2025年1月6日8:25
ペイメントナビ編集部では毎年、初詣において、キャッシュレスやカード関連サービスを体験する記事を取り上げてきた。近年は、賽銭をクレジットカードやコード決済で支払えたり、御札・お守りといった授与品のお納めができる神社などが登場している。2024年の年末に取り上げた増上寺(東京都港区)などではPayPayで賽銭が可能となった。また、豊川稲荷本山(愛知県豊川市)や別院(東京都港区)などではみずほ銀行などが推進するJ-Coin Payで賽銭が可能だ。
2025年の正月は宗教法人中山寺(兵庫県宝塚市)に参拝した。中山寺では、参拝者の利便性向上、初詣における寺院内混雑の解消などを企図して、「Apple Pay」「Google Pay」で参拝できるNFCタグ決済の実証実験を2024年11月9日より実施しているからだ。
“かざす”だけで直感的に支払えるNFCタグ決済
新年の混雑を避けて参拝可能に
NFCタグは、導入側の設備投資が少なく、利用者はかざすだけで直感的に支払えるメリットがある。例えば、QRコード決済はカメラを起動して焦点を合わせて読み取る行為が必要だが、“かざす”だけで支払える点をJCBではメリットとして挙げる(関連記事)。JCBではNFCタグ決済の取り組みを強化しており、東京都渋谷区の電子地域通貨「ハチペイ」、広島県の宮島(廿日市市)やエディオンピースウイング広島(広島市)などで利用されている。中山寺の実証実験では、JCBとユーシーカード(UC)が連携してNFCタグ決済を導入した。
中山寺は、聖徳太子の創建によると伝えられる日本最初の観音霊場であり、新年の初詣で例年15万人もの参拝者が訪れるそうだ。NFCタグ決済による賽銭は、本堂の賽銭箱の横のパネルで可能だ。また、本堂の石段横の水掛地蔵、および五百羅漢堂の前にもあるため、石段に並ばずに新年の混雑を避けて参拝できる。
Google PayとApple Payによる参拝では、使用するスマートフォンにクレジットカードを設定する必要がある。決済に利用できる国際ブランドは、JCB、American Express 、Mastercard、Visaのいずれかだ。
筆者はAndroidスマートフォンとiPhoneを保有しているため、それぞれの端末で参拝した。中山寺では、金額の入力が不要な「金額固定」方式での導入となった。利用者は100円、300円、500円の3種から賽銭が可能だ。NFCタグにスマートフォンをかざすとWebブラウザ上の決済画面が開き、金額を使用するカードを確認し、支払いボタンを押すと賽銭できる。支払い完了後は、日時、注文番号、国際ブランドが画面に表示される。また、レシート画像のダウンロードも可能だ。
おみくじもNFCタグ決済で
JCBとUCは取り扱い範囲拡大目指す
2024年12月31日深夜~2025年1月5日までは、本堂前特設テントのおみくじにもNFCタグ決済が利用できた。おみくじは1回100円だが、2回(200円)、3回(300円)支払い用のパネルも用意されていた。関係者によると若い世代を中心に利用されていたという。
現状、中山寺では窓口での祈祷料やお守りは現金のみの取り扱いとなる。JCBとUCでは、七五三、初詣、節分の時期に合わせた試験導入を経て、祈祷料、御朱印料なども含めた、取扱範囲の拡大を目指すという。
JCBによると、神社仏閣でのNFCタグ決済による賽銭は、現状、中山寺のみの導入となっている。神社仏閣においては、キャッシュレスインフラの整備がされていないケースが多く、今回の中山寺の導入事例を皮切りに、他の神社仏閣などにおいてもキャッシュレスインフラ導入を横展開していくという。
なお、Appleは、iOS 18.1のアップデートで、開発者向けにSecure Element API(セキュアエレメントAPI)を解放した。これにより、開発者はApple PayやApple Walletとは別に、自社アプリ内でNFC非接触サービスを実装できるようになる。今後は店舗決済をはじめ、ゲーム、社員証、学生証、乗車、鍵など、さまざまな分野でNFCを使ったアプリケーションが展開される可能性がある。今回、NFCタグ決済を体験して参拝したのは、国内でのNFCアプリケーションのさらなる広がりを期待したからでもある。
また、ペイメントナビ編集部は2025年の参拝において、“日本のペイメント業界、カード業界のさらなる活性化”についてもお祈りした。これは毎年、正月の恒例となっている。ペイメントナビは2025年8月に15周年を迎えるが、2025年も決済・カード業界の皆様に有益な情報を提供できるように最大限努力していきたい。