットサービス部 ウォレット推進室 iD 担当部長 秋元 真太郎氏は「日本全体のキャッシュレスの波に乗り、毎年堅調に取扱高が増えています。利用の促進や加盟店網の拡大は、足元を踏みしめながらできています」と話す。iDはドコモのクレジットカード「dカードゴールド」「dカード」約1,680万件にも搭載されており、稼働活性化を後押ししている。また、プリペイドカードに対応したサービスを提供するなど、ポストペイ(後払い)以外にも対象を拡大している。
近年は、店舗独自のハウスマネーの発行が増えるとともに、特定地域での電子地域通貨や商品券などが立ち上がっている。ドコモでは、iDの仕組みを用いることで、各事業者の運営するハウスマネーを、iDと同じように非接触でかざして利用できるiDインハウスを開発した。
秋元氏は「非接触ネットワークの活用を考えたとき、企業や自治体のさまざまなご要望に対し、iDインハウスが解決策としてあると考え、検討を始めました」と振り返る。同サービス提供の背景として、自治体から、地域通貨を展開すると、日常的に稼働してもらうのが難しいという声があった。また、決済手数料はクレジットカードに比べて安価に提供できるが、その負担はゼロではない。さらに、地方自治体からは、コロナ禍の給付金などを活用して、地域循環型のデジタル通貨を実現したいという要望もあった。あわせて、交通事業者の中には、非接触ICカードのシステム維持が負担となっているところも少なくない。
ハウスマネー、iD双方のメリットを享受
店舗や自治体はイシュアとしての手数料収入が得られる
iDインハウスは、ハウスマネー、iD双方のメリットを享受できるのが特徴だ。ハウスマネーのメリットは、自社や地域限定の決済の仕組みを構築できる点で、コストを抑えて独自マネーの運用が可能となる。また、タッチ方式の独自Payを展開することが可能だ。さらに、自社(自域内)のみで使えるポイントやクーポンなどと連携することで、自社・自域内における経済循環を活性化させ、外部流出を抑制することが可能だ。加えて、独自券面のカードを発行することで、自社・ブランド・地域へのロイヤリティ向上にもつなげることもできる。
これにドコモのiDの仕組みを合わせることで、持続可能なキャッシュレスを支援する。自店舗や地域外での決済ではハウスマネーをiD対応カードとして利用可能にすることで、利用者の稼働活性化につなげることができる。また、店舗や自治体はイシュア(カード発行会社)としての収入を得られ、域内循環を促す還元原資や、ハウスマネーの運営コスト軽減につなげることが可能だ。さらに、外部iD加盟店での利用状況から購買動向を把握し、データ活用を通じ施策効果最大化や、地域の課題解決へ活用できる。
まずはバリューデザイン、NTT Comと連携
「会員・バリュー管理サーバー・自営網」のルール制定
iDインハウスは、ハウスマネーサービスを提供するバリューデザインと2021年から準備を行ってきた。例えば、バリューデザインでは、iD連携のメリットとして、店舗がiDのイシュアになることで、利用の都度イシュアフィーが入り、店舗の手数料負担を抑えることができると考えている(関連記事)。ハウスマネー事業者に加え、地域通貨などを発行する自治体も手数料収益が入る点は肯定的に捉えているそうだ。
注:バリューデザインは、2022年にアララと経営統合をし、以降、バリューデザインにアララで展開していたキャッシュレスサービス事業も集約。
同部 iD 営業担当課長 平野 勇輝氏は「手数料は自店舗・地域外のiD加盟店における利用分において適用され、アクワイアラとイシュア間でやり取りがされます」と説明する。
iDインハウスでは、iDの仕組みに加え、各社で利用するための技術仕様・ルールを制定した。会員獲得、バリュー管理サーバーの構築・運営、自営網の開拓は各社で構築・実施してもらう仕組みだが、ハウスマネー発行サービス提供事業者のバリューデザインやエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(NTT Com)はiDインハウスソリューションの提供を行っている。ハウスマネーへのチャージ方法もハウスマネー発行事業者と連携して構築する予定だ。
サービスの自由度の高さが特徴
iDの新たなサービスとして仕組みやルールを設定
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